3月28日 人形 #シナリオ(脚本)
〇中規模マンション
〇女性の部屋
私の部屋には、備え付けの人形があります
ベッドの下にいた人形。兄がいうには、他の場所に飾っても、勝手にここに戻ってきてしまうそうです
私も試しに机の上や部屋の外に飾ってみましたが、翌日の朝にはベッドの下に戻ってしまいました
けれど、仲良くするため、人形にジュースとお菓子をお供え(?)し始めると、それはピタリとやんだのです
今では、ベッドの下においても、翌朝には私の隣で寝るようになりました
妹「最初のうちは状況が悪化したかと思ったけど」
妹「隣で寝てる以外は、特に何もしないんだよね」
妹「むしろ」
〇マンションの共用廊下
「ダメ」
声とともに、誰かにスカートを引っ張られて、足を止まります
〇女性の部屋
妹「あのとき、スカートの裾を掴んで、私を止めたのは、きっとこの子」
私のスカートの裾は足元に近いです。兄や弟では、スライディングでもしないと無理です
地面から白い手が伸びて、私のスカートの裾を掴んだとかそういうのでなければ
この人形が私のスカートを掴むと、丁度、裾のあたりになります
妹「助けてくれた・・・んだよね?」
思い起せば、壁紙の下の万苦死や、部屋の中に入ってこなかった足音。これらもこの子が助けてくれたのではないでしょうか
妹「もしそうなら」
この事故物件で、はじめて味方に会えた気がしました
これはもう、家の中にいる間は、この子を持ち歩けば安心安全なのではないでしょうか?
妹「見た目は人形、でも霊力最強 危険な悪霊、残らず逃走」
妹「なんて、さすがにそこまで強くないか」
不意に窓側からノックの音がしました
妹(ここ最上階なんだけど・・・)
再び窓をノックする音
妹(何? ヴェノム? それとも別の?)
窓側から目を逸らします。このまま、部屋を出てしまおうかと思いましたが
妹(窓の鍵、締めたっけ?)
上手く部屋から出ても、戻ったときに窓が開いてたら・・・。部屋に入って隠れられることを考えると、下手に逃げ出せません
妹「でも、しかーし。今の私には心強い味方がいるんだよ」
妹「人形ちゃん、お願い!」
そう言って、人形を置いたテーブルを見ますが、どこにも見当たりません
目に映る範囲に人形は見当たりません。まさか、既にヴェノムに挑んでいる?
わけではなさそうです。普通にノックが続いています
妹「まさか・・・」
私は念のため、もしかしたら、まさかあるわけないという思いで、ベッドの下を覗くと
妹「一人で逃げてる!」
妹(まあ、そうだよね。私を助けた時もスカートの裾を引っ張っただけだし)
どうやら、人形に守られるうちに、彼女に依存して、気付かぬうちに破滅に向かう展開はなさそうです
妹「つまり、この状況を打破するためにはいつもの通り」
妹「お兄ちゃーん!」
〇中規模マンション
窓の鍵は閉まっていましたとさ