4月13日 チラシ(脚本)
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
家に帰ると、玄関の郵便受けから、紙が出ているのが見えました
妹「珍しい」
他所からの郵便物は一階の郵便受けに入れられます。なので、こちらは回覧板などの、住人同士のやり取りで使うばかりです
他所様との交流のない身には、ほとんど使われる機会のないものでした
私は郵便受けから紙を取り出し確認すると、まずはとても陽気な色合いが目に入りました
木の葉や木の枝で作った人形や、お面、おもちゃの写真が載せてあり、タイトルも木の枝を組み合わせて表現しています
妹「子供向けの自然学習塾の案内かな?」
一見すると、そんな感じですが、一つ気になることがあります
『空デ、アソボウ』
妹「私?」
空は、私の名前でした
〇高層マンションの一室
( ´∀`)「お前じゃなくて、青空のことだろ」
兄からは、予想通りの素っ気ない答えが返ってきました
妹「公園や外ならともかく、空は不自然じゃないかな」
( ´∀`)「『空ノ下デ』と書くつもりだったんじゃないか?」
妹「そうかもだけど、でも気味悪いなぁ」
( ´∀`)「たかが子供向けのチラシだろ」
妹「子供だからだよ。あの無邪気に何をしでかすかわからない感じが、ホラーの残酷描写と相性がいいんだもの」
( ´∀`)「だからって、お前に何かあるなんて考えすぎだろ」
妹「あのね、写真の人形をよく見て」
チラシの人形は、髪の色、長さ、服装に至るまで、私に似せて作ってありました
( ´∀`)「よく似てるな」
妹「でしょ。ここまで似てるとやっぱり」
( ´∀`)「ああ」
兄もまた、このチラシに何らかの意図を感じて──
( ´∀`)「パンツをどうしてるか気になるな。やはり、同じものを用意してるのか?」
くれませんでした
妹「兄が変態だった」
( ´∀`)「誰が変態だ」
妹「ここは意図的に私を狙っていると考えるほうが自然だと思わない?」
( ´∀`)「じゃあ玄関にピーマンでも吊るしておけよ」
妹「ひいらぎいわしじゃあるまいし」
( ´∀`)「そうだな。あとはこの写真に落書きして、名前もちょっと変えて」
兄はマジックを手に取り、チラシに何かを描きこんでゆきます
( ´∀`)「髭とちょんまげを書き足して、名前も控にしておいたぞ」
妹「自分がやられたわけじゃないのに、なんか嫌な気分」
( ´∀`)「ついでに隣のポストに突っ込んでおくか。どうせ空き部屋だし」
これが何の解決になるかはわかりませんが、それでも気分は安らぎました
〇中規模マンション
数日後──
〇高層マンションの一室
チラシのことも忘れた頃、それは起こりました
妹「また隣から?!」
大きな物音をたてると、誰も居ないはず隣部屋から、うるさいと怒鳴り声が聞こえます
しかし、今日は別に大きな音を立ててもいないのに、壁ドンしてきました。何かしたのかと思っていたら──
「た、助け──!」
「ぎゃあぁぁ!!」
「キャハハハハハハハッ!!」
いつもと違い、隣人の助けを求める声がして、それを聞きなれない子供の笑い声がかき消します
〇中規模マンション
その日を境に、どんなに大きな音をだしても、隣から怒鳴り声がくることはなくなりました
あの日、隣では何があったのでしょうか。それは兄がチラシを移動させたのが原因なのでしょうか