5月1日 依頼人 #シナリオ(脚本)
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
「あああぁぁぁぁ!」
玄関ドアに手をかけると、中から兄のうめき声が聞こえてきました
妹「お兄ちゃんが苦しめられてる?!」
今まであらゆる怪奇現象を、勝手な判断で強引に処理してきた兄が、ついに敗北したのでしょうか?
妹(怖い。逃げたい。けど、あんなのでも大切な家族・・・)
湧かない勇気の代わりに、我武者羅な怒りを盾に、勢いよく扉を開いて中へ突入しました
妹「わー!!」
〇玄関内
入ってすぐ、見知らぬ背中にぶつかりました。私の体当たりを受けても、数歩よろけただけで持ちこたえます
編集長「くっ!」
( ´∀`)「編集長!」
兄はその人の元へ駆け寄ろうとしましたが、すぐその場に倒れこみます
( ´∀`)「あああぁぁぁぁ!!」
妹「お兄ちゃん、まさかやられたの?!」
( ´∀`)「あ、足が痺れて・・・ あああーー!」
妹「は?」
〇高層マンションの一室
十分後──
( ´∀`)「妹の空です」
妹「先ほどはとんだ無礼を」
編集長「いやいや、気にしなくていい。悪いのは紛らわしいこいつだからね」
お客さんはそう言って悪そうな笑顔を見せます。見た目こそ怪しい人ですが、兄のバイト先の編集長さんだそうです
妹「ところでなんで兄はずっと正座をさせられているんですか?」
編集長は顔を曇らせ、兄をひと睨みして
編集長「この部屋に他の人間を住ませてしまったからだよ」
荒げた声は嫌なビブラートを響かせ、見た目に負けずおどろおどろしい。ちょっと鳥肌立ちました
( ´∀`)「いやでも、妹を路頭に迷わすわけにもいかないし」
編集長「普通の部屋を紹介すればいいだろ」
( ´∀`)「はい、すみません」
妹(あのお兄ちゃんが黙らされた? この人、出来る!)
それはそうとして、先ほどの物言いからして、この人は事故物件のことを知ってる様子です
妹「もしかして、ここのこと、ご存じですか?」
編集長「あぁ、よく知っている・・・なにしろ、彼にロンダリングバイトを斡旋したのは私だ」
妹「そんな、まさか」
妹「つまり、あなたが全ての黒幕ですね。終盤になったから宣戦布告にやってきたんですか!」
( ´∀`)「なんでそうなる?!」
妹「見た目からして怪しかったもん! 喋り方とかネクロマンサーのそれっぽかったし」
( ´∀`)「お前、ネクロマンサーの知り合いなんていないだろ」
妹「じゃあ、事件を依頼した怪人物が真犯人っていう、よくある展開のほうで!」
( ´∀`)「どういう展開だよ! 確かに見た目は怪しいけど!」
編集長「いや、あのね、確かに危険なことを頼んだけど、それは君の兄なら大丈夫だと判断しただけで。悪いことする気はなくてね」
妹「お兄ちゃんなら大丈夫?」
編集長「そう。彼だけなら、無事に乗り切れるはずだったんだ」
妹「そこへ想定外の私が来てしまった、と」
編集長「決して他人は連れ込むなと、しつこく言い聞かせたのに、こいつときたら」
( ´∀`)「妹は他人じゃないですよ」
編集長「そういう意味じゃないわ!」
話を聞く限り、この人は怪しいけど悪人ではないようです
妹「・・・悪いのは大体お兄ちゃんなわけか」
編集長「ずいぶんと遅くなってしまったが、これからは私も、君達が無事に退去できるよう手助けをしよう」
妹「いいんですか?」
編集長「今日、隣に越してきた。何かあれば訪ねて来てくれ」
これは黒幕イベントじゃなく、追加戦士イベントだったようです。これはまさしく、生きて退去する希望が見えて──
妹「隣に部屋を借りた?!」
編集長「そうだが?」
妹「エレベーター! エレベーターに乗りましたか?! 女優のお姉さんに会いましたか?!」
この事故物件に住むなら、彼女に会うことが必須条件です。会ってないと即日返納されます
慌てふためく私に対し、編集長は静かに頷きました
編集長「問題ない。そこらへんの下調べは済ませてあるよ」
妹「それはよかった」
編集長「しかし、本当に彼女にそっくりだったな」
妹「そっくり?」
編集長「ああ、もうこんな時間か。今日のところは、これでお暇するよ」
妹「あ、はい」
( ´∀`)「玄関まで送りま・・・」
( ´∀`)「あああぁぁぁ! 足がぁー!」
妹「私が代わりに行くから」
〇玄関内
先日のパッチワークの夢と、事故物件に関わる人物の登場
退去まであと一か月半。私の生活は、ここから大きく変わってゆく。そんな気がしました
〇中規模マンション
〇高層マンションの一室
( ´∀`)「編集長が行方不明になってしまった!」
編集長は初日で脱落しました
妹「あの人、何しに来たの?!」