無用の時(3)(脚本)
〇古い畳部屋
坊や「ママ~ン! この家古~い! 何もな~い!」
坊や「これじゃ友達呼べないよ~!」
ママン「パパ~! 私ってば、お料理もお洗濯も 全部手作業~!」
ママン「おまけにお野菜はすぐ腐っちゃうし~!」
ママン「手荒れ肌荒れで心も体もボロボロなの!」
坊や「パパなんて大嫌いだ~!」
ママン「離婚よ!離婚よ!」
パパン(そう、 私の家庭は今最大の危機に直面しています)
パパン(ああ、 意地を張らずに早く『三種の神器』を購入しておけば)
パパン「新時代の生活様式について行ってれば!」
『諦めるのはまだ早い!』
『そんなお悩みのパパに朗報です!』
〇未来の都会
ミカガミテレビジオン!
クサナギ冷蔵庫!
マガタマ洗濯機!
大和「これぞ、 ヤオヨロズグループが誇る三種の神器!」
大和「これなくして 未来のニッポン国を生き抜くことは、 もはや不可能!」
慶光院ルミ子「でもお高いんでしょ~?」
大和「フッ、慶光院君。そこはそれ。 ニッポンを支える総合製造企業ヤオヨロズ」
大和「国民の皆様の為、勉強させて頂こう」
大和「うおおおおおおおおッ!」
大和「三種ひと揃えで、 サラリーマンの平均月給一ヶ月分 ポッキリ!」
慶光院ルミ子「ボッキリ?」
大和「慶光院君!」
大和「どうだーーーーーーー!」
慶光院ルミ子「社長~~~♪安~~~い♪」
大和「さあ!この三種の神器で、 新時代のニューファミリーにチェンジ!」
〇古い畳部屋
パパン「よお~し! この夏のボーナスで、 一気に全部買い替えちゃうぞ~!」
「時代を先取るヤオヨロズパワー! これで我が家もニューチェンジ!」
〇コンピュータールーム
『あなたの暮らしを支えるヤオヨロズです!』
大和「今なら 『アラーム付きデジタルウオッチ』 をプレゼント!」
慶光院ルミ子「いや~ん。デジタル~ん」
大和「君もヤオヨロズと共に未来を進もう!」
〇林道
時代の先端を行く系ボーイ「ふう、この辺りなら大丈夫だろ」
時代の先端を行く系ガール「人が来ないうちにとっとと捨てちゃお」
時代の先端を行く系ボーイ「でも、これ・・・」
ゴミの不法投棄禁止!
時代の先端を行く系ガール「知るかっ!」
時代の先端を行く系ガール「ばごーーーーーーーん!」
時代の先端を行く系ガール「は~い。これでここもゴミ捨て場~」
時代の先端を行く系ボーイ「お、お前のそういう所・・・」
時代の先端を行く系ボーイ「大好きだーッ!」
時代の先端を行く系ガール「アタシも―ッ!」
時代の先端を行く系ガール「さて、とっとと捨てちゃお」
時代の先端を行く系ボーイ「あれもこれも ヤオヨロズ製品に買い替えたしな」
時代の先端を行く系ガール「いや~ん。アナログ~ん」
時代の先端を行く系ガール「ゴルァ!」
時代の先端を行く系ガール「どさくさに紛れて何捨ててんのよ!」
時代の先端を行く系ボーイ「フッ、お前の愛を試したのさ」
時代の先端を行く系ボーイ「僕がこんな大切なアイテムを 捨てるわけがないじゃないか」
時代の先端を行く系ガール「全くそんなアンタって・・・」
時代の先端を行く系ガール「鬼素敵ィ!」
時代の先端を行く系ボーイ「お前もなァッ!」
時代の先端を行く系ボーイ「じゃあ、 いらねえゴミも全部捨て終わったし メシでも食いに行くか」
時代の先端を行く系ガール「アタシ~ジュラクがいい~」
時代の先端を行く系ボーイ「オッケー!ジュラクよ~ん!」
D「フン。 随分と美しい自然を汚しやがったものだ」
K「森が・・・木々が泣いている・・・」
K「ああ・・・」
K「興奮しますわ」
D「そいつは結構」
D「じゃあ今回はお前に任せるとするか」
K「いえ、此度の役目は」
S「そうだ、俺だ」
S「亡空(ナキガラ)は俺の力を試している。新参者だからこそ見せねばならん」
S「この俺の『覚悟』を」
D「覚悟?恨み辛みじゃねえのか?」
S「俺を侮っているのか?」
D「・・・ああ?」
K「まあまあ。覚悟にせよ恨みにせよ」
K「濡れてしまいますわ」
D「先に戻る。ここにいると淫乱がうつる」
K「あら、それはそれで幸せですことよ」
K「ではアナタもしっかりおやりなさいな」
S「ふるべゆらゆらとふるべ・・・」
S「ふるべゆらゆらとふるべ・・・」
S「人の都合で生まれ、 人の都合で酷使され、 人の都合で捨てられ、 人の都合で土くれに還らんとするモノども」
S「我が怒りと共鳴せよ。 我が憤りと共鳴せよ」
S「ふるべゆらゆらとふるべ! ふるべゆらゆらとふるべ!」
〇モヤモヤ
S「怒力(どりき)招来! 急急如律令!」
〇林道
S「お前の主は お前と共に時を刻むことを拒んだ」
S「お前の時だけを止めて先に進んだ」
S「ならば奴らの時も止めてしまえ!」
S「奴らの未来も止めてしまえ!」
S「ふるべゆらゆらとふるべ!」
禍異物・刻「刻ヲ止メル・・・刻ヲ止メル・・・」
禍異物・刻「人間ドモノ刻ヲ止メル!」
つづく。