インソムニア

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第18話 株式会社JSを追え(脚本)

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〇古いアパート
磯村 月人(いそむら つきと)「お兄さん、誰?」
小判 早馬(こばん そうま)「俺は小判相馬。警部補だよ」
磯村 月人(いそむら つきと)「警部補! すっげー!」
磯村 月人(いそむら つきと)「なになに? 事件?」
小判 早馬(こばん そうま)「ま、そんなとこさ」
小判 早馬(こばん そうま)「守秘義務があるから話せないけどね」
磯村 月人(いそむら つきと)「しゅひぎむーー!? かっけぇーー!」
小判 早馬(こばん そうま)「そういう訳で、お母さんと少し話せるかな」
磯村 月人(いそむら つきと)「いいよ! あ、でも今──」

〇店の入口
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「本当にびっくりしました」

〇シックなカフェ
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「パート先のオーナーが羽柴社長だなんて」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「オーナーのオーナーというところです」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「私は実務には殆ど介入していません」
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「そ、そんな偉い方が・・・」
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「いちパート職員の私に何の御用でしょうか」
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「早朝から呼び出しなんて・・・」
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「はっ! まさかクビっ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「いやいや。そういうことではありません」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「実は聞きたいのは──息子さんのことです」
磯村 芽衣子(いそむら めいこ)「月人がなにか?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「いえ、磯村さん」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「息子というのは新太くんのことです」

〇整頓された部屋
白宵 覚(しらよい さとる)「白宵だ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「覚か? 何とか聞き出したぜ」
白宵 覚(しらよい さとる)「本当に? よく怪しまれなかったな」

〇店の入口
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ロンダリングから依頼を受けたことにした」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「無断欠勤した磯村の調査を頼まれたとな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「口裏、合わせといてくれよな」

〇整頓された部屋
白宵 覚(しらよい さとる)「わかった。それで?」
白宵 覚(しらよい さとる)「──」
白宵 覚(しらよい さとる)「なるほど、ありがとう」
白宵 覚(しらよい さとる)「二人は本部にでも避難しててくれ」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺とナイトも、ここを終わり次第向かう」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「了解。覚も気をつけろよ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「誰から?」
白宵 覚(しらよい さとる)「明闇からだ。あの映像の意味がわかったぞ」
白宵 覚(しらよい さとる)「新太は金澤夏希と付き合っていたそうだ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「ええー!」
涅群 騎士(くろむら ないと)「磯村さん、銀行強盗の恋人だったの!?」
白宵 覚(しらよい さとる)「金澤がどこまで話していたかは疑問だがな」
白宵 覚(しらよい さとる)「だが母親が言うには──」
白宵 覚(しらよい さとる)「最近新太の仕送り額が増えていたらしい」
涅群 騎士(くろむら ないと)「金澤さんからお金を貰ってたのかな」
白宵 覚(しらよい さとる)「かもな。あるいは──」
白宵 覚(しらよい さとる)「闇バイトを紹介されていたのかもしれん」
白宵 覚(しらよい さとる)「つまり、ここを調べる価値はあるわけだ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「薄々気付いてたけど、ここってもしかして」
白宵 覚(しらよい さとる)「ああ、そうだ」

〇マンションの共用廊下
白宵 覚(しらよい さとる)「ここは新太の部屋だよ」

〇整頓された部屋
涅群 騎士(くろむら ないと)「不法侵入だったんだ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「あれ? 白宵さん、鍵で入ったよね?」
白宵 覚(しらよい さとる)「従業員は家の合鍵を会社に預けてる」
白宵 覚(しらよい さとる)「いかなる時でも仕事に連れ戻せるようにな」
涅群 騎士(くろむら ないと)「理由がブラック過ぎるよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「そうか? 普通だけどな」
白宵 覚(しらよい さとる)「よし、さっさと手がかりを探すぞ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「何の躊躇いもなく金庫を漁ってる・・・」
涅群 騎士(くろむら ないと)「白宵さんって結構悪人だよね」
白宵 覚(しらよい さとる)「何を今さら。俺は悪徳業者の社員だぞ」
白宵 覚(しらよい さとる)「お。これは──」
白宵 覚(しらよい さとる)「通帳か。何か手がかりがあるかもな」
涅群 騎士(くろむら ないと)「見せて。うわー、ギリギリの生活・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「”差し押さえ”社員の給与は低めだからな」
涅群 騎士(くろむら ないと)「あれ? 途中から預金額が増えてる」
白宵 覚(しらよい さとる)「何だ、この50万円という振込は」
白宵 覚(しらよい さとる)「うちは退職金でもこの額は出さんぞ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「何度か振り込まれてるね」
白宵 覚(しらよい さとる)「株式会社『JS』・・・?」
涅群 騎士(くろむら ないと)「JS!? それって確か──」

