チヲビザクラ

りをか

チヲビザクラの真実(脚本)

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〇応接室
裕介「敬太が・・・死んだ?・・・」
田辺「そうよ・・・ 今、警察が現場検証してるみたい・・・」
優奈「死因は? 死因は何だったんですか?」
田辺「脳内出血ですって・・・」
裕介「脳内・・・出血?」
田辺「橘くん、ずっと頭痛に悩まされてたわよね? それと関係があったのかしら・・・」
「嘘よ・・・ 敬太が死んだなんて・・・」
  理花はそう言って、その場に倒れた。
「理花!? 大丈夫?しっかりして!」
田辺「緒方くん、佐藤さんを医務室まで運んでちょうだい!」

〇保健室
優奈「先生、理花の様子はどうですか?」
医務室の先生「軽い貧血だから大丈夫。 しばらく休めば元気になるわ」
優奈「そうですか・・・」

〇講義室
  大学では敬太のことが早速噂になり、騒然としていた。
優奈「理花、敬太のこと心配して倒れちゃったのかな・・・」
裕介「あぁ。 敬太の死を受け入れられないのは、理花だろうな。 理花はアイツの彼女だったんだし・・・」
優奈「ねぇ、やっぱり「チヲビザクラ」だよね? 敬太が死んだのって、・・・」
裕介「信じがたいけど、橋本さんが言ってたのは本当なのかもな・・・」
優奈「もしそれが本当なら私達も死ぬんじゃ・・・」
裕介「やっぱり、橋本さんに改めて「チヲビザクラ」のことを聞きに行くしかない」

〇保健室
  昼休み、二人は医務室に来ていた。
優奈「理花、具合どう?」
「さっきね・・・ 敬太がここに来てくれたの・・・ 私に会いに来たって・・・ 敬太、私がいないと寂しいんだって・・・」
「だから・・・ 私、敬太のところに行かなくちゃ・・・」
医務室の先生「佐藤さん、ご両親迎えに来たから行きましょう」
「はい・・・」
優奈「理花、大丈夫かな・・・ 私、何だか不安だよ・・・ 理花まであんなことになったら・・・」

〇桜並木
  夕方、優奈と裕介はチヲビザクラの並木を久しぶりに訪れる。
  そこには立ち入り禁止のテープが貼られていた。
裕介「敬太、一体何の為にここを訪れたんだろう」
  するとそこに、橋本が現れた。
橋本「何だ、君たちか・・・」
裕介「はっ、橋本さん。 どうしてここに?」
橋本「ニュースを観て驚いてしまってね・・・ 亡くなった方が、こないだ来てた男性だったから・・・」
橋本「それで? あれから変わったことはあったかね?」
裕介「いえ、彼が亡くなってからは何も・・・」
橋本「そうか・・・ じゃあ、亡くなった彼だけが被害に遭ったというわけか・・・」
橋本「彼は「チヲビザクラ」に何をした?」
裕介「敬太は、この桜に空き缶を投げつけたり、薄気味悪いだの暴言を吐きました」
橋本「なるほど・・・ それで「チヲビザクラ」は怒ってしまったんだな・・・」
裕介「橋本さん、やっぱりこの桜について教えて下さい! でないと理花が・・・ 敬太の彼女まで死んでしまうかもしれないんです」
  裕介は必死になって頭を下げた。
橋本「そうか・・・ 友達の死が更に関わってるのなら仕方がない・・・ 今から私の家に来なさい」

〇古めかしい和室
橋本「「チヲビザクラ」は平安時代、ちょうど「ソメイヨシノ」と同じくらいに誕生した桜だった」

〇大きな日本家屋
  平安時代「香子」と言う貴族の娘がいた。
  貴族の暮らしはとても退屈で、香子は親や使いの目を盗んでは、よく町へ遊びに出掛けていた。

〇城下町
  そこで「香子」は「宗政」という若い男と出逢い、恋に落ちた。
  宗政は庶民で、和歌を詠う男だった。
  香子は、宗政が詠う和歌が大好きでよく二人で和歌を作っては詠んでいた。
  香子にとって、この時間だけが幸せな時間だった。

