3 氷姫に手を引かれて(脚本)
〇男の子の一人部屋
氷室聡「駄目だ・・・何か良い方法無いかな・・・」
プレゼンの発表まで残り一週間となった。ナルオさんが無茶振りをしてから何か良い知恵は無いかとあれこれ考えたが、
中々良い物が思い付かなかった。
氷室聡「このままウジウジ考えても埒が明かないな・・・気晴らしに商店街にでも行くか・・・」
〇通学路
氷室聡「取り合えず、本屋にでも行こうかな・・・何か参考になる物が見つかれば御の字だし・・・」
村瀬氷華「あれ?氷室さん?こんな所で奇遇ですね・・・」
氷室聡「あれ?村瀬さんじゃん、散歩でもしてたの?」
村瀬氷華「まぁ、そんな所です・・・氷室さんも散歩ですか?」
氷室聡「まぁ、近いっちゃ近いかな・・・商店街で本屋でも行こうかなって・・・もう直ぐプレゼンだし・・・」
村瀬氷華「そうなんですね・・・でも何か浮かない顔してますが、何かあったんですか?」
氷室聡「う〜ん・・・これ人に話す事でも無いんだよな・・・」
村瀬氷華「えぇ?教えて下さいよ・・・」
氷室聡「まぁ、隠しても仕方無いけど・・・実はな・・・」
俺は事の発端を全て村瀬さんに話した。ナルオさんが俺に対して次のプレゼンで勝負する事。俺が負けたら二度と村瀬さんに
近付かない事等、話せる事は全て話した。
村瀬氷華「ちょ!ちょっと!何ですかそれ!?明らかにナルオさんの独り善がりじゃ無いですか!!」
氷室聡「あぁ、だから参ってるんだ・・・より良いプレゼンなんて簡単に出せる物じゃ無いし・・・」
村瀬氷華「私の事はともかくとして、これ完全にナルオさんの八つ当たりじゃ無いですか!氷室さん!こんな話無視するべきですよ!」
氷室聡「そうしたいのは山々だけど、それはそれで変に突っかかれそうだからできないよ・・・」
氷室聡「何より、もしこれで良いのが出せたら、俺に取っても大きな一歩だし・・・」
村瀬氷華「氷室さん・・・」
氷室聡「まぁ仮に負けたとしても、また別の所で頑張るのもありだし、無理にあの人と同じ場所にいるのも良く無いから、」
氷室聡「どの道プレゼンからは逃げるつもり無いよ!チャレンジだと思えば気が楽だし!」
村瀬氷華「な、何でそんな前向きに・・・」
氷室聡「まぁそう言う事だから、俺もう行くよ!村瀬さんは余り気にしないでね!」
村瀬氷華「あ・・・ま、待って下さい!」
氷室聡「ん?どうかした?」
村瀬氷華「氷室さんこれから暇ですか?暇ですよね?」
氷室聡「え?まぁある意味暇だけど、てかこれからプレゼンの・・・」
村瀬氷華「私、これから氷室さんが行く所の近くに行き付けのカフェがあるんです!良かったら一緒に行きませんか?」
氷室聡「え?何だよ急に?」
村瀬氷華「あんまり気を詰め過ぎると良く無いですよ!たまには息抜きしましょう!奢りますから!」
氷室聡「えぇ?いやそこまでしなくてって、ちょ、村瀬さん引っ張らないで!」
何だか良く分からないが、俺は半ば強引に村瀬さんと商店街のカフェに行く事となった。これからプレゼンの事も考えたいが、
確かに功を詰め過ぎるのも良く無かった。
〇レトロ喫茶
村瀬氷華「着きました、ここです!」
氷室聡「おぉ・・・この前の時とはまた違った感じで良い店だな・・・」
店員「いらっしゃいませ!2名様のご来店で宜しいですか?」
村瀬氷華「あ、はい・・・禁煙席お願いします!」
店員「畏まりました!こちらへどうぞ!」
それから俺達は席に案内されて、お冷をもらった後にメニューを見るのだった。
氷室聡「なぁ村瀬さん・・・」
村瀬氷華「ん?どうしました?」
氷室聡「今日はどう言う風の吹き回し?恩返しのつもりなら、この前の店で充分受け取ったから・・・」
村瀬氷華「う〜ん・・・氷室さん・・・私からこう言う事されるのって、もしかして快く思ってませんか?」
氷室聡「いや、そう言うつもりじゃ無いよ?只、俺の事で無理させてるなら何か悪いなって・・・」
村瀬氷華「・・・これは私がやりたいからやってるんです・・・氷室さんがどう捉えてるかはお任せですが、私やっぱり、」
村瀬氷華「氷室さんに恩返ししたいし、氷室さんが困ってる時に助けて上げたいんです・・・氷室さん、私が言うのも難ですが、」
村瀬氷華「余り一人で抱え込まないで下さい・・・一人で抱え込み過ぎると、いつか本当に自分が参っちゃいますよ?」
氷室聡「そ、そうか・・・何か心配させちゃった見たいだな・・・」
村瀬氷華「いえ、分かってくれたなら何も言いません・・・私にできる事があるなら言って下さいね?」
氷室聡「・・・ありがとう・・・」
氷室聡「ん?あれは・・・」
村瀬氷華「ん?どうしました?」
村瀬さんとの会話の中で、俺はとある物が目に入った。
少年「これがあぁなるから、これをこうしてっと・・・」
少年「これでどうかな?」
スマホ「おめでとうございます!全問正解です!」
少年「わぁ!やった!!」
氷室聡「あの子、スマホで何してるんだ?何か全問正解とか言ってたが・・・」
村瀬氷華「あぁ!スマホでできる勉強アプリですね!」
氷室聡「勉強アプリ?」
村瀬氷華「最近はAIが採用されてて、それが子供達に凄く人気なんですよ・・・」
氷室聡「へぇ・・・どんな感じなの?」
村瀬氷華「あ、折角だから見せますね!」
たまたま子供がやってた勉強アプリの事が気になり、俺は村瀬さんに見せてもらう事にした。
氷室聡「どれどれ・・・へぇ、こうして見ると結構分かり易いな・・・褒め方も上手いし、これならやってる側もやる気上がるな・・・」
村瀬氷華「そうですよね!弟も良くやってます!」
氷室聡「あ、弟さんいるんだ・・・」
村瀬氷華「そうですが・・・そう言えば言ってませんでしたね・・・」
氷室聡「そりゃまぁ・・・・・・AI?」
村瀬氷華「ん?氷室さん?」
氷室聡「ま、待て、これは行けるかも!!」
村瀬氷華「え?え?氷室さん?」
氷室聡「村瀬さんありがとう!俺、次のプレゼンやれそうだよ!!」
村瀬氷華「え?ど、どうしたんですか?」
氷室聡「あぁ!あのな、良く聞いてくれよ?俺はな・・・」
それから俺は、思い付いたプランを村瀬さんに打ち明けた。もしこれが実現できたら会社に取ってもプラスになると、
そう考えたら興奮が抑えられなかった。その後、俺は村瀬さんに奢られて見送った後、直ぐに家へ帰るのだった。