5 選ばれた者(脚本)
〇オフィスのフロア
プレゼンから3日後。
氷室聡「お早うございます・・・」
ナルオシズム「よぉ氷室!いよいよ今日が発表だな!退職届の準備は良いか?」
氷室聡「あの・・・もうそう言うの止めませんか?ハッキリ言って意味無いですよ?」
ナルオシズム「何だよお前・・・僕ちゃんに負けるのがそんなに怖いのか?」
氷室聡「じゃ無くて・・・こんな子供じみた事しても誰も喜びませんよ?そもそも、部長達にはこの事話したんですか?」
ナルオシズム「おいおい知らないのか?僕ちゃんがその気になれば、お前なんか直ぐクビにできるぜ!」
氷室聡「あぁ、そうですか・・・誰にも話して無いと・・・」
崎守ほのか「2人ともお早う!プレゼンの当選者決まったわよ!」
ナルオシズム「お早うございます部長!いよいよですか!?」
崎守ほのか「えぇ、上層部の人達も、随分厳しい目で見てたけど・・・」
ナルオシズム「あぁ!早く教えて下さいよ!!」
崎守ほのか「そう慌てないで・・・折角だから今言うわよ・・・」
ナルオシズム「はい!」
崎守ほのか「今回採用される人は・・・」
崎守ほのか「氷室君の案に決定したわ・・・」
ナルオシズム「ですよねですよね〜!やっぱ僕ちゃんの案に敵う奴なんて誰も・・・って・・・」
ナルオシズム「は、はぁ!?今氷室って言いましたか!?」
崎守ほのか「えぇ、言ったわよ?」
ナルオシズム「ま、待って下さい!どうして僕ちゃんじゃ無いんですか!?あれだけの事してやれるのは、僕ちゃん意外に・・・」
崎守ほのか「あぁ、その事だけどね・・・」
ナルオ社長「シズム、いるか?」
ナルオシズム「ぱ、パパ!?何で僕ちゃんの案が却下されたのさ!?」
ナルオ社長「その事で聞きたい事があってな・・・あれだけのプラントの設計図を作ったのは素直に褒めるべきだと私も思う・・・だがな・・・」
ナルオ社長「肝心の資金はどうやって用意するつもりだったんだ?」
ナルオシズム「え?そんなの、パパに頼めばできる筈じゃ・・・」
ナルオ社長「全く・・・そんな事だろうと思った・・・」
ナルオシズム「ぱ、パパ?」
ナルオ社長「あのなシズム・・・確かに私は社長としてここにいる・・・だがな、社長と言うのは独裁者等では無い、」
ナルオ社長「職員を守る為に在るのだよ・・・社長だから何でもして良い訳では無い・・・無論、それはお前も例外では無い・・・」
ナルオ社長「受付の村瀬君から話は良く聞いた・・・お前、しつこく迫ってたんだってな?」
ナルオシズム「え?だって氷華ちゃんは、僕ちゃんの女だし・・・」
ナルオ社長「それは本当に本人の意思なのか?私が聞く限りでは、随分と嫌な思いをしてたそうだが・・・」
ナルオシズム「え?だってあれは照れ隠しでしょ?それ以外の何だってんだよ?」
ナルオ社長「なるほど・・・決まりだな・・・」
ナルオ社長「シズム、これは社長として、父親としての言い付けだ、お前をこれから、田舎の子会社へと異動させる・・・」
ナルオシズム「は、はぁ!何でだよ!?」
ナルオ社長「これからお前には別の部署で自分を1から見つめ直してもらおうと思う・・・」
ナルオ社長「人として、社会人としての認識を改めてもらう・・・愚かな息子を庇ってやれる程、私は甘く無いのでな・・・」
ナルオシズム「ひ、ひぃ!!でも僕ちゃんが異動したら氷華ちゃんは・・・」
ナルオ社長「それが何だと言うのだ?分かったら早く準備しろ!異動したら、私のバックは無いと思え!」
ナルオシズム「は、はい!」
ナルオ社長「・・・私も些か、父親として甘かった様だな・・・」
氷室聡「あ、あの、社長・・・さっきの話本当ですか?」
ナルオ社長「ん?あぁ、シズムは正式に異動させるのは本当だ・・・」
氷室聡「ち、違います・・・何と言うかこう、俺の考えた案が正式採用されて良いのかって・・・」
ナルオ社長「ん?何をそんなに動揺してるんだ?君のプレゼンの採用は上層部全員の総意の下に決まった事だ・・・」
氷室聡「そ、そうかも知れませんが・・・ナルオさんのプレゼンの方が実現できた時の事考えれば・・・」
ナルオ社長「いやいや・・・流石の私でもコスト面は心配するし、あいつの案は後先を考えて無さ過ぎる・・・」
ナルオ社長「こう言うのは、地道に積み上げてこそ意味があるのだよ・・・」
氷室聡「そ、そうですか・・・」
ナルオ社長「まぁそう言う事だ・・・これは決定事項だし、君はもっと自信を持って良い・・・大変なのはここからだから、」
ナルオ社長「これからも気を緩めずに頼むよ・・・」
氷室聡「・・・!はい!」
ナルオ社長「そう言う事だ・・・私は失礼する・・・」
まさか俺の案が採用されるとは思っておらず、まだ動揺が抑えられないでいた。何がともあれ、俺は今日から本格的に
AIのサポートアプリを開発する事となるので、社長の言う通り、ここから俺の仕事が始まるのだった。