〇桜並木
  宗政は香子をお気に入りの場所に連れて行った。そこには、一本の垂れ桜が立っており、二人は春になったら桜を見る約束を交わした
  だが、その約束は果たされることはなく、香子は珍しい血液の病気にかかり、屋敷で息を引き取った。
  風の便りで知った宗政は、屋敷から香子の亡骸を盗み、月夜に照らされた桜を香子に見せた。
  そして宗政も香子の後を追うように、自ら切腹し命を絶った。そこには宗政が詠った和歌が置いてあった。

〇古めかしい和室
橋本「翌朝、宗政の父が二人の亡骸を見つけ、あの世で二人が一緒になれるように、亡骸を桜の木の下に埋めたらしい」
橋本「私が知ってるのはここまでだ。 誰が「チヲビザクラ」と名付けたのかも分からない。桜並木を通る時、神社があっただろう?」
裕介「はい」
橋本「あの神社は「朱血神社」と言ってな、そこの神主の先祖が「チヲビザクラ」を植えたと言う説もある」
裕介「その神主の方は? 何処に住んでるかご存じありませんか?」
橋本「いや、神主は死んだよ。 謎の死を遂げてな・・・」
橋本「あの神社が廃れる前は、あの周辺もたくさんの人が訪れ賑わってたんだ。 もちろん、桜並木にもな・・・」
橋本「だが神主が亡くなった途端、誰一人訪れることはなくなった。 だから、あの桜並木を立ち入り禁止にしたんだ」
裕介「そうだったんですか・・・」

〇平屋の一戸建て
裕介「今日は、無理を言って「チヲビザクラ」のことを教えて頂きありがとうございました」
橋本「いえ、大丈夫です。 それより、亡くなった方の彼女が心配ですね。 何も起きなければいいのですが・・・」

〇川に架かる橋
優奈「「チヲビザクラ」にあんな歴史があったなんて・・・」
裕介「あぁ。 何か聞いてて胸が苦しくなったな・・・」
優奈「「チヲビザクラ」が真っ赤に染まったのは、二人の血が関わってるってことなのかしら」
裕介「だから、敬太も脳内出血で・・・」
優奈「ねぇ、宗政は香子の後を追って自ら命を絶ったって言ってたよね? てことは、やっぱり理花も同じ運命を辿るってことじゃ・・・」
裕介「もしそうだとしたら、何が何でも止めないといけない・・・ けど、一体どうすればいいんだ」

〇講義室
  敬太の葬儀が終わり、大学は落ち着きを見せ、いつもと変わらない日々が続いた。
  だが、理花は敬太の葬儀にも大学にも顔を見せなかった。
優奈「理花、大丈夫かな? ちゃんとご飯食べれてるかな。 裕介、帰る途中でいいから理花ん家寄ってもいい?」
裕介「うん、別にいいよ。 俺も心配だからさ」

〇一戸建て
「はい、どちら様ですか?」
優奈「あの、私理花さんと同じ大学に通う友達の安堂優奈と言います。 理花さん、いらっしゃいますか?」
「あぁ、あなたが優奈さん。 娘がお世話になってます。 理花・・・今ここにはいないの」
優奈「いないってどういうことですか?」
「とにかく、中へ上がってちょうだい。 すぐ開けますから・・・」

〇明るいリビング
理花の母親「さぁ、お茶をどうぞ」
  理花の母親は、二人にお茶を出す。
優奈「ありがとうございます」
優奈「それで、理花は今何処にいるんですか?」
理花の母親「理花は、精神科に入院してるの」
裕介「精神科!? 一体何故?・・・」
理花の母親「敬太くんが亡くなった後、あの子鬱になってしまって・・・ おまけに、ブツブツ何かを唱え始めるようになったの・・・」
裕介「唱える? それはどんな内容ですか?」
理花の母親「何て言っていいのかしら・・・ まるで、俳句の様な感じだったわ・・・」
裕介「はっ、俳句・・・」

次のエピソード:死への誘い

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