5月16日 視線(脚本)
〇中規模マンション
〇高層マンションの一室
朝からずっと、誰かに見られている気がしました。家にいる間、ちらちらとこちらを伺うような視線がするのです
妹(家にいるのは、私とお兄ちゃんだけ。他に誰も居ないはずなのに)
妹(お化けが相手なら、燻煙式殺虫剤の出番だけど)
妹(いやでも、姿の見えない相手じゃ、本当に追い出せたか分からないか。ぬか喜びしてるところを、ぐさっとやられたくないなぁ)
仕方ないので、地道に探す事にしました
〇部屋の前
視線はどの部屋からも感じます。なので家の中をグルグルと歩き、視線を探りますが
妹「うん、わかんない」
熟練の武道家でもあるまいし、ただの女子高校生が、視線をたどれるわけありません
妹「そうなると、頼りになるのは・・・」
〇女性の部屋
妹「君が頼りだ!」
私は部屋に戻り、人形を手に取りました
お化けの人形。お化けですが、悪い子ではなく、私を助けてくれたこともあります
単に弱すぎて、私に守って欲しいという下心があるだけですが
ともかく、今回はその弱すぎるアンテナを使わせてもらうことにします
この子を色々なところに近づけて、何らかの反応があったところにお化けがいるはずです
妹「まあこんなので本当に見つかる訳ないだろうけど」
〇高層マンションの一室
妹「いた!」
壁と扉の間に人形を近づけたら、物凄い腕が重くなりました。腕に子供がしがみ付いてくるような
妹「まさか、本当に?」
私は試しに人形をソファーに置いて、もう一度同じ場所へ手を伸ばします。するとあの重さは感じません
軽い冗談で始めたことが、大きな事件へ連なってしまうドラマの主人公の気分が分かった気がしました
妹「まあ知ってしまったものは仕方ない」
私は壁と扉の間を調べます。すると見慣れないカードが見つかりました
<●> ←こんな感じの、簡略化された目が描かれています。カラス除けの風船と同じで、目に見えるだけならよいのですが
じっとこちらを見るそれは、今まで感じていた視線と同じものでした
電話が鳴りました。不意を突かれ、思わず体がびくっと震えます
妹「もしもし?」
電話「・・・」
妹「もしもし? 誰ですか、いたずらなら切りますよ?」
ちょっと気味悪かったこともあって、強めに言います。私の様子を見て、兄も近づいてきました
電話「くくくっ・・・」
電話「やっと・・・」
妹「え?」
電話「やっと一つ見つけたね」
妹「やっと一つ? 見つけた?」
私は手にしたカードを見て、ゾッとしました。その視線は私へと動いていたのです
妹「ひっ!」
( ´∀`)「なんだ、悪戯か?」
兄はそう言って、拾ったカードを破りました
妹「あ・・・」
電話「ぎゃあぁぁぁ!」
電話口からとてつもない悲鳴が響き、そこかしこでバサバサと、カードが落ちる音がしました
( ´∀`)「まだあるのか。誰だよ、こんな悪戯したの」
そう愚痴りながら、兄はカードを次々と破り捨てていきました
電話「ぎゃぁぁぁ!!」
妹「案外、捨て身の作戦だったんだ・・・」