第20話 見つけたぞ!(脚本)
〇大学の広場
小判 早馬(こばん そうま)「教授室から消えただと!?」
小判 早馬(こばん そうま)「非常口から逃げ出したのか!?」
〇応接室
SAT隊員「いえ、出入り口は一つです」
SAT隊員「窓も内側から鍵がかかっています」
SAT隊員「何者かが抜け出したとは思えません」
〇大学の広場
小判 早馬(こばん そうま)「クソッ・・・一体どういうことだ!?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「小判くん、ちょっといいかしら」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「伽藍は人の記憶を消せる。そうよね」
小判 早馬(こばん そうま)「現状では、そう推察されます」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「じゃあ伽藍があたしたちの前を通り──」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「その記憶を消した場合はどうかしら」
小判 早馬(こばん そうま)「200名以上で監視しているんですよ!?」
小判 早馬(こばん そうま)「そんな大勢の記憶を同時になんて──」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「──っ!!」
〇大学の広場
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「ね、ねえ小判くん」
小判 早馬(こばん そうま)「なんです、警部」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「向こうの方から何か──来てない?」
小判 早馬(こばん そうま)「何を仰ってるんです?」
小判 早馬(こばん そうま)「中庭にはSAT以外、誰もいませんよ?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「それはわかってる・・・わかってるのよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)(何なの・・・この背筋に走る悪寒は)
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)(多分いま、下手なことを言えば殺される)
小判 早馬(こばん そうま)「警部?」
〇大学の広場
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「なんでもないわ。勘違いだったみたい」
小判 早馬(こばん そうま)「警部、もしかして──」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「いいえ。あたしも見えなかったわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「誰も──見えなかった。それは確かよ」
SAT隊員「警部補。教授はどこにも見当たりません」
SAT隊員「構内での目撃情報も無くなりました!」
小判 早馬(こばん そうま)「クソッ。もう一度サーモグラフィーで──」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「止めましょう。これ以上は無駄だわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「恐らく伽藍は逃げたのよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あたしの勘が正しければ・・・ね」
〇駅のホーム
〇シックなバー
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・」
覚、おい待てよ。覚!
〇学校の駐輪場
白宵 覚(しらよい さとる)「なんだ? もう帰るところなんだが」
六道 睦月(ろくどう むつき)「何か最近、俺らのこと避けてねーか」
白宵 覚(しらよい さとる)「別に。俺が誰とつるもうが勝手だろ」
白宵 覚(しらよい さとる)「じゃあな」
六道 睦月(ろくどう むつき)「だから待てって!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前んちの事情は知ってる。けどさ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ダチと縁を切るのは違うだろ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺たちの未来はまだ続くんだぜ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「親がいなくなるその先までな」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・何が言いたい?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前が家族といた時間より──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺との方がいずれ長くなるってことだ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「馬鹿馬鹿しい。俺は帰るからな」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ちょっと待てって、覚!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺は友達をやめるつもりはないからな!」
