6 兄さんの本心(脚本)
〇男の子の一人部屋
長谷川花音「取り合えず来ては見たけど、どこにあるかな・・・」
あたしは家に戻って直ぐ、兄さんの部屋に入った。今でこそ物置となった部屋だけど、兄さんが持ってた物は幾らか残ってた。
長谷川花音「これでも無い・・・ここでも無い・・・」
長谷川花音「あった!!」
長谷川花音「見つけた!兄さんの日記!」
長谷川花音「これなら・・・」
長谷川花音「◯◯年☓月△△日・・・今日から俺はこの孤児院の子供達に勉強を教える・・・教えると言っても自主的にだけど・・・」
長谷川花音「孤児院の子供達はどこか詰まらなさそうだ・・・何か物作りを教えて見たら面白いかな?」
長谷川花音「ここじゃ無いな・・・」
長谷川花音「◯◯年☓月△△日、俺はこの日、タケルおじさんに子供でもできる物作りは無いか聞いて見た・・・そしたら、」
長谷川花音「巷には子供向けのロボット教室があると言う話を聞いた・・・中身を覗いて見たら、何だか凄く面白そうで、高橋先生にも」
長谷川花音「相談してやって見る事とした・・・優しくゆっくり教えたら、子供達は楽しそうな表情を沢山見せてくれた・・・」
長谷川花音「これなら皆とやって行けそうだし、俺ももっと造形を深めようと思った・・・」
長谷川花音「これじゃ時間掛かるな・・・もっと奥に何か無いかな・・・」
あたしは兄さんが書いた日記をひたすら確認した。そこにあったのは兄さんが孤児院でして来た事。兄さんの当時の気持ちが、
この日記の中に溢れていた。その中で、兄さんは子供達に対して何を思ってたのかを確かめる為に、あたしはこの日記を
探したのだった。
長谷川花音「◯◯年☓月△△日、この日、どう言う訳か知らないが、夏目工房の人がこの孤児院を訪ねて来た・・・」
長谷川花音「あ、あった!これを読めば、何か分かるかも!!」
長谷川花音「・・・・・・」
長谷川花音「・・・!?兄さん・・・そうだったんだね・・・!!」
〇おしゃれなリビングダイニング
クチナシタケル「義姉さん!ただいま!」
長谷川母「お帰りタケル君!今日はどうだった!?」
クチナシタケル「いやぁもう!子供達からは大盛況だったよ!やっぱ夏目工房で最新技術を学んだり、再契約を結んで良かったよ!」
長谷川花音「・・・・・・」
クチナシタケル「あ!花音ちゃんただいま!今日の俺の活躍どうだった!?」
長谷川花音「うん、良かったんじゃ無い?」
クチナシタケル「だよなだよなぁ!夏目工房様々だぜぇ!」
長谷川母「どうしたの花音?何か浮かない顔してるけど・・・」
長谷川花音「そんな事無いよ・・・只・・・」
長谷川母「只?」
長谷川花音「タケルおじさん、兄さんを殺したのって、タケルおじさんだよね?」
クチナシタケル「そうそう!拓人君を殺したのは俺・・・って・・・」
クチナシタケル「はぁ!?花音ちゃん!いきなり何を言い出すんだ!?」
長谷川母「花音!一体どうしたって言うの!?」
長谷川花音「高橋先生から聞いたの・・・おじさん、昔孤児院に夏目工房の人達が来て、兄さんが契約を断った事・・・」
長谷川花音「それで兄さんとギクシャクしてたって・・・」
クチナシタケル「か、花音ちゃん!一体何を言っているんだ!?おじさんだぜ!?そんな事する訳無いだろ!?」
長谷川花音「本当の事を言って!あたし達は家族だけど、このままにしては兄さんが浮かばれない!あの時、」
長谷川花音「何があったか教えてよ!!」
クチナシタケル「・・・あぁそうだよ!」
長谷川母「た、タケル君・・・!?」
クチナシタケル「そうだよ!やったのは俺だよ!でも後悔した事は無い!拓人がいなくなってくれたお陰で夏目工房とは上手くやって行けて、」
クチナシタケル「俺の生活も安定したからな!」
長谷川母「た、タケル君・・・あなたが犯人だっただなんて・・・!?」
クチナシタケル「本当!拓人は馬鹿な奴だったよ!あれだけの大金を積んで孤児院を支援してくれるってのに、それをあっさり断って!」
クチナシタケル「一体何を考えてるんだってつくづく思ったよ!大出世のチャンスを棒に振るだなんて!!」
長谷川花音「・・・そうなんだね・・・本当に馬鹿なのは、おじさんの方だよ・・・」
クチナシタケル「何!?お前、言って良い事と悪い事があるだろ!!」
長谷川母「タケル君、それあなたに言えた事?」
長谷川花音「おじさん、これを見ても同じ事が言える?」
クチナシタケル「何だこれ?」
長谷川花音「兄さんの日記・・・どうしてもタケルおじさんに読んで欲しい所があるの・・・ここのページ・・・」
クチナシタケル「何だと?どれどれ・・・」
クチナシタケル「◯◯年☓月△△日、この日、どう言う訳か知らないが、夏目工房の人がこの孤児院を訪ねて来た・・・」
クチナシタケル「普段じゃ絶対手に入らない様な大金を差し出して孤児院に援助をしようとしてたが、俺はどうしても納得できず、」
クチナシタケル「一方的に断った・・・そんな事したら、子供達は本当の意味で強くなれない・・・強い力に頼らなくたって、自分達の力で」
クチナシタケル「強くなれる・・・俺はどうしても、あの子達を、遊星や守りの四天王見たいに、自分達の努力で強くなれると言う事を」
クチナシタケル「あの子達に教えたかった・・・支援を断っておじさんは大分不機嫌だったから、次会った時は絶対誤解を解かなきゃ・・・って・・・」
クチナシタケル「何だよこれ!何だよこれ!!何なんだよこれはぁぁぁ!!!」
クチナシタケル「う、嘘だろ!?あいつ子供達の事、そこまで考えてたってのか!!??」
長谷川花音「そうだよ・・・これが兄さんの本心なの・・・兄さんの考えてる通り、あたし達は自分の力で強くなる事だってできる・・・」
長谷川花音「強い力に頼れば抑えが効かなくなり、それが無いと何もできなくなる・・・兄さんはそれが怖くて支援を断ったの・・・」
長谷川花音「兄さんは孤児院の子供達に、自分の力で未来を切り開ける様になって欲しかったんだよ・・・」
クチナシタケル「そ、そんな・・・それじゃあ、俺がやった事は・・・」
長谷川花音「確かに強い力は魅力的・・・だけど、それも使い手次第で大きく変わる・・・おじさんが決して悪いとは言わない・・・」
長谷川花音「だけど、兄さんを殺した事、兄さんの気持ちに気付けなかった事・・・おじさん、もう分かるよね?」
クチナシタケル「拓人君・・・まさか、そこまで子供達の事・・・・・・」
クチナシタケル「義姉さん、電話貸してくれるか?」
長谷川母「勿論よ・・・タケル君・・・確り償ってね・・・」
その後、タケルおじさんは警察に連絡して自ら自首を宣告した。あの時工房の人達が支援を申し出なければ、あの時兄さん達が
上手く話し合っていればと数多の考えが浮かんだが、どれもこれも結果論で、あたし達はどうにもできなかった。