〇中規模マンション

〇高級マンションの一室
配信者「ども、怖い物件凸系配信者タクヤです」
アシスタント「有能アシスタントです」
霊能力者？「ニセ霊能者です」
配信者「『怖い物件凸専門ｃｈ　ぶっ怖！』はじまります」
配信者「本日はたくさんの視聴者さんから寄せられた最怖マンションに凸ってみました」
配信者「関東随一の事故物件。一体、何がでるんでしょうね」
アシスタント「ねぇ、なんか音しない？」
配信者「ん？　もう霊障おきた？」
アシスタント「気のせいかな？」
配信者「これは心霊現象、期待大？」
配信者「盛り上がってきたところで、いつも通り静かに行ってみよう」
アシスタント「今回も無断侵入かよ」

〇高層マンションの一室
　　台所へ向かう途中、居間を覗いてみると、兄がビデオを見ていました
　　映像にノイズが入り、配信にしては編集や加工の様子がありません。配信を模したＰＯＶホラーでしょうか
妹（私は毎日ホラーを実体験 兄は幽霊スルーで安全圏 納得できない私は怒髪天）

〇高級マンションの一室
アシスタント「ねぇ、やっぱりなんか音しない？」
霊能力者？「君にも聞こえたか、怨霊の囁きが」
配信者「マジすか？」
霊能力者？「これは数多の亡者の嘆きが滝の如く響き渡って」
アシスタント「こっち！」
配信者「あ、おい、ちょっと待てよ」

〇おしゃれなキッチン
アシスタント「聞こえるだろ？」
配信者「本当だ、何か聞こえる。なんかの機械音？」
アシスタント「そこの奥、仄かに光が漏れてるとこからしてる。霊能者、見て来てよ」
霊能力者？「私？　いや、私は視る専で」
アシスタント「いいから」
「うわっ」
　　アシに押され、霊能者は否応なく奥へと突っ込んでしまう
　　音と仄かな明かりを間近にして、霊能者はブルブルと震えるも、意を決して顔を上げると
「こ、これは」
霊能力者？「冷蔵庫が開けっ放しで警告音が出てるだけじゃないか」
配信者「は？」
アシスタント「ぷっ」
アシスタント「ハハハ！」
アシスタント「実はここに来たとき、仕込んだドッキリでしたー。ガチでビビりすぎ」
霊能力者？「ちょっと悪趣味が過ぎますぞ」
配信者「いや、ちょっと待て。何言ってんの？」
アシスタント「だからー、ドッキリ大成功だって！」
配信者「いや、そうじゃなくて」
配信者「ここ電気通ってないぞ？」
アシスタント「は？　でも、冷蔵庫が鳴って──」
霊能力者？「ぐわっ」
配信者「先生?!」
　　霊能力者は突然、片腕を冷蔵庫の中へ突っ込み、変な声を出した
アシスタント「驚かすなよ、ドッキリの意趣返しのつもり？」
配信者「違う、あれ・・・」

〇血しぶき
「うわあぁぁぁ！」
　　霊能者はもがき、抵抗しながらも、冷蔵庫に飲み込まれていった
　　骨が砕け、肉が千切れる音がして、その度に鮮血と絶叫が響き渡る
「た、助けないと！」
「ど、どうやって?!」
「とにかく、引っ張りだすんだ」
　　カメラはそこで地面へ放り出され、そこからは床に広がる血だまりばかりが映し出された
「な、なんだ、あれ──」
「ぐわぁっ！」
「た、助け──」
　　叫び声と共に血だまりは増え、バタバタと幾人もが走り回る音がして、また絶叫──
　　しばらくそれが繰り返された果て、最後に冷蔵庫の閉まる、バタン！　という音が響くと、完全な静寂が訪れた
　　機器の故障か、放送事故ともとれる長い静寂が訪れ
　　ぴちゃ、ぴちゃ・・・ぴちゃん！
　　血だまりを歩き、近づいてくる音
　　画面が揺れる。誰かがカメラを持ち上げたのだ
　　赤く染まった部屋がグルグルと映し出され、一瞬間、カメラを持つ何者かの姿が──
「へっくし！」

〇高層マンションの一室
( ´∀｀)「あー、鼻のむずむずが止まらねぇ。花粉症か？」
妹「ちょっと驚かさないでよ」
( ´∀｀)「悪い、悪い。さっきのところまで巻き戻すか？」
妹「いや、いらないけど」
　　別に見たいわけでもありません
妹「そもそも何で見てたの？　あんなの興味ないでしょ」
( ´∀｀)「ああ、これな。冷蔵庫の下に落ちててさ、確認しただけだよ。多分、前の住人の作った映画じゃね？」
妹「え？」
( ´∀｀)「だって窓の外の景色とか、台所の配置とか同じだったろ」
　　私は細かく見てなかったので、発言の真偽はわかりません。かといって、もう一度見る気も起きるはずなく
　　ですが、もし兄の言う通りなら──
妹（夜中に冷蔵庫開けられなくなった）