〇シックなバー
アルテミス「ねぇってば! 覚!」
白宵 覚(しらよい さとる)「ん? どうした?」
アルテミス「どうしたのはこっちの台詞だよ」
アルテミス「僕ずっと話しかけてたのに」
白宵 覚(しらよい さとる)「そうか? どれくらいだ?」
アルテミス「5分くらいかなぁ」
白宵 覚(しらよい さとる)「5分・・・多分眠ってたんだな、俺は」
アルテミス「ええっ!? あれで?」
白宵 覚(しらよい さとる)「ああ。夢も見ていたようだ」
アルテミス「怖い夢?」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや、昔の思い出さ」
〇教室
差し押さえになった噂が広がって
俺は周囲から憐れみの目で見られた
教師も腫れ物のように俺を扱ったよ
だがそんな中──
〇学校の駐輪場
睦月・・・あいつだけが
俺と友達でいると高らかに宣言したんだ
〇シックなバー
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月は昔からしつこくてな」
白宵 覚(しらよい さとる)「風邪で休んでるのに不登校だと言って」
白宵 覚(しらよい さとる)「高熱の俺を引きずって学校に・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・っ」
アルテミス「覚・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「なあ、アルテミス。わかるか?」
〇シックなリビング
親に捨てられても──
〇入り組んだ路地裏
ロンダリングで先輩に殴られても──
〇立ち飲み屋
睦月がいつも、俺を支えてくれたんだ
〇シックなバー
白宵 覚(しらよい さとる)「今、俺が生きているのはあいつのお陰だ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「しかしな、覚。世の中には色んな奴がいる」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「善人のふりした悪人だって中には──」
白宵 覚(しらよい さとる)「明闇、俺はな」
白宵 覚(しらよい さとる)「ロンダリングに10年間、勤めている」
白宵 覚(しらよい さとる)「善人の皮を被った奴なら腐る程見てきた」
白宵 覚(しらよい さとる)「だけどあいつは・・・睦月は」
白宵 覚(しらよい さとる)「一度だってそんな感じはしなかったんだ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「おい! どこに行くんだ、覚」
白宵 覚(しらよい さとる)「会社に戻る。仕事が残ってるんでな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「いや、だが外は・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「心配するな。九条なら予知で避けるさ」
白宵 覚(しらよい さとる)「また作戦が決まったら連絡くれ」
白宵 覚(しらよい さとる)「相手が誰であろうと躊躇はしないつもりだ」
アルテミス「覚・・・」
〇空
〇地下の部屋
磯村 新太(いそむら しんた)「えっ?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「腹減ったやろ。それ食べや」
磯村 新太(いそむら しんた)「弁当・・・ごくり。いや、いらない」
九条 醒夜(くじょう せいや)「無理すな。毒は入ってへん」
磯村 新太(いそむら しんた)「いいのか? 逃げるかもしれないぞ?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「アホ。秒で追いついてしばき倒すわ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「それに。下手に抜け出してみい」
〇岩の洞窟
九条 醒夜(くじょう せいや)「出口につく前に野垂れ死にや」
磯村 新太(いそむら しんた)「確かにそうかもな・・・」
〇地下の部屋
磯村 新太(いそむら しんた)「んじゃまあ、失礼して・・・」
磯村 新太(いそむら しんた)「ぱくぱく・・・う、うめぇ」
磯村 新太(いそむら しんた)「そういやあんた、見たことある顔だな」
磯村 新太(いそむら しんた)「そうだ! プロ野球選手の九条だ!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「他人の空似やろ」
磯村 新太(いそむら しんた)「そうだよな。野球選手、金あるしな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「あんた、野球詳しいんか?」
磯村 新太(いそむら しんた)「いんや。弟と妹さ」
磯村 新太(いそむら しんた)「あいつら、九条選手の大ファンなんだ」
磯村 新太(いそむら しんた)「部屋にでっかいポスターが貼ってあんだぜ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・そうか」
九条 醒夜(くじょう せいや)「なんで弟らは彼のファンなんや?」
磯村 新太(いそむら しんた)「なんでも九条選手ってのは不眠症らしい」
磯村 新太(いそむら しんた)「だからじゃないかな。よく言ってるよ」
