4月20日 あんよタクシー #シナリオ(脚本)
〇中規模マンション
〇汚い一人部屋
ここ数日は寒暖差の激しい日が続きましたが、天気予報によれば、この先は暖かい日が続く見通しです
なので、今日は冬物を片付けることにしました
妹「クリーニングに出すのはこれで全部?」
( ´∀`)「待ってくれ。まだ一枚か二枚、埋まっているかもしれん」
そう言って、散らかった部屋の中を更にかき乱してゆきます
妹(先に部屋を片づけた方が良さそうだけど、それはそれで見つけてはいけないものを発掘しそうだしなぁ)
兄が発掘作業で、あちこちひっくり返した拍子に、一枚の小さい紙がこちらに滑ってきました
妹「名刺だ」
会社の面接でもらったのでしょうか。個人名はなく、代わりに会社のロゴが筆記体で書かれています
( ´∀`)「名刺? あー、あんよタクシーか」
妹「あんよタクシー?」
妹「確かにロゴにはTaxiとあるけど、これ・・・」
( ´∀`)「去年のハロウィンの日に、死神のコスプレした奴から貰ったんだよ」
〇コンビニの店内
その頃はまだここに入居する前だからさ、生活費に家賃に学費に、とにかく金が必要で、夜はコンビニでバイトをしてたんだ
深夜帯だから客が少なくて楽できると思ったけど、代わりに変な客の割合は多くて大変だったよ
真っ赤な顔の酔っ払いとか、真っ白な顔で栄養ドリンクをありったけ買ってく若い会社員
俯いたまま、商品棚とお見合いする女や、防犯カメラに映らず、店内をうろつく男。流石にこいつらを見た時はひやひやしたもんだ
俺はすぐに万引きを警戒して、商品陳列のふりして隣に陣取ったものだ
そんな変な客が特に多く現れるのが、ハロウィンの夜だ。仮装してハメを外したパーリィーピーポーが、大挙してやってくるんだ
夜十時から十二時くらいまでは客の対応で、そこから後は散らかされた店内の片づけで、とにかく苦労させられた
深夜二時頃、片づけも一段落した頃に、店の前にうなだれて座る真っ黒いローブの後ろ姿が見えたんだ
酔っ払って終電逃したと思ってさ、外はもう肌寒いから、中に入るように声をかけてみたんだ
そいつは死神のコスプレをしたオッサンだったんだが、よほど存在感がないらしく
死神コス「俺が視えるのか?」
って驚いてたよ
それから、オッサンに、箱が潰れて廃棄予定だった酔い覚ましを売って、少し世間話をした
( ´∀`)「存在感をアピールしたいなら、もっとアメコミ系のコスプレにしろ」
そんなことを話して小一時間ほどで、オッサンは帰っていったよ。去り際に名刺をくれた
死神コス「もし、他の人間に視えない奴に狙われたら、ここに電話しろ。そういう奴らを送り届けるのが俺達の役目だ」
死神コス「ただし、電話は相手が近くにいるときにしろ。俺達は必ず一人は連れて行かないとならないからな」
〇汚い一人部屋
( ´∀`)「そんな忠告を受けたもんだから、使われないように隠してたんだが・・・こんなところにあったのか」
妹「単に失くしてただけじゃん」
妹「はい」
私はため息一つついて、名刺を突っ返しました
これ以上、その名刺を触っていたくなかったのです
名刺に書いてあったのは『あんよタクシー』ではなく、『ANOYO TAXI』(あのよ タクシー)でしたから