5月10日 絵の具 ②芸術家の霊(脚本)
〇ハイテクな学校
朝、学校に着くと、パトカーが止まっているのが見えました
〇学校の廊下
当然、これはあちらこちらで話題になってます。生徒達はガヤガヤと、朝から盛り上がってます
妹「これは校庭に犬が乱入した以上のスキャンダルだね」
などいう私も、好奇心を刺激される側でしたが、それはクラスに着くなり、それは一変します
〇教室
『美術室で盗難があったので、美術部員は確認に行くように』
黒板にでかでかと書いてありました
妹「これは騒ぎを見に行ったら、自宅が燃えてたくらいのスキャンダルだね」
by 美術部員
梓「馬鹿なこと言ってないで、さっさといくよ」
妹「あー・・・」
〇美術室
一時限目は特別に、荒らされた美術室を片付けと、無くなったものがないかのチェックをさせられました
梓「私は筆を数本持ってかれた。空は?」
妹「あれが・・・ない!」
梓「まさか!」
ロッカーの中も、外に投げ出されたものを調べても、あれが見つかりません。背筋に冷たいものが走ります
妹「描きかけの絵がない! どうしよう、まだ未完成なのに晒し物にされてたりしないよね?」
梓「驚かせないでよ。あの絵の具かと思ったじゃん」
妹「あ、そっちもなかった」
梓「ちょっと?!」
『Ever Ready』と書かれた絵の具は、画用紙で厳重に包んでロッカーの奥にしまっておいたけど、なくなってました
妹「まあ、自分でどこかに行ったのかも知れないから」
梓「超常現象に慣れすぎじゃない?」
〇ハイテクな学校
美術部の被害は絵の具や筆などの小物でした。そもそも美術室を狙っている時点で窃盗目的ではなさそうです
その為、校内では七不思議の一つを、まことしやかに噂する生徒もいました
〇美術室
『未完の作品を描き続ける美術教師の霊』
ずっと昔ね、新進気鋭の画家として注目されていた美術教諭がいたの。教えるのも上手で、生徒からの人気も高かったわ
彼は結婚式を控えていてね、美術室で恋人の絵を描いていたわ。結婚式で恋人の絵を飾るためにね。だけど──
式を前に、恋人を事故で失ってしまった
恋人の葬儀を終えても、彼はひどい失意から抜けられずにいたわ
だけど、ある日、彼は恋人の絵に手を加え始めたの
恋人の美しかった姿を残そうとしてるとか、思い出に浸ってるだけとか、周囲は勝手なことを言ったわ
でも、彼は意に介さず、まるで魂を絵に染み込ませるように、昼も夜も描き続けた
それから数日後、美術室でひどくやつれた彼が倒れているのが発見された
彼は、このままじゃ間に合わないと、うわ言を呟きながら、そのまま息を引き取ったわ
──彼が描き残した絵を見た人は絶句した
そこにあったのは美しい恋人の姿ではなく、無残に朽ちた遺体の姿だった
〇教室
普通科の女生徒「彼は今も、美術室で絵の具を盗んで恋人の絵を描き続けているの」
普通科の女生徒「変わりゆく恋人の姿をずっと・・・」
妹「それって単に絵の具失くした理由をお化けのせいにしてるだけだよね?」
普通科の女生徒「そうともいう」