6月6日 異世界 ②絵の具再び #シナリオ(脚本)
〇美術室
放課後の美術室。私達は皆に秘密で、恐ろしいものを作っていました
妹「トリックアートから削りとった絵の具の粉末に糊をいれて混ぜる」
ねちゃねちゃと音をたてながら、それを練ってゆきます
水飴のような手応えが続き、手にダルさを感じながらもひたすら混ぜてゆくと、次第に粉は均等になってゆきました
妹「このくらいでいいかな」
様々な色の欠片の混ざった糊。擬似的だけど粒子絵の具の完成です
梓「これで本当に、向こうに繋がるの?」
妹「たぶん」
妹「これはEver Readyと同じものになった・・・と思う」
不可解な絵の具、Ever Ready──
〇教室の外
梓「あの絵の具?」
妹「いつの間にか私の鞄にあったり、それを使って描いた天使の絵が九相図になったり、不可解極まる代物だからね」
妹「きっと、事故物件由来のものだと思うんだ」
梓「まあ、あんなのが由来なくぽんぽんあっても困るけど」
妹「あれを使えば、お兄ちゃんを呼び戻す扉を描けるんじゃないかなと」
梓「でも、あれって盗まれたんじゃ」
妹「うん、行方不明」
悪用されてなければいいけど
梓「じゃあ、試しようもないじゃん」
妹「ちっ、ちっ、ちっ! なければ作ればいい、それがクリエイターというものでしょ?」
梓「作る?」
妹「もう一個あるでしょ。事故物件に繋がるものが」
梓は、はっとした表情をみせました。そこには驚きもあるでしょうが、困惑が強かったのではないでしょうか
妹「あのトリックアートを使おう」
〇美術室
そうして、私達は壊れたトリックアートから表面を削って絵の具を作ったのです
梓「それでこれを使って、どこに描くつもり?」
妹「可能性が一番高いのは、トリックアートから見えた場所」
妹「そう、開かずの間!」
私達は絵の具を手に、マンションへと急ぎました
〇マンションのエントランス
妹「うわぁ・・・こんなにいたんだ・・・」
マンションの前には、無数のお化けが徘徊するのが見えました
私があの世タクシーに連れていかれそうになったとき、私の魂は体からむき出しになっていたそうです。臨死体験ってやつです
その影響でしばらくは霊感が高まって、見えないものが視えてしまうのだとか
梓の視る黒いモヤが彼らなら、マンションが真っ黒だというのも納得です
梓「本当に一人で大丈夫?」
妹「へーき、へーき。毎日のように怪奇現象を見てきたから、今更なんでもないよ」
そう言って笑って見せますが、嘘です、全力の強がりです。ここまではっきり視えると桁違いに怖いです
〇中規模マンション
事故物件サバイブ 難易度:ナイトメア
START
〇マンションの非常階段
私はヘッドホンをつけ、大音量のポップミュージックをかけます。外の音を完全に遮断して、誰もいない非常階段を駆け上がります
妹「うりゃーーー!!」
異変は速攻で起きました。大音量のポップミュージックのバックでお経が聞こえます。なんか絶叫も聞こえます
あと耳元で「聞こえてるんでしょ?」とかいう悪夢のASMRはやめてもらいたいです
走ってるのに肩を叩くのもやめてほしいし、上から人が次々落ちるのもやめて。ここはバンジー会場じゃないんだから
扉の影からこっち見ないで! 視線がいやらしいから!
あと隣のマンションの陰から覗いてる、ルドンのキュクロプスみたいなの。ちょっと視線が可愛いのがむかつく!
息がきれ、足が重く、服が汗でべったり張り付いたころに、ようやく最上階に到着です
〇マンションの共用廊下
誰もいない部屋から子供達の笑い声が響きます。このヘッドホン、全然役に立ってないんだけど!?
別の空き部屋の前では、俯きながら何度もノックする人がいます。ツッコミ待ちのつもりでしょうか?
うちの前では、ひとりかくれんぼの人形がうろうろしてました
とりあえず踏みつぶしました
私のお人形はもう向こうに行ったんです!
〇玄関内
やっとの思いで家に帰り、玄関を開けると居間からズズッ・・・と、何かを啜る音がしました
ヘッドホンなんて、暑いだけで意味なかったよ!
〇おしゃれなキッチン
台所へ突入すると、兄がカップ麺にお湯を注いでいました
( ´∀`)「おう、帰ったか。おかえり」
妹「ただいま!」
私は兄を通り過ぎて、開かずの間に・・・
開かずの間に・・・
妹「お兄ちゃん!?」
そこには本当に兄がいました。霊能力のある今ならわかります。本当の兄だと
( ´∀`)「お前もラーメン食うか?」
妹「・・・本当に自力で帰ってきたよ、この人」