4月4日 入学式 #シナリオ(脚本)
〇ハイテクな学校
新しい制服に袖を通して、まだ慣れない通学路を進んで、これからお世話になる校舎へとやってきました
春とはいえ、朝の空気はまだ少し冷たくて、始まりの日に相応しい清々しさがありました
校門には既にたくさんの学生が集まって、わいわいと活気に満ちた声に溢れていました
幽霊以外で、こんなにも賑やかな声を聞けるなんて・・・。生きてるって素晴らしい
〇おしゃれな教室
私は美術科進学の為、普通科に進んだ友達とは残念無念、離ればなれです
しかし、それは他のみんなも同じ。似た者同士、仲良しこよしで上手くやっていけそうです
ただ一つ──
???「・・・」
初日から制服を着崩してるオシャレ上級者さんに睨まれているような気がしますが
〇学校の廊下
妹「あー、生きてるって素晴らしい」
妹「おうちはお化けのマンション 毎日決死のテンション 今だけ、命の洗濯、束の間のセッション」
梓「あの・・・」
妹「ひゃい?!」
妹「いや、いや、いや! その今のは、別にラップとかじゃなくて、ただの真似事というか」
梓「いや、そっちじゃなくて」
妹「あ、上級者さん・・・」
廊下で生きている喜びを満喫していた私に、声をかけてきたのは先ほどの上級者さんでした
彼女は、私の漏らした上級者というあだ名すら気づかない、とても困惑した様子で、何か言いたそうにしていました
梓「あなた・・・」
妹「えっと?」
梓「ゴメン、なんでもない」
そういうと、彼女は一人で教室へ戻ってしまいました
妹(なんだったんだろ?)
〇ハイテクな学校
入学式は午前中で終わりです・・・が、事故物件に帰るのを渋り、私は一人で学校探検を楽しんでいました
気づけば日は落ち、私は見回りの先生に追い返されてしまうのでした
妹「それもこれもあの事故物件が怖すぎるのがいけないんだ。私は悪くない」
妹「まあ、こんなこと言っても誰も信じないけどね」
「信じるよ」
妹「え?」
私の独り言に、誰かが反応しました。とても寂し気な、でも心地よい共感の声
この展開はまさか、あれですか? 怖い話によくある、何故か都合よく霊能力のある人物が登場するアレですか?
妹(そういえば、上級者さんのあの思わせぶりな感じ。あれはまさか)
妹(そうか、そういうことね。彼女は霊能力があって、私の危機を感じ取っていたと)
「困ってるんでしょ。話聞こうか?」
妹「それはあり──」
梓「ごめん、待った?!」
妹「へ?」
梓「いけない、電車の時間ギリだよ! 急いでいかないと!」
妹「へ? は?」
声とは逆方向から、上級者さんが体当たり気味に私を捕まえて、訳の分からないことを言って校舎の外へ引きづります
妹「あれ? さっきの霊能力者は?」
梓「黙って、私に合わせて。後ろを見ないで」
妹「あ、これって・・・ そっち系ですか?」
梓「・・・」
「ねぇ、困ってるんでしょ」
???「話、聞くよ?」
???「ずぅーっと、聞いてあげるよ」
〇中規模マンション
妹「その、ありがと。助けてくれた上、ここまで送ってくれて」
梓「別に・・・」
妹「も、もしかして、上級者さんは、幽霊が──」
梓「ねぇ」
妹「は、はい?」
彼女は一度、声にならない声を吐いてから、意を決して言葉を紡ぎ直します
梓「あなたはこっちの人でいいんだよね?」
妹「こっち?」
梓「・・・ごめん、忘れて」
彼女はそう言うと、隣のマンションへ走り去っていきました
妹(あの人・・・)
妹(絶対、何か知ってる! そういうポジションの人物と見た!)
彼女を決して逃すまい。事故物件の生活で幾分、図太くなった私は、そう心に決めるのでした