事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

6月1日 ヴェノム #シナリオ(脚本)

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〇中規模マンション

〇高層マンションの一室
  帰宅したら、窓ガラスが割れていました
妹「泥棒・・・じゃないよね」
  床には壊れたドローンが転がっていました
  これが原因でしょう。しかし、私の意識はそんなものに向いてません
  ガラスの破片を踏み抜いた、血だらけの手形。四つが等間隔に、床から壁、天井を伝って、部屋の奥へと進んでいます
  蜥蜴の足跡を彷彿とさせるそれが、人のものではあるわけありません
  割れた窓からの冷たい風が、血と獣臭さをそっと運んできました
妹「お兄ちゃんがいないときに限って」
  昨日から兄の姿は見えません。スマホは家に置きっぱなしで、靴もありました
  トリックアートの中に閉じ込められたのかも知れませんが、あの兄ならそのうち自力で出てくるでしょう
妹「今はこの状況を切り抜けることに集中しないと」
妹「まあ侵入者はヴェノムだよね。外にはあれしかいないもの」
  ヴェノムと名付けたそれは、見かけた霊を無差別に襲う狂暴な動物霊。実際、外にいたお化けを襲うところを何度もみました
妹「それで助かったこともあるけど、今は私が獲物にされかねないからね。気づかれる前に早く逃げ」
妹「ちゃ、ダメだ。あの子がまだ中だ」
  あの子・・・あの人形です
  怖いのが近づいたら一人でベッドの下に隠れるし、私に守ってもらおうとする、頼りない子です
  でも理由はどうあれ、何度も私を助けてくれました。愛着が湧いてしまったんです。可愛くなってしまったんです
妹(幸い、手形は私の部屋と反対側に向かってる。今ならまだ間に合う)
  私は極力、音を立てないように、慎重に自分の部屋へ向かいました

〇部屋の前
  ドアノブを回すとき、開くとき、廊下を進むとき、早く逃げたい気持ちを抑えて、ゆっくりと動いて、僅かの物音もさせず
  同時に耳をすまして、自分以外の物音に気を付けて
  やってることは秘密諜報員ですが、気分は猛獣の檻に入れられた小動物です

〇女性の部屋
妹「とうちゃーく」
妹(自分の部屋へこっそり忍び込む。なんとも類まれな経験をしてしまった)
  部屋を探すまでもなく、ベッドの下に手を入れれば、すぐに人形は見つかりました
妹「後は脱出すれば──」
  安堵も束の間。扉の向こうから酷い悪臭が流れてきました
  血と獣臭さ。むせるほどの酸っぱい臭い
  音もなく、気配もなく、でも臭いはどんどんと強くなる
  今までと桁外れの恐怖――お化けというより、野生生物のそれ――に体が強張って動かない
  命の危機なのに、死を意識すればするほど、身体はいうことをきかない
妹(ダメ・・・ 誰か助け――!)
  そのとき、人形が大きく震え・・・
妹「あ、スマホだった」
  前にもあったな、こんなの
  その出来事は私を少しだけ恐怖から解放してくれました。私は急ぎ、スマホで電話を掛けます
妹(お願い、間に合って!)
  扉が開く音がに振り向けば、見たこともない異形の姿がありました
  それはヤモリのような体躯で、四つの腕を足代わりに、壁に張り付いていた
  一個体ではなく、黒ずんだ何人もの手が重なり合って出来た体。表面は力なく垂れた指が獣毛のように騒めいている
  顔面は横にぱっくりと裂け、内に鋭い牙が、唾液を垂らして光っていた
  それはぐっと身を屈める。獣が獲物へと跳躍する姿を想起させる
妹(やられる──)
  その瞬間、車の急ブレーキの音が響き渡り──
「こりゃあ、随分と肥えた動物霊じゃねぇの。あのババア、骨の折れる仕事押し付けやがって」
  背後から声がしました
「やれやれ、この程度でお疲れですか? 年はとりたくないものですね」
  また別の声がして、二人の黒装束の死神が私の前へでました。これがあの世タクシー
妹(なんかバディっぽい! ていうか、セリフがタクシーの運転手じゃない)
死神コス「下がってな、嬢ちゃん。ここは俺達に任せて」
死神コス「先に行きますよ、先輩!」
死神コス「あ、こら! 勝手に突っ走んじゃねぇ!」
  タクシーVSヴェノムの激しい戦いまでは、私には見えませんでした
  部屋の外で戦ってましたから
  激しい戦いを思わせる音が数分響いて
  収まった頃に車の出る音がしました。無事に終わったみたいです

〇部屋の前
  激しい戦闘音こそしましたが、どの部屋も荒れた様子はありません。ただ、あの獣臭さはもうどこにもしませんでした
妹「これがあの世タクシー」
  あのヴェノムすら打ち破る力を持つ死神
妹「これなら、もしかしたら・・・」

〇エレベーターの中
  全部、解決できるかもしれない

次のエピソード:6月2日 生霊 ①覚悟 #シナリオ

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