4月23日 机の下(脚本)
〇中規模マンション
〇女性の部屋
妹「んー、やっと終わったー」
時計を見れば、もう十二時。机に向かって勉強を始めたのが十時なので二時間も宿題をしていたことになります
妹「もう寝なきゃ」
ぐーっと伸びをしてから、机に手をかけ、椅子を引いて
机の下に、足を抱えてしゃがみ込む黒い人影がいることに、その時気付きました
妹「おおお兄ちゃーん!」
〇高層マンションの一室
( ´∀`)「机の下に人? まさか痴漢か?!」
妹「それはそれで怖いけど。そうじゃなくて、お化けだよ」
あれは、ぼやっとした輪郭で、かすかに透けている黒い影。なのに目だけはぎょろりとはっきりしていて、こちらを睨め上げてました
( ´∀`)「そうだな。こういうときは男のもののパンツを干しとくといいらしいぞ。待ってろ、今、用意するから」
妹「何、脱ごうとしてるの!」
( ´∀`)「いや、こういうのは生もののほうがいいと思って」
妹「汚い、いらない! そもそもそれは女性の一人暮らしと思われないための知恵だよ」
( ´∀`)「なら、俺の靴下はどうだ?」
妹「そりゃ下着よりはマシだけど」
( ´∀`)「実は、俺も引っ越して間もない頃に、机の下に変質者が出たことがあったんだが」
妹「まさか追い払えたの?」
妹(お兄ちゃんにそんな特殊能力が!? でも、この事故物件で平然としていることを考えると、ありえなくもないかも)
( ´∀`)「ふっ、俺の靴下の臭いを嗅がせたら、凄い嫌な顔してどこかに消えちまった」
妹「ドヤ顔で何言ってんの」
( ´∀`)「つまりだ。机の下に俺の靴下を置いておけば、撃退できるんだよ」
妹「えー」
( ´∀`)「実はこの前、数日間履き続けておきながら、洗濯に出す前に行方不明になったのを発掘してな。処分に困ってたからやるよ」
妹「いらないけど!?」
( ´∀`)「遠慮する必要はないぞ。俺もいらないから」
妹「処分に困った廃棄物を押し付けるのやめてくれない?」
こんなもの押し付けられたら、机の下のお化けと共倒れになってしまいます
( ´∀`)「なら、俺の生パンツか、熟成靴下か、好きな方を選べ」
妹「どっちも最悪の劇物じゃん」
( ´∀`)「けど、何も対策しないわけにもいかないだろ」
妹「それはそうだけど」
妹(毒を制すには毒という意味では、盛り塩より効果ありそう)
妹「なら──」
私は覚悟を決めました
〇女性の部屋
私は厳重に閉ざした箱を、机の下に置きました
箱の中には、兄の熟成靴下が入っています
これを設置して以降、机の下に人影を見ることはなくなりました。効果は抜群です
しかし、なんというか
妹「新たな特級呪物を生み出してしまった気がする」
〇中規模マンション
どうか、この封印を誰も解きませんように