4月9日 階段(脚本)
〇中規模マンション
〇マンションの非常階段
妹「慣れない階段って、なんでこんな疲れるかな」
この日は、マンションの共用階段が、おばちゃん達の井戸端会議で占拠されていたため、非常階段を使い帰っていました
自室までもう一階というところで、階段の踊り場に人影が見えました。逆光で顔はわかりませんが、下を眺めているようです
その人は私に気付いてないのか、ゆっくりと手すりに足をかけ──
妹「え?」
ためらいなく飛び降りました
〇空
止める間もなく、その姿は宙に投げ出されました
〇マンションの非常階段
慌てて下を見ましたが、誰かが落ちた形跡はありません。いや、そもそも落ちた時の音もありませんでした
妹「また幽霊か」
妹(まあ今回は幽霊だったほうが気楽かな)
念のため、もう一度地面を確認しますが、人が落ちた形跡はありません
私はほっと胸を撫でおろし、顔をあげたら、上から落ちてくる人と目が合いました
血にまみれ、苦悶と笑顔をごちゃまぜにした顔で、私を見ていました
〇高層マンションの一室
( ´∀`)「非常階段の飛び降り? 今日はそんな事件はなかったぞ」
妹「人じゃなくて、幽霊の飛び降り! 落ちたと思ったら、もっと上から落ちてきて!」
( ´∀`)「落ち着け。その説明はよくわからん」
妹「だからー、幽霊が飛び降りしてたの!」
( ´∀`)「きっと紐なしバンジーが楽しいんだろ。生きてる時は一度しか出来ないもんな」
妹「そんなロックな娯楽じゃないよ」
( ´∀`)「じゃあ、パルクールの練習だ。失敗しても、何度でも挑戦できるから、死後の趣味に丁度いいんだろ」
妹「老後の趣味みたいに言わないでよ」
( ´∀`)「まあバンジー楽しんでるだけみたいだし、嫌ならお前が非常階段を使わなけりゃ問題ないだろ」
妹「それ、非常階段を使わざるを得ないときに、何か起こるフラグだから」
( ´∀`)「だが、共用部にマキビシや有刺鉄線はいかんだろ」
妹「家の中でもそれはやめて」
( ´∀`)「失敗してもリスクがないことなんて、退屈ですぐ飽きるさ。ほっとけよ」
妹「多分やめないよ。飛び降りはね、あまりに一瞬で、本人は死んだことに気づかないんだって」
妹「だから、何度も飛び降りを繰り返すの。死んだことに気づくまで、ずっとずっと」
( ´∀`)「じゃあ、つぎ会ったら『お前はもう死んでいる』って教えてやれよ」
妹「やだよ、怖いよ。何されるかわからないもの」
( ´∀`)「じゃあ、看板でも立てておくか。『飛び降りるな。お前はもう死んでいる』でどうだ?」
妹「どうだと言われても。知らない人が見たら、絶対怖がるとしか」
( ´∀`)「板はあるから、筆と絵の具貸してくれ。色は・・・赤がいいな。目立つし」
兄は、古ぼけた板材に『お前はもう死んでいる』と書くと、板材を持って件の場所に向かいました
妹(絶対、勘違いされるな、これ)
〇中規模マンション
看板を設置から、数日後、この近辺に変な噂が広まりました
〇通学路
妹「呪いの看板?」
梓「赤く滲んだ文字で『お前はもう死んでいる』って書いた板があるんだって」
妹「あー・・・」
梓「見たら、すぐに逃げないとどこまでも追いかけてくるとか、捕まると破裂するとか、凄い勢いで広まってるんだ」
その怪奇現象、うちの兄が犯人です
なんて言うわけにもいかず、私は怯える人々に、ただ心の中で謝罪をするのでした
短編として、恐怖から笑いに移行するのが
よくできてて面白い話だと思います!!