磯村 新太(いそむら しんた)「「彼は不眠症の希望なんだ」ってさ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ちょお待て。弟ら、歳なんぼや」
磯村 新太(いそむら しんた)「えっと・・・8歳と9歳かな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「どっちかが不眠症なんか?」
磯村 新太(いそむら しんた)「両方だよ。生まれつきな」
〇古いアパート
まだ小学生なのに二人ともクマがあってさ
いつも頭痛とかめまいに苦しんでる
〇地下の部屋
九条 醒夜(くじょう せいや)「そ、そうか」
磯村 新太(いそむら しんた)「な、なあ。ところで聞いてもいいか」
磯村 新太(いそむら しんた)「あんた、なんで俺を誘拐──」
磯村 新太(いそむら しんた)「いててて!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「食い終わったんならお喋りは終わりや」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ほな、また気が向いたら来るわ」
〇岩の洞窟
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・ふぅ」
あいつら、九条選手の大ファンなんだ
九条 醒夜(くじょう せいや)「クソッ・・・僕は何をやっとるんや」
九条 醒夜(くじょう せいや)「何が正義のヒーローや」
いいかい、九条醒夜。よく聞くんだ
〇競技場の通用口
???「不眠を止めれば、君は元の状態に戻る」
???「二度と野球は出来ないだろうね」
???「それでも君はこの不眠を止めたいのかい?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「いや・・・僕は・・・」
???「ヒーローでいたいんだろう?」
???「俺の下につけ。九条」
〇岩の洞窟
九条 醒夜(くじょう せいや)「クソッ!」
まだ小学生なのに二人ともクマがあってさ
いつも頭痛とかめまいに苦しんでる
九条 醒夜(くじょう せいや)「僕は・・・ただの自分勝手な阿呆や」
九条 醒夜(くじょう せいや)「覚、アルすけ、明闇、ナイト・・・すまん」
〇白
〇岩の洞窟
九条 醒夜(くじょう せいや)「ひよりん・・・かんにんやで」
〇住宅街
白宵 覚(しらよい さとる)「よし。この道なら九条は現れないな」
白宵 覚(しらよい さとる)「こ、ここは・・・」
〇一戸建て
白宵 覚(しらよい さとる)「俺の家・・・!」
白宵 覚(しらよい さとる)「九条の通る道を回避した弊害か」
ただいまー父さん、母さん、睡ー
〇シックなリビング
白宵 朝深(しらよい あさみ)「おかえり覚、テストはどうだった?」
白宵 覚(しらよい さとる)「もう最悪だよ、ヤマは外すしさ」
白宵 睡(しらよい すい)「ヤマなんて張るからだよ」
白宵 睡(しらよい すい)「ちゃんとテスト範囲全部やりなよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「うるさいぞ! 睡!」
白宵 昴(しらよい すばる)「おーい。喧嘩するなー」
〇一戸建て
あはははは
うふふふ
〇一戸建て
白宵 覚(しらよい さとる)「父さん・・・母さん・・・睡・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「睡・・・?」
白宵 覚(しらよい さとる)「そういえば睡はどこへ行ったんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「何の目的で親父たちと離れ──」
???「駄目だよ、覚。それ以上は」
白宵 覚(しらよい さとる)「──!」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「その顔は、もうわかってるって表情だね」
白宵 覚(しらよい さとる)「どうやってここが?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「簡単さ。九条にここ”以外”を監視させた」
六道 睦月(ろくどう むつき)「予知を使うお前ならここを通るだろ?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前は九条を警戒しすぎるあまり」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺の接近を見落としたのさ」
白宵 覚(しらよい さとる)「何の用だ? 俺を廃人にする気か?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「事と次第によってはね」
六道 睦月(ろくどう むつき)「一度だけ言うぞ? 覚、俺の仲間になれ」
白宵 覚(しらよい さとる)「何だって!?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「驚くことじゃないだろ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前が抜ければ、インソムニアは無力だ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺は警察から逃れる手段を得られる」
六道 睦月(ろくどう むつき)「いい事づくしだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・理由を聞いてもいいか」
白宵 覚(しらよい さとる)「なぜ、こんな事をした」
六道 睦月(ろくどう むつき)「理由? 覚の記憶を封じたことか?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「それとも闇バイトを運営していること?」
