チヲビザクラ

りをか

アナタを血染めに…(脚本)

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〇桜並木
優奈「ほんと、異様な光景だね・・・」
  四人は立ち止まり、その桜をじっと見つめる。
理花「この桜、チヲビザクラって言うんだ。 垂れ桜の仲間なんだって」
  理花は桜の木に付けられたプレートを見て答えた。
裕介「チヲビザクラか・・・ 確かにこの桜、真っ赤だもんな・・・ まるで、血を浴びたみたいに・・・」
優奈「ちょっと、怖いこと言わないでよ! 私達、今からここで花見するんだよ?」
理花「そうだよ。それにある意味綺麗じゃない? こんな赤い桜、滅多に見ることないんだし。ねっ?優奈もそう思うでしょ?」
優奈「そっ、そうだよ。敬太が見つけたこの場所で、花見楽しもうよ。 天気も怪しくなってきたし・・・」
裕介「だな。早急に食べ終えて帰ろうぜ。 なっ、敬太!」
  裕介は、敬太の肩をポンっと叩く。
敬太「そうだな。早いとこ食って帰ろうぜ」
  気を取り直した四人は、横一列になって歩き始めた。

〇桜並木
裕介「しっかし、こうして近くで見るとスゴいな。 ほっんとに真っ赤だ」
優奈「そうだね。しかも桜並木って言うよりかは、トンネルっぽい・・・」
理花「ほんと。垂れ桜だから、トンネルの中を歩いてるみたいだね・・・」
敬太「なぁ、これってどこまで続いてんだろ。 俺たち、戻って来れんのかな・・・」
理花「何バカなこと言ってんの? 戻って来れるに決まってるでしょ?」
裕介「そうだよ。 ただの桜並木なんだし・・・」
優奈「ねぇ、もうこの辺で良くない?」
敬太「そうだよ。 この辺で飯にしようぜ」
  四人は、桜並木の下で花見をすることにした。

〇赤(ダーク)
  四人は黙々と弁当を食べ始める。
優奈「何か、みんな静かだね・・・」
裕介「あぁ、騒げる気分じゃなくなってきたな・・・」
理花「ちょっと! 敬太が見つけたんだから、アンタがこの場を和ませてよ!」
敬太「そんなこと言われてもよぉ。 こんな薄気味わりぃとこで、どうやって和ませんだよぉ」
理花「ほら、お得意の一発芸とかでさ」
敬太「んなの、無理に決まってんだろ? 場所が悪いんだから。 さっさと切り上げて、カラオケでも行こうぜ!」
優奈「じゃあ、最後に写真撮らない? せっかく来たんだし。 私撮るから、敬太と理花並んで?」
敬太「えーっ、こんな気味悪い桜と一緒に撮んのかよ。 勘弁してくれよな」
優奈「ごちゃごちゃ言ってないで撮るわよ。 それに、敬太たち付き合って今日で一年なんでしょ? 丁度いいじゃない」
敬太「そうだけどさぁ~」
理花「敬太!あんまり優奈を困らせないの! さっさと撮るよ!」
  理花は、敬太の腕を無理やり掴み、ピースをし笑顔を作る。
  だが、
優奈「あれ? おかしいなぁ」
理花「優奈、どしたの?」
優奈「さっきから、スマホが全然二人にピントが合ってくんないの。 何でか、チヲビザクラにしかピントが合わないんだよね」
敬太「マジかよ。それ・・・」
優奈「うん。 こんなこと、今まで一度もなかったのに」
裕介「じゃあさ、俺の一眼レフで写真撮る?」
理花「裕介、カメラとかやってたっけ?」
裕介「最近始めたんだ。 親父の影響でさ」
理花「そうなんだ。 じゃあ、裕介にお願いしちゃおっかな。 ちゃんとキレイに撮ってよね?」
裕介「任せろって。 敬太!理花の隣りに行けって」
理花「そうよ。 浮かない顔ばっかしないでよね?」
敬太「分かったよ。 うるせぇな」
  敬太は舌打ちをし、理花と一緒に写真を撮った。
裕介「うん。 いい感じに撮れてる。 理花、出来上がり楽しみにしとけよ?」
理花「了解♪」
優奈「ねぇ、そろそろ帰らない? この後、雨降るみたいだから」
敬太「マジで?なら、さっさと帰ろうぜ」
理花「ちょっと! ゴミくらい片しなさいよね?」
敬太「別によくね? どーせ、誰も来ねーし。 ゴミなんか、その辺に捨てとけって!」
  敬太は、空になった缶ビールをチヲビザクラ目掛けて投げ捨てる。
理花「もうっ!こんなことして罰が当たっても知らないからね?」
敬太「ただの桜だろ? 罰なんか当たりゃしねーって」
  敬太は、先に一人で歩いて行った。

〇講義室
  数日後。
  裕介はこないだ撮った写真を、一人教室で静かに見つめていた。
優奈「裕介、おはよっ」
裕介「優奈、おはよう」
優奈「それ、この前の花見の写真?」
裕介「うっ、うん・・・」
理花「おっはよう~! 優奈、裕介。 あっ、それこないだの花見の写真? どれどれ、理花ちゃんが拝見してやろう」
  理花は、裕介の手から写真を取り上げた。
「ちょっと・・・ 何よ・・・これ」
  理花の顔が、蒼白になる。
裕介「だろ? これ、アイツに見せんのはやっぱ良くないよな?」
優奈「そっ、そうだね・・・」
  三人が見たその写真には、敬太だけが何故か真っ赤に染まっていた。

次のエピソード:忍び寄る怨念

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