3月24日 電話(脚本)
〇中規模マンション
〇高層マンションの一室
その日、初めて固定電話がなりました。私はあることすら知りませんでしたから、兄宛ての電話でしょう
兄が留守だったので代わりに出ました
妹「もしもし?」
電話「・・・」
返事はありません。兄ではないので戸惑っているのでしょうか
妹「もしもし?」
電話「誰? ○○じゃないの?」
低い声で、聞いたことの無い名前がでました。間違い電話?
電話「○○を出して」
妹「えっと、間違いです。うちに○○はいません」
と、返しましたが──
電話「○○を出して! 早く!」
と、ややヒステリックな口調で急かされます
妹「だから、その人はいないんです」
電話「嘘だ。○○を出せ! いるのは分かってるんだ、早くしろ!」
口調はだんだんと荒く、激しくなります
怖い。心霊とは違う怖さがありました
妹「違います!」
ガチャンと、私は電話を切りました
妹「なんだったんだろ」
すぐさま電話がけたたましく鳴り響きます
とはいえ、また同じ人のような気がして手が出ません
弟「姉ちゃん、電話なってるよ?」
妹「今、電話にトラウマができたもので」
弟「じゃあ俺が出るよ」
弟が代わりに電話にでると──
電話「○○! いるんだろ! 早く出せ!」
弟は即座に電話を切りましたが──
またすぐに電話がなります
妹「私達にクレーム電話対応の適正がないことがわかったよ」
「電話でろ!」
玄関を激しく叩く音がして、電話と同じ声が聞こえました
妹「なんで・・・?」
電話をかけてきた人が、外にきているのでしょうか?
今までとは違う、明確な敵意が迫っていました
弟「あ、兄貴に電話を」
妹「お兄ちゃん! 助けて、家の外に変な人が・・・!」
電話「わかった。警察に連絡しておく。俺もすぐ帰るから、絶対、ドアは開けるなよ」
「電話でろ! 早くしろ!」
外の人は激しくドアを叩きつけてきます。今にも蹴破って入ってきそうな恐怖に震えながら、受話器に手を伸ばします
電話「○○を出せ! 早く、早く! ○○! ○○! ○○!」
扉を叩く音は止まりましたが、電話からは激しい叫びを何度となく繰り返します
叫び声に紛れて、救いの音が聞こえました
〇中規模マンション
〇高層マンションの一室
電話をかけてきた人は警察に捕まり、私は事なきを得ました
( ´∀`)「災難だったな」
妹「・・・いつもと違う怖さがあったよ」
妹「あの人、うちを誰と間違えてたの?」
( ´∀`)「あいつは、下の階の住人のストーカーだ。前に何度かしょっ引かれた前科持ちでな」
( ´∀`)「別件で捕まってたが、昨日、釈放された途端にこの騒ぎだ」
妹「そうなんだ・・・」
そこで、ふと下の階の住人のことを思い出します
妹「下の階の住人って、確か亡くなってるよね?」
( ´∀`)「あぁ。アレが捕まっているときだから、関係ないと思うが」
妹「あの人、○○がここにいるって言ってた」
( ´∀`)「頭おかしそうだったし、ただの勘違いじゃね?」
妹(うちの電話番号を調べて、この部屋まで来て?)
私は頭を振り、それ以上、考えないことにしました
妹(深く考えないようにしよう)
そうしないと、この部屋に○○がいるのではと、考えてしまうから