白宵 覚(しらよい さとる)「全部だ。全部!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「それ言ったら、仲間になるのか?」
白宵 覚(しらよい さとる)「内容次第だ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「言うと思った」
六道 睦月(ろくどう むつき)「あれ? 笑うとこじゃなかった?」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月っ・・・!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「わかった、ちゃんと言うよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前は忘れてるからな」
六道 睦月(ろくどう むつき)「・・・覚。俺は過眠症じゃないんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「本当の俺は──不眠症なのさ」
〇警察署の廊下
〇オフィスのフロア
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「小判くーん」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あれ? 始末書?」
小判 早馬(こばん そうま)「とっくに終わりました」
小判 早馬(こばん そうま)「警視総監にも厳重注意されましたよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あそう。じゃあ、何を?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「ICレコーダー?」
小判 早馬(こばん そうま)「ええ。犯人が記憶を消す能力を持つなら」
小判 早馬(こばん そうま)「俺も何か消されてるかも知れないでしょう」
小判 早馬(こばん そうま)「だったら”記録”しておくのはどうかってね」
小判 早馬(こばん そうま)「日々の音声をテキストに起こしてるんです」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「マメなのね・・・惚れ直しそう」
小判 早馬(こばん そうま)「邪魔するならどっか行ってもらえます?」
伽藍教授のことで、少しお時間を戴きたい
小判 早馬(こばん そうま)「ん・・・?」
小判 早馬(こばん そうま)「なんだこれ」
警察!? 教授、何かしたんですか
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「どうしたの?」
小判 早馬(こばん そうま)「ふふ・・・はははっ!」
小判 早馬(こばん そうま)「見つけた! 見つけたぞ!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「なによ。そんなに興奮しちゃって」
小判 早馬(こばん そうま)「この会話聞こえますか!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「聞こえるわよ、事情聴取でしょ?」
小判 早馬(こばん そうま)「・・・ないんですよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「えっ」
小判 早馬(こばん そうま)「記憶にないんですよ! この音声!」
小判 早馬(こばん そうま)「これは、俺と六道准教授の会話です!」
小判 早馬(こばん そうま)「ずっと疑問だったんですよ」
〇おしゃれな大学
誰も覚えてない教授、伽藍人志
手に入る写真はいつも同じ正面像ばかり
彼の性格も、背恰好すら誰も覚えてない
そんなのおかしいじゃないですか
〇オフィスのフロア
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「まさか!」
小判 早馬(こばん そうま)「そうです! 謎の教授、伽藍人志は──」
小判 早馬(こばん そうま)「准教授の六道が創った虚像だったんです!」
小判 早馬(こばん そうま)「もしもし! 捜査主務課ですか!」
小判 早馬(こばん そうま)「今すぐ特別指名手配をお願いします!」
小判 早馬(こばん そうま)「伽藍人志? いいえ、違いますよ」
小判 早馬(こばん そうま)「被疑者の名前は六道睦月!」
小判 早馬(こばん そうま)「大東大の准教授です!」
考察が全然できない人なので、黒幕が分かるまでに何度も騙されてしまいました。笑
覚が黒幕をずっと怪しんでこなかったのを踏まえると、サイコパスなのか、悲しい理由があるのか。まだ明かされていない妹さんの行方が鍵を握ってそうですが…全然予想つかずですね。
九条は好きキャラなので、最初から闇落ちしていたわけではないことに少しホッとしました^^ 彼の良心が目覚めるか否かも楽しみです。
遅ればせながらも一気読みさせてもらいました。睦月の目的が知りたくなる様な展開にハラハラドキドキ。
今回、一番心が動かされたのが覚の回想シーン。睦月の言動や態度を振り返って苦しみ悩む姿に感情移入してしまいました。
ラストまで気が抜けない展開に目が離せない!次回も楽しみにしています!
やはり「能力」は魅力なのですね。醒夜は普通以下になってしまいますし、なくすのが怖いのは当然ですよね。
睦月……学生時代からそんなに深い絆が……というより、執着に近いような気もします。
過眠と不眠、どんな事情が?次回も気になります!