チヲビザクラ

りをか

忍び寄る怨念(脚本)

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〇学食
裕介「なぁ、これどう思う?」
  昼休み、三人は食堂で写真のことを話していた。
優奈「現像で、こういう事はあり得たりしないの?」
裕介「いや、こんな風になったことは今まで一度もなかったよ」
理花「単なる偶然じゃない?」
優奈「そうかな。あの時、ピントが合わなかったのも何か気になる・・・」
裕介「なぁ、そういえば敬太は?」
理花「それが、朝メールしたんだけど返信ないんだよね。どうしたんだろ、敬太のやつ」
  その時
敬太「ちぃーっす」
  敬太が三人の前に現れた。
理花「敬太!どうしたの?朝から心配してたんだよ?」
敬太「わりぃ、何か朝から頭痛くてよ。 ずっと寝てた」
裕介「今は? 頭痛、治ったのか?」
敬太「いや、今も微妙に痛いけど大丈夫」
敬太「それより裕介、この前の花見の写真どうなった?」
  三人は顔を見合わせた。
敬太「ん?どうしたんだよ。 お前ら・・・」
裕介「じっ、実はさ 現像に失敗しちゃって駄目になったんだ」
敬太「えーっ、マジかよ。 せっかく楽しみにしてたのにぃ」
裕介「ほっんとにごめん。 だからさ、次は別の場所で撮り直そうぜ。 なっ?」
敬太「そうだな。 確かにこの前の所は、すんげぇ気味悪かったし、今度はもっといい場所で撮るか」
優奈「うっ、うん。 そうだね」

〇講義室
  昼休みが終わり、午後の講義が始まる。
  敬太は講義に出席はしたが、頭痛がひどくなり途中で早退した。
  放課後
裕介「敬太のやつ、心配だな」
裕介「まっ、まさかあの写真が原因ってことはないよな?」
理花「バカッ!変なこと言わないでよ!」
優奈「そっ、そうよ!不謹慎にも程があるよ。 きっと、風邪でも引いたのよ」
理花「そうだよ。 きっと風邪に決まってる」
裕介「けどさぁ・・・」
  するとそこに、講師の田辺が現れた。
田辺「あら?あなた達まだいたの? 珍しいわね」
優奈「すっ、すみません。 すぐに帰ります」
  三人は急いで、帰り支度を済ませた。
裕介「あの、田辺先生。 この大学か田辺先生の知り合いに、花に詳しい人っていませんか?」
田辺「えっ、花に詳しい人?」
裕介「はい、出来れば桜に詳しい人とか・・・」
田辺「ん~、どうかな? 一応探してはみるけど」
田辺「けど、どうして桜なの?」
裕介「いえ、何でもないんです。 ただ、ちょっとある桜について調べたくて」
田辺「それなら、図書館や資料館に行けば分かるんじゃないかしら・・・」
裕介「図書館、資料館かぁ。 分かりました。 調べてみます」

〇中央図書館
  その後三人は、「チヲビザクラ」のことについて資料館や図書館を訪れたが、「チヲビザクラ」のことは何一つ載っていなかった。
優奈「「チヲビザクラ」どこにも載っていなかったね・・・」
理花「うん。あまり有名な桜じゃないのかな・・・」
裕介「そうかもな・・・」
優奈「まぁ、田辺先生も桜に詳しい人探してみるって言ってたから、もう少し待とうよ」
理花「うん。 そうだね・・・」
  こうして三人は別れた。

