はじまりの街 渋谷

ぺろしき

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はじまりの街 渋谷

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〇SHIBUYA109
  文化の発信地 渋谷

〇渋谷の雑踏
  若者の街 渋谷

〇渋谷駅前
  渋谷は──実在した

〇広い改札
  上京してきたばかりの私は──
  駅の改札で立ち尽くしている
  駅の数だけ街がある
  人の多さにめまいがする
???「ねえ。お兄さん・・・」
  その時、見知らぬ少女に声をかけられた
???「何してるの?」
私「どの街に行こうかと、考えてます」
???「行き先なんて簡単には見つからないよ。 私、17年間渋谷にいるけど── ひと駅先のことも、知らない」
私「17年もいるのに? どうして?」
???「渋谷以外興味ないし、行ったことないから」
私「へぇ。 そんなもんなんだ」
???「渋谷だけが世界だよ」
私「渋谷だけが!?」
私「本気じゃないですよね?」
???「本気よ。本気」
???「東京に来たからには あなたも頑張って渋谷の一員にならなきゃね」
私「はぁ」
???「そうだ。 仕事あるよ? やる?」
私「え。 仕事、ですか?」
???「うん。探してるんでしょ?」
私「それはそうですけど。 今のところ大丈夫です」
???「そう。ま、やりたくなったら声かけてよ。 この辺にいるからさ」
私「ありがとうございます」
???「またね」
私「はい」
  17歳があたりまえに働く街──
  それが渋谷の第一印象だった
  だから私は、この街に決めた
  私もまた、17歳だったから
  故郷を捨てたのだから、
  これからは一人で生きていくんだ──

〇渋谷駅前
  少女の言うように仕事はあった
私「ティッシュどうぞ!」
  ティッシュ配り
  これは、少女の言う仕事ではないだろう
  しかし私には、ぴったりの仕事に思えた
  私のポケットティッシュは、
  渋谷を往来する人波に吸い込まれてゆく
  ”人波”
  この言葉を作った人はすごい
  渋谷という街はまさに大海原で、
  行き交う人々は”人波”そのものだ
  波は一人ではなく集団で、よそ者の私さえも大らかに受け入れてくれる
私「柔らかい、ティッシュどうぞ!」
  私はこの集団で、ティッシュを配るという役割を担っているのだ
  私は生きている
  人並みに、生きている
  渋谷の人波で──
  私は必要とされている
私「ティッシュどうぞ」
私「あ!」
???「あ! お兄さん。仕事はじめたの?」
私「はい」
???「また会うなんて、奇跡だね」
私「奇跡ですか」
???「そうよ。だってこのスクランブル交差点を通る人数は1日に約50万人──」
???「信号が1回変わると3000人が行き交うって言われてるの。 なのに、こうして会ったんだから」
私「50万人!」
私「でもあの時「またね」って言ってたじゃないですか」
私「もう会えないと思ってたのに?」
???「うん。 あれは社交辞令」
???「だから、ほんと奇跡だよね。 私の願いが通じたのかな」
???「また会いたいって、思ってたから」
私「・・・」
???「私と来る?」
私「え?」
???「私と、この街で仕事しない?」
私「僕は、この仕事が気に入ってます。 しばらくはこのままで──」
???「謙虚で欲のないとこもいいね」
???「でも、奇跡は何度もおこらないから、 奇跡って言うんだよ」
私「・・・」
???「一人なんでしょ? 一緒に来てよ。 幸せにしてあげるから」

〇入り組んだ路地裏
私「あの・・・」
???「ん?」
私「言っておきたいことがあります」
???「何?」
私「君は僕のことをお兄さん、って言ってくれてるけど──」
私「まだ17歳なんだ」
???「そうなんだ・・・」
私「驚いた?」
???「驚いた」
私「ごめん」
???「思ってた通りで」
私「え?」
???「17歳かなって思ってたの」
私「そうなんだ・・・」
???「お兄さんって、言わない方がいい? なんて呼ぶ?」
私「考えさせて欲しい。 名前は捨ててきたから」
???「・・・いいよ」

〇西洋の城
???「ここが私の家」
私「すごい家だね」
???「このドアを開けたら引き返せない。 いい?」
私「そうなの?」
???「もちろん。 人生ってそういうものだからね」
私「わかった。 行く!」
???「そんな簡単に決めちゃ駄目」
私「簡単じゃない。よく考えた」
???「そういう所も17歳ね」
私「なんだよ。 君だって17歳だろ?」
???「そうだっけ?」
私「・・・え?」
???「17年間渋谷にいるとは言ったけどね」
私「17年間いるんだったら17歳・・・」
私「あ」
???「17歳とは、限らないよね?」
私「じゃあ君は? 何歳?」
???「年齢なんて、私にはどうでもいいことだけど、あなたには重大なことなの?」
私「まぁ。 それなりに・・・」
  すると少女は、私に抱きついた
私「え? ちょっと」
???「これが私。どう?」
私「どうって・・・」
  私は彼女の体温を知る
  控えめに言って最高だった
  でも、同時に考えた
  今、とんでもない危機にさらされている
  このまま進めばもう・・・
  人並みの人生は送れない
  人並みでいいのに──
???「さ、決心した? どうする?」
私「う」
???「もう入りなさい!」
私「わー」

〇散らかった居間
私「中はこんな感じなんだ。 ゴミがすごいね」
???「ゴミじゃなくて、不用品。 全部渋谷で集めるの」
私「持ち帰ってるの? どうして?」
???「渋谷を綺麗にするの。 そして私は華麗なものを作る。 こんな感じでね」
???「どう?」
私「凄い! 不用品から作ったなんて信じられない」
???「嬉しい」
私「たった1人でこれを?」
???「仲間がいるわ。 みんなリモートで仕事してる」
私「不用品を集めるのが仕事?」
???「仕事は人それぞれ。 来て」

〇配信部屋
私「この部屋は?」
???「不用品を作品にするプロセスを、 世界へライブ配信してるの」
???「プロセスを見せることで、 感動を世界と共有する──」
私「すごい・・・」
???「今日からあなたも仲間よ」
私「仲間?」
???「あなたには才能がある」
???「人波から私を見つけ出した──」
???「”人並み外れた”嗅覚がね」
???「私にはあなたが必要なの」
私「う」
???「わ! どうしたの?」
私「嬉しいんだ。 自分のこと不用品だと思ってたから」
???「そっか。昔の私と同じだね」
???「よし! 今日を私たちのはじまりの日にしよう!」
  彼女は私の手を握った──
  私は今、生きている
  生きている
???「さ。 あなたに名前をつけようか?」

コメント

  • 不用品を集めて、再利用、だいぶエコなことをしていますね。
    でもその場に足を踏み入れて、後戻りできなくなるとはどういうことなのでしょうか…。

  • 彼女に出会ったことが、彼の人生の始まりだったのかもしれない…って思いました。
    リスタートするには充分な場所ですよね。渋谷って。
    これからの彼の人生が、渋谷の街のように活気のある素敵なものになりますように。

  • 故郷を捨て、渋谷に出てきた17歳の主人公が1人で生きていく覚悟は、流石に並大抵のものではないですね。また、奇跡は何回も訪れるものでもないですね。

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