5月21日 トリックアート ②真夜中の徘徊者 #シナリオ(脚本)
〇ハイテクな学校
〇学校の廊下
朝、学校につくと生徒達が色めきだっていました。以前に泥棒が入った時と同じざわめきを感じます
妹「またなんかあったの?」
普通科の女生徒「美術室に足跡があったんだよ」
通りがかった噂好きの友人を捕まえれば、意気揚々と教えてくれました
妹「また侵入者?」
普通科の女生徒「違う違う。昨日見つかった絵があるでしょ」
梓「あぁ、変に崩れた扉の絵」
普通科の女生徒「そう! あれからね、外に出る足跡と、中に戻る足跡が見つかったの!」
妹「足跡?」
梓「誰かの悪戯じゃないの?」
普通科の女生徒「いやいや、あれは怪奇現象だね」
彼女は断言しました
妹「自信満々だね。と、いうことは、その足跡には、何か特別なことがあるんだね?」
普通科の女生徒「分かってるじゃないか、ワトソン君。君も現場を見たまえよ、きっと私と同じ結論に達するだろうよ」
妹「それは興味深いですな」
普通科の女生徒「ただし、見る時は左側の扉から、斜めに美術室の絵を見ること!」
妹「斜め?」
普通科の女生徒「いい? この角度じゃないと意味がないんだからね」
奇妙な条件を付けられました
気になった私達は、教室に鞄を置くが早いか実物を見にゆきました
〇学校の廊下
美術室の前には大勢の生徒達が集まっていました。普通科も美術科も入り乱れて、朝とは思えない活気に溢れています
それでも美術室の扉の前で体育の先生が睨みを利かしているため、度を越した騒ぎには至ってません
私達は人混みの隙間から、教えられた通り、左側の扉から、斜めに美術室の絵画を眺めてみます
すると・・・
妹「あっ!」
梓「そういうことか」
驚いたことに、あの歪んだ絵画は立体的な扉に見えました。本当に扉があると騙されるほどリアルです
妹「トリックアートだったんだ」
トリックアートとは、視覚のトリックで脳を騙す絵のこと。角度によって見え方が違ったり、リアルに見えたりするものです
その扉のトリックアートに合わせて、美術室の床に、昨日までなかった黒い足跡がついていました
黒い足跡(靴ではなく裸足です)は、美術室を一度ぐるりと回ってから、扉へと戻っています
試しに角度を変えて足跡を眺めると、歪な足跡になってしまいました
妹「足跡含めてトリックアートか。これはなかなか凄腕のアーティストの犯行ですな」
梓「確かに腕は立つだろうけど、なんか気味悪いな」
妹「そう?」
梓「わざわざ夜中に学校に忍び込んで、こんなことをする? 悪戯にしては手がこみ過ぎてるよ」
妹「それはまあそうだけど。でも、実害は・・・あれ?」
梓「何かあった?」
妹「なんか、今ね。扉が開いて──」
「きゃー!」
一人の生徒の悲鳴を皮切りに、数人の生徒が次々と似たようなことを叫びました
「と、扉が開いた」
「扉の向こうから白い顔がこっち見てた」
「足と首が同じ位置にあった。化け物よ」
たちまち、その場はパニックに陥りました。たまりかねた先生は私達を強制的に解散させます
〇おしゃれな教室
梓「ねぇ、あのとき。騒ぎが起こる前、なんて言おうとしたの?」
妹「言わなくても分かるくせに」
梓「やっぱり・・・」
妹「家にも似た扉がある」
梓「は?」
妹「だから、うちの扉に似てるのがあるんだよ。なんか気になると思ってたんだ」
梓「開いてるの見たとかは?」
妹「それは見てないね」
梓「驚かせないでよ」
いいえ、本当は見ました
ただ認めたくなかったのです。扉の先に映る景色を
〇壁
そこは赤いコンクリートで閉ざされた部屋
うちにある、開かずの間を塞ぐコンクリートの壁だったのですから