5月29日 視界の端(脚本)
〇中規模マンション
〇高層マンションの一室
事故物件に住んでいると、視線の端に何か陰が見えることがあります。あんな所になにかあったっけ?と
大抵は気の所為でしょうから、いちいち確認しません。まあ、本当に何かいたら、怖いというのもあります
でも中にはそんなものまるで気にしない人もいるものです
( ´∀`)「おい、足元」
妹「え?」
夕食後の食器を片付けていると、不意に兄が声をかけてきました
なにか落ちてるのかと足元を見ると、人差し指ほどの大きさの目と、目が合いました
白目は血走り、黒目はじっと私を見つめます。周りは黒く短い毛に覆われ、平ペったい体で、うぞうぞと動く姿は毛虫のよう
( ´∀`)「何かいるぞ」
妹「ひゃー!」
私の声に驚いたのか、毛虫はゴキブリ並の速さでどこかに逃げてしまいました
妹「なんで教えるの?! 見ちゃったじゃん」
( ´∀`)「いや、なんかいたから」
妹「だからって、脊髄反射で教えないでよ」
見なくて済むならスルーさせて欲しいです
( ´∀`)「普通、これくらい教えるだろ」
妹「普通は視界の端にお化けなんて映らないからだよ」
( ´∀`)「なんだよ、人が親切で教えてやったのに」
兄は声を荒らげて、ソファにどっと勢いよく座り直しました
妹「別に見ないで済むなら、それでいいですよーだ」
私は気にすることなく、食器の片付けに戻りました
こうしている今もチラチラと、視界の端に黒い影が映ります。開け放った扉の向こう、壁と冷蔵庫の隙間、マネキンの肩・・・
妹(マネキン?)
妹(いや、気にしないでおこう)
今日はやけに視界の端の影が多い気がします。兄が意識させたせいか、気になっているのでしょうか
見ないふりを続けて、食器を片付けていると──
急に兄が新聞紙を丸めて右手に持つと、鬼の形相で迫ってきました
妹「な、なに? 急に怖い顔して」
妹(さっきのこと根に持ってる?)
( ´∀`)「黙ってろ!」
兄はそう言うと、右手を大きく振りかぶり
妹「きゃっ!」
咄嗟に目をつぶり、体をすくめると──
大きな音が耳に響きました。が、痛みはありません。恐る恐る目を開くと、新聞紙は私の横の壁に叩きつけられていました
( ´∀`)「よし!」
兄が新聞紙をどかすと、そこには先ほどの目が潰れていました
妹(というか、お化けって新聞紙で潰れるの?)
( ´∀`)「そいつ、ずっとお前の後をつけてたぞ」
妹「気付かなかった・・・」
いえ、正直に言うなら、気付いていたけど見えないふりをしていたでしょうか
( ´∀`)「虫が嫌だからって、見てないフリしてたら、それはそれで危ないぞ」
妹「くぅ・・・ 言い返せない」
今回は兄の言う通りだと思います。怖いからと目を背けるだけではいけないでしょう
が・・・
兄は潰れた目をティッシュで包んで、ゴミ箱に捨ててしまいました
妹(お化けを虫と勘違いしてるお兄ちゃんに言われると、なんか無性に腹立つ)