ダイオー人

栗スナ

大横長者 その一(脚本)

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〇畳敷きの大広間
住職「悪いことは露見します そういうわけでありますから、社会で善行を積みましょうというお話でした」
信者「ははは 和尚さんの話は面白いな・・・」
信者「なるほどね・・・」
岩手ひかり「あ、講話中かー」
岩手ひかり「お邪魔しまーす。ひかりでーす! 叔父さん 一泊泊まりたい友達連れてきたんだけど」
住職「おや、ひかりか ああ、どうぞ。かまわんよ」
住職「ご飯はもう出ないけどな」
熊元治(くまもと おさむ)「大丈夫です さっきみんなでファミレスで食事してきたんで」
高の木千穂(たかのぎ ちほ)「お邪魔しまーす」
東北空耳(ひがしきた くうじ)「同じくー」
住職「そうかね・・・ そうだ、もうすぐで終わるんだが、君達もそこの座布団をとって講話を聴いていきなさい」
東北空耳(ひがしきた くうじ)「え。講話?」

〇畳敷きの大広間
住職「では、皆さん席に着いたところで 本日最後の講話をしますかな! これは、この地域の伝承の話でね・・・」
住職「今から五百年ほど昔、この辺りは平野が広がり、平和な村々がありました ある日、そこへ下界から来たという男が住み着きました」
住職「男は村人から大横(だいおう)さんと呼ばれて慕われておりました 大横さんはこの辺りではお金儲けが得意で体も強かったそうで」
住職「力仕事では率先して働いてはお金を稼ぎ、 困っている人にはお金を貸し、しっかり者という評判でした」
熊元治(くまもと おさむ)(聞いたことないんだが・・・そんな民話があるのかな)
東北空耳(ひがしきた くうじ)(ほほー 面白そー)
住職「そのうち大横さんは今まで無料であった物を工夫して商売にし出しました 山の木を伐るとお金を取り、川の水を使うとお金を取り」
住職「村の治安を守ってやると言ってお金を取りました こうして大横さんはここらでは上から二番目の物持ち、金持ちになりました」
住職「ある日、戦争が起き、村の男たちがかり出されました 大横さんは言い訳を考え、領主にわいろも渡し、戦争に参加しませんでした」
住職「留守の家々の若い女性の家を訪問し、念通力で惚れさせました また以前からいろいろ注意してくる村一番の長者を殺しました」
高の木千穂(たかのぎ ちほ)「念通力・・・」
岩手ひかり(イケメンだったのかな・・・)
住職「また盗賊が討ちいったと嘘をつき、家の手下を使って、各家家から物を盗みました その後、戦争から男たちが帰ってきました」
住職「問い詰める者を大横さんは言いくるめ、それでも言ってくる者は暗殺しました 殺害して持ち主がいなくなった田畑は買い取り」
住職「自分が所有しました さて、そんな暮らしが二十年以上続いた後、大横長者と呼ばれ、近隣に名がとどろくようになっていました」
住職「村人たちの中には大横長者を迷惑がり、村から出て行ってくれと言う者もおりました ですが大横長者は全く取り合いませんでした」
住職「二十年たちましたが大横長者は年を取りません。若いままだったそうです ある日、おかしいと思った村の者たちが相談していると」
住職「そこを旅の僧が通りかかりました 僧は村人の話を聞くと、わしが調べてくると言い、大横長者の屋敷へ出かけましたとさ」

〇屋敷の門
僧「ここが大横長者の屋敷か 立派な門構えだ」
僧「ごめん下さい」
女「おや、何か御用ですか」
僧(変わった着物にしぐさだなぁ 大横長者は異国趣味でもあるのかな)
僧「わしは北国の僧です。村人から頼まれ、お話があり参ったのですが」
女「それはそれは大変だったでしょう」
女「旅の方ですか・・・どうぞこちらへ」
僧「はい」
僧(会ってくれないかと思ったが、すんなり入れてくれたな・・・)
僧(妖気は特に感じられないが・・・)

〇屋敷の大広間
男「こちらでお待ちください」
僧「ずいぶん大きい広間だ・・・さすが村一番の物持ちということはあるのう」
僧「それに今のはもしや異国の方だろうか・・・ 昔に西の港で見たことがあったがなぜこのような場所に・・・」
僧「さらにこの絵・・・この辺で絵師を呼ぶのにさぞかし銭がかかったな」
大横長者「どうも 旅の和尚さんですか」
大横長者「どんな御用ですか」
僧(これが大横長者・・・美しい若者だ・・・)
僧「ええ・・・初めまして。わしは北国にて坊主をしており・・・」
大横長者「そのような挨拶はいりません」
僧「そうですか・・・まあそうですね」
僧「ずいぶん立派なお屋敷ですな。調度品もどれもお美しく・・・さぞかし価値があるものでしょう」
大横長者「そうでしょう。そうでしょうとも ふふふ あなたに分かりますか、そうですか」
僧「ええ 各地のお寺をめぐると調度品が置いてあるものでそれで多少目が肥えてしまいまして」
大横長者「ほう。そうですか やはりあちこち回っている方でしたか それなら物の価値が分かるでしょう」
大横長者「わたしはいろいろと珍しいものを集めるのが好きで、ずいぶん大枚をはたいて買ったものです」
大横長者「わたしの今一番の品はこれで」
大横長者「唐土より渡来した夜光の物で」
僧「ほう。これはすごい 透けているではありませんか」
大横長者「そうです いい物でしょう さすが ひのもとをあちこち歩いているだけのことはある」
僧「ところで・・・」
大横長者「これもいい品ぞ」
僧「これは何ですか」
大横長者「これは西の異国の石で・・・ぺちゃくちゃ」
大横長者「・・・というわけで本当に物の価値がわからないこの辺の者には困ったものだ」
大横長者「やはり異国の物をもっと取り入れなくてはいけません」
大横長者「ひのもとはこれだから困るのだ」
僧「・・・」
僧(まいったな・・・問いただしたいことがあるのに)
僧「あの・・・ところで、本日は村人の考えを伝える役目で来ておりまして・・・」
大横長者「ええ」
僧「村人たちはあなたが川の水も山の木も銭を払わないと使わせてもらえないことに困っています」
僧「もともとここの山も川も土地の神様の物でしょう。あなたは何ゆえそれで商売をしているのですか」
大横長者「・・・ふんっ」
大横長者「生意気な坊主め」
大横長者「金目の物を見せてやったらつけあがりおって」
僧「すみません」
僧「害したのなら謝ります。ですが、今は村人の・・・」
大横長者「それについて話すことはない」
僧(まいったな・・・)
僧(仕方ない、何か持ち物を見せて話を伸ばすか・・・)
僧「あの・・・実は私も見てもらいたい物がありまして・・・市で買った珍しい品です」
大横長者「ほう・・・」
僧「高価な筒なのですが」
大横長者「どれどれ」
僧「おや。上の方で何か・・・」
大横長者「・・・また天井に何かいるみたいだ」
大横長者「しばらくお待ち下さい。すぐに戻ります」
僧「・・・」
僧(・・・しかし困ったものだな。このあとまたどうやって話を切り出そう)
僧(また天井から音が・・・)
僧「やんだ・・・」
僧「・・・」
  こうして半刻ほど時が過ぎた
僧「ずいぶん遅いな・・・」
僧(用を足したくなった・・・)
僧「あのー すみません!」
僧「あのー! 誰かいますか」
僧「ちょっと厠(かわや)を探してくるか」

次のエピソード:大横長者 その二

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