5月18日 女優 #シナリオ(脚本)
〇レトロ喫茶
妹「本当にそっくり・・・」
女性「そうなんですか?」
晴れやかな笑顔に、薄っすらと香るいい匂い。握った手から感じる温かさは、生者であることを強く証明していました
編集長「改めて聞きますが、あなたは火事の一件があるまで、あの部屋を使っていたんですよね?」
女性「はい、使ってましたよ」
女性「あの時はもう死んだ! って思ったけど」
女性「案外なんとかなるもんですね。なんとかしてくれたのは消防団の人ですけど」
妹(見た目はそっくりだけど・・・)
エレベーターさんのお姉さんは、一種神秘的な美しさを持つ落ち着いた女性ですが、本物はちゃらんぽらんな感じでした
女性「そうそう、あのマンションに私のドッペルゲンガーが出てるんですよね?」
編集長「はい。見た目だけは瓜二つです」
妹「そうですね。見た目だけは双子のようにそっくりでした」
女性「わー、会ってみたいなー」
( ´∀`)「無理じゃないですかね? そのドッペルさん、たまにしかエレベーターの修理に来てないみたいですから」
女性「そっかー、残念」
妹(あー、お兄ちゃん側の人なんだ)
編集長「やはり、あなたには覚えがない?」
女性「ないですねー。白いワンピースも私用では持ってませんし」
妹「じゃあ、なんであの格好なんだろ?」
( ´∀`)「美人に憧れたんじゃね?」
編集長「短絡的すぎるだろ。お前は小説家目指してるのに、どうしてこう想像力が枯れてるんだ」
( ´∀`)「いやいや、最近の流行りは頭空っぽで楽しめるのがいいんですよ。夢詰め込めますから。俺の時代、来てますから」
編集長「それは読者側だ。作者の頭が空っぽじゃ何も生み出せんわ!」
妹「噂話にのっかったからじゃないかな?」
編集長「噂話にのる・・・か。卵が先か、鶏が先かみたいなものだな」
( ´∀`)「つまり?」
妹「アレが出たからエレベーターの噂が広まったと思ってた。けど実は逆だった。先に噂があって、アレがそれを模倣したってこと」
( ´∀`)「パクったわけか」
妹「いや、うん。言い方はともかく、そうかな」
( ´∀`)「しかし、何でパクったんだ?」
編集長「何かわからないけど、ここにお化けがいるぞ!」
編集長「急にこんなこと言われたところで、大して怖くないだろう」
( ´∀`)「まあ、そうでしょうね」
編集長「これは論理的に不明瞭だからだ。要は信じられないんだな。だが」
編集長「ここには、この場所で殺された恨みで、誰彼構わず襲う霊がいるぞ!」
編集長「と言われたら? そして実際にその場所で事件があったら? 何かよくないことが起きてたら?」
( ´∀`)「マジかよ。ここ、そんなにやべーところだったのか?!」
女性「どどどうしよう? お塩かけた方がいい?」
妹「・・・ただのたとえ話だよ」
( ´∀`)「なんだと!? 編集長、嘘吐いたのか」
女性「そういうのよくないですよ?」
編集長「たとえ話を信じるほうがおかしいだろうが!」
妹「ともかく、話に背景があると、一気に信じやすくなったのは分かったでしょう?」
( ´∀`)「あぁ、身をもって知ったよ。おかげで編集長を信じられなくなったけどな」
エレベーターのアレが彼女の姿を真似たのは、噂を用いて恐怖心を煽るため
もしそうだとしたら、あれには明確な知性があることになります
ただのお化けとは違う。あれはなんなのでしょうか?
妹(これ以上、真実に踏み込むのが怖い・・・)
知りたくない真実を目の当たりにしそうな、そんな怖さがありました