5月13日 絵の具 ③九相図(脚本)
〇ハイテクな学校
警察から学校に、美術室の窃盗犯が捕まったと連絡がありました
犯人は同じ市内に住む若い画家。作品が評価されないストレスから、スリルを求めて、学校荒らしを繰り返していたそうです
そのため警察は、盗品の本人確認を行うため、学校に来ています
〇美術室
と、本来なら喜ぶところですが──
美術教師「残念ながら、すぐ返して貰えるわけじゃないからな」
皆のやる気はジェットコースター並みの急降下でした
妹「描きかけの絵を盗まれた私は、もっと悲惨なんですが?」
妹「これから証拠品として、あちこちの方々に見られるわけですが?」
妹「せめて完成品なら良かったのに」
梓「よしよし」
美術教師「そのことなんだが・・・」
美術教師「林田の絵は・・・そのなんだ。犯人が完成させたみたいでな」
妹「は?」
美術教師「これなんだが」
顧問の先生が差し出した絵には、豊かな色彩が施されていました。というか、かなり原型を失くしてます
ワンピースのお姉さんは、首と腕のない天使になってました
艶やかな白い肌は、ツンとした腐臭が漂ってきそうな生々しい腐肉に
ワンピースは野ざらしにされボロボロになった布に変わってます
エレベーターは真っ暗な闇に変わり、その中心に艶めかしく凛と立つ姿は、死体とは思えないほど綺麗に映ってます
生き生きとした躍動感のある、腐敗した屍体の絵。私には出せなかった、あの生命の温もりを感じる屍体を再現していました
だからこそ、あの絵の具を使ったのだとわかりました
美術教師「違う・・・」
顧問の先生は青ざめて、首を振りました
美術教師「私が見た時と違う。あの時は腐ってなんてなかった」
妹「腐ってなかった?」
妹(つまり、絵の中で死体の腐敗が進んでる?)
七不思議の話を思い出しました。教師の霊が、死んだ恋人の変わりゆく姿を描き続けているという話を
妹(この絵も屍体が腐敗していく様子を描いている? いやいや、犯人はもう捕まってるから、勝手に腐っていってる?)
妹「だとしたら、次見る時はもっと酷い姿になってるわけか」
妹「時間経過なら骨だけど、もし見た回数だったら・・・強烈なの見ることになりそう」
私は盗まれた絵の引き取りを拒否しました
〇警察署の入口
盗品の絵はその後、警察が証拠品として管理しているそうです
もしかしたら、この話に興味を持つ警察官がいるかもしれませんね。こっそり見る人もいるかもしれません
果たして、次見たときは、この絵はどんな絵になっているのでしょうか?
骨か、死骸か、それとも別の何か・・・かも知れませんね