〇講義室
  それから一週間後。
  久しぶりに敬太が大学へ現れた。
理花「敬太、体大丈夫?」
  理花が心配そうに尋ねた。
敬太「俺、あの後病院行って精密検査受けたんだ。そしたら、どこも異常なしってよ。 あの頭痛、一体何だっただろ?」
優奈「今は?今は何ともないの?」
敬太「とりあえず、痛くなったら痛み止め飲めって言われて薬貰ったよ」
裕介「そうか。 それなら良かったな・・・」
敬太「何だよ。 お前ら、そんなに俺のことが心配だったわけ? たかが頭痛だぜ?別に死ぬわけじゃねーんだし」
理花「べっ、別に心配なんかしてないわよ! アンタが頭痛なんて珍しいから! ねっ?優奈、裕介」
優奈「うっ、うん・・・」
裕介「病気とは無縁の敬太だからさ・・・」
敬太「あのなぁ、俺だって一応人間なの! 頭痛くらいあるに決まってんだろ?」
裕介「だよな・・・ ごめん、敬太」
敬太「ったく」
敬太「よしっ、じゃあ裕介には罰として飯おごってもらおっかなぁ~ なぁ、今から飯行かね?裕介のおごりでさ」
理花「そうね。敬太の快気祝いってことで・・・」
裕介「あぁ、別にいいよ。 今日はバイトないし・・・」
敬太「じゃあ、決まりだな。 なら、焼き肉にしようぜ!焼き肉!」
裕介「おいっ!焼き肉は高く付くだろ? せめてファミレスにしろよな?」
  四人がふざけ合っていると、田辺が現れた。
田辺「緒方くん、まだいたのね」
裕介「田辺先生、どうしたんですか?」
田辺「ほら、前に話してた桜についてよ。 詳しい人いたから、連絡先教えてあげようと思って・・・」
敬太「桜?おい、何のことだよ」
裕介「わりぃ、敬太。飯はまた今度で。 田辺先生、その方の連絡先教えてもらえませんか?」
田辺「えぇ、いいわよ」
  裕介は田辺から連絡先を聞く。
裕介「ありがとうございます。 優奈、理花! 今から行くぞ!」
優奈「うっ、うん。 急ごう、理花」
敬太「おいっ! 俺も連れてけよっ!」
  敬太は急いで、教室から出て行った。

〇川に架かる橋
敬太「なぁ、一体何だよ!桜って・・・」
  三人は無言で、連絡先に書かれてる住所へと急ぐ。
敬太「おいっ! シカトすんなって!」
理花「うるさいな。アンタは黙って着いてくればいいの!」
理花「それがイヤなら帰れば? 元はと言えば、これはアンタに関係してることかもしれないんだからっ!」
優奈「ちょっと、理花!」
  優奈はそれ以上、敬太に詮索されない様首を静かに横に振った。
敬太「俺に関係あること? 何だよ、益々気になるじゃん」
敬太「分かった。 そこまで言うなら、聞いてやるよ」

〇平屋の一戸建て
裕介「着いた。 ここだ・・・」
  表札には「橋本」と書かれている。
裕介「押すぞ」
  三人は息を呑み、頷いた。
  インターホンを押すと、中から年配の男性が返事をする。
裕介「あの、突然お邪魔してすみません。 僕たち○○大学の生徒です。 実は田辺先生に、こちらの住所をお聞きし訪ねて参りました」
「あぁ、あなた方でしたか。 田辺さんから話しは聞いてますよ。 どうぞ、中へお入り下さい」
裕介「ありがとうございます。 では、失礼します」
  四人は家の中へと入って行く。

〇古めかしい和室
橋本「それで? 桜と言うのは、何の桜について知りたいのですか?」
  橋本は、四人にお茶を煎れながら尋ねた。
裕介「実は「チヲビザクラ」と言う桜についてお聞きしたいんです」
  橋本は「チヲビザクラ」を聞いた途端、お茶を煎れてる手を止めた。
裕介「あの、橋本さん?」
  裕介は、橋本の顔を覗き込む。
  すると、何故か橋本の顔は青ざめていた。
裕介「橋本さん、大丈夫ですか!?」
橋本「君たち「チヲビザクラ」を見たのかね?」
裕介「はっ、はい。 実は俺たち、その桜の下で花見をしたんです。 ですが、その時から色々と変なことが起きてて・・・」
橋本「あの桜の下で、花見などしてはならん。 ましてや、「チヲビザクラ」を汚す事もな」
裕介「けっ、汚したらどうなるんですか?」
  裕介は、恐る恐る尋ねた。
橋本「・・・汚した者は・・・ 必ず死ぬ・・・」
  四人は、その場から一歩も動けずにいた。

次のエピソード:チヲビザクラの真実

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