3月21日 本棚(脚本)
〇中規模マンション
〇女性の部屋
妹「受験でお世話になった参考書 捨てられないのは貧乏性 いつか誰かに譲りましょう」
引っ越し以来、おざなりになっていた本棚の整理をしていたときのことです
妹「え?」
本を抜き取った、その隙間。その僅かなスペースから、こちらを睨む目が見えました
暗闇の奥から、赤く血走り、怒りのエネルギーに満ちた目。片目しか見えてないのに、凄絶な形相が頭に浮かびます
思わず手にした本を落してしまいました
妹(見間違い?)
普通の家なら、そう思ってもう一度、隙間を見たでしょう
でもここはデッドゾーンぶっちぎりの事故物件。確認したら死にます
〇高層マンションの一室
妹「と、言うわけでお願いします」
( ´∀`)「そんなん別に珍しくないだろ。ほら、コンビニでもジュースの補充してる人と目が合うだろ」
妹「本棚の裏で、誰が何を補充してるの!?」
( ´∀`)「じゃあ虫だろ。この前、本を取り出したら、でっかいゴキブリが奥で潰れてたし」
妹「それはそれで嫌なんだけど」
( ´∀`)「スプレーでやっつけるか?」
妹「本が汚れちゃうからダメ」
( ´∀`)「なら燻煙式の殺虫剤を焚いてみるか」
妹「両隣も一緒にやらないと、また戻って来るよ?」
( ´∀`)「捕獲罠を設置で」
妹「やだよ。白い手がくっついてたら怖いもん」
( ´∀`)「じゃあホウ酸団子は?」
妹「既に死んでるからなぁ」
兄の影響か、私も心霊現象の扱いが雑になっている気がします
( ´∀`)「そうだ、ドライヤーを当てて乾燥させるよう」
妹「その手があったか」
兄と私は、意を決して、お風呂場からドライヤーを持ちだし、本棚の隙間から睨む目に挑むのでした
〇女性の部屋
隙間から睨む目は、まだそこにいました
それを見た瞬間、氷水を浴びせかけられたような冷たさが全身を走ります。先ほどの気楽さは瞬時に霧散します
( ´∀`)「隙間から睨む目か。目だけで分かる、凄い形相してるな」
( ´∀`)「本を全部出したら、どんな顔してるか分かるかな?」
妹「それ絶対死ぬやつ!」
( ´∀`)「ダメか?」
妹「アウト」
( ´∀`)「なら仕方ないな」
私の必死の懇願を、兄は珍しくすんなりと受け入れて
( ´∀`)「じゃあ、本をスライドさせていって、全体像を拝むことにしよう」
くれませんでした
妹「こういうのは全体像見ちゃいけないの! 見たら死ぬ系なの!」
( ´∀`)「そうなのか、恥ずかしがり屋さんめ」
妹「そういうのじゃないよ?」
( ´∀`)「じゃあ、当初の予定通り、ドライヤー当てるか」
妹「待って。下手に手出しするのも怖くなってきた」
( ´∀`)「じゃあ、どうするんだ?」
妹「とりあえず、隙間ができないように本を入れておいて」
( ´∀`)「ふむ。ならとっておきのをいれてやろう」
〇中規模マンション
その後──
〇女性の部屋
あれ以来、睨む目は出ていません
( ´∀`)「やはり俺の選書に間違いはなかった」
妹「そうだねー」
( ´∀`)「やはり怪奇現象にはこれだな」
あの日、兄が隙間を埋めるのに使ったのは、『ぬ~べ~』の単行本でした
妹(いくらなんでも、偶然・・・だよね?)