〇警察署の入口
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「株式会社JS?」

〇警察署のロビー
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「金澤夏希の資料にあった会社ね」
小判 早馬(こばん そうま)「ええ。会員制の動画チャンネルです」
小判 早馬(こばん そうま)「不眠症の人間に眠りを提供すると」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「彼女、そのサイトに依存していたわね」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「カードでJSへの入金が多く見られたわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「それがどうかしたの?」
小判 早馬(こばん そうま)「先ほど、銀行口座の開示請求が通りました」
小判 早馬(こばん そうま)「内容を確認しましたところ、奇妙なことに」
小判 早馬(こばん そうま)「JSから金澤に複数の入金があったのです」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「どういうこと? 返金でもしたの?」
小判 早馬(こばん そうま)「いえ。金額は入金より遥かに大きな額で」
小判 早馬(こばん そうま)「何かの報酬のように思われました」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「最終入金日は銀行強盗の前日、ですって!?」
小判 早馬(こばん そうま)「警部、俺の推理が正しければJSは──」
小判 早馬(こばん そうま)「闇バイトの胴元である可能性があります!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「恐らく会社は偽装されているはず」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「組織犯罪対策部に協力してもらいましょ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「急いで本体を突き止めるわよ」
小判 早馬(こばん そうま)「了解です!」

〇超高層ビル
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「はい、社長室・・・って、社長!」

〇豪華な社長室
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「通知不能番号からかけてきたと思えば!」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「一体どこで何やってるんですかっ!」

〇シックなバー
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「あー、すまない。都くん」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「実は非常に申し訳ないんだが──」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「私はまた、命を狙われてるみたいでね」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「いのっ・・・ええっ!?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「そういう訳でしばらく戻れない」

〇豪華な社長室
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「戻れないって一体いつまでですかっ!」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「うーん。2、3週間・・・いやもっとかな」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「無理ですよ! 会社潰れちゃいますって!」

〇シックなバー
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「決済案件はリモートでやるから」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「当然ですっ!」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「会議資料もPDFで山程送りますからね!」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「わかったよ。・・・でさ」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「わかってます。本当の用件は何ですか」

〇豪華な社長室
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「これでも私、社長の第一秘書ですから」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「社長がわざわざ電話する意味はわかります」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「急ぎの用件があるんでしょう?」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「・・・はい・・・はい」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「5分で資料を送りますから」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「はい、社長もどうかご無事で」

〇シックなバー
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「おっ。きたきた」
白宵 覚(しらよい さとる)「まだ一分も経ってないぞ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「うちの秘書は優秀なんでね」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「なんと。株式会社JSの代表は偽者らしい」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「しかも仮想通貨で資金洗浄をしている、か」
白宵 覚(しらよい さとる)「随分手が混んでるんだな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「表立って動けない人間の仕業だよ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「相当な切れ者なのは確かだがな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「それでと・・・おっとこれは凄いぞ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「真の運営元はあの大東京大学の教授だとよ」
三井 陽和(みつい ひより)「世も末ね。この国一番の大学でしょ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ま、教授なんて名誉職だからな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「金儲けに走るやつがいてもおかしくはない」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「名前は伽藍人志(がらん ひとし)」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「専攻は睡眠物理工学の教授だそうだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「睡眠・・・物理工学!?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「覚、伽藍教授と知り合いか?」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや・・・」
三井 陽和(みつい ひより)「自分で言う? それとも代わりに言う?」
白宵 覚(しらよい さとる)「睡眠物理工学教室は俺の・・・」

〇焼肉屋
六道 睦月(ろくどう むつき)「『睡眠物理工学』ね」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺の講義、結構人気なんだぜ」

〇シックなバー
白宵 覚(しらよい さとる)「俺の友人が所属する教室だ・・・」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「そうか。巻き込まれてないといいな」
白宵 覚(しらよい さとる)「ああ・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)(クソッ・・・なんてこった)
白宵 覚(しらよい さとる)(お前は無関係だよな、睦月・・・)

〇大学の広場
???「先生ー! 睦月先生ー!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「あ、碓氷さん。どうしました?」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「どうしました、じゃないですよ」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「伽藍教授、また部屋に居ないんですけど」
六道 睦月(ろくどう むつき)「またですか・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「あ、でも俺も一週間くらい会ってな──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「すやーーーー」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「睦月先生! 起きて!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「はっ! ごめん。で、教授に何か用?」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「添削待ちの論文が机の上に放置されてて」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「開けっ放しのPCに未読メールが山程・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「あー、後で俺がやっとくよ」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「全くどこうろついてるんだか」
六道 睦月(ろくどう むつき)「なんか、色々忙しいらしいよ」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「まあ、教授がお忙しいのはいいことですが」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「睦月先生も、もし教授に会ったら──」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「たまには私にお姿を見せてと」
六道 睦月(ろくどう むつき)「うん、伝えとく」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「あと、先生にお客様です」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺に? 今日アポイントなかったけど」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「本当は教授に会いたかったそうなんですが」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「居ないと申し上げたら是非先生にと」
六道 睦月(ろくどう むつき)「わかった。その人、どこに居るの?」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「あちらにいらっしゃってます」
小判 早馬(こばん そうま)「どうも、警視庁の小判と申します」
小判 早馬(こばん そうま)「伽藍教授のことで、少しお時間を戴きたい」
六道 睦月(ろくどう むつき)「警察!? 教授、何かしたんですか」
小判 早馬(こばん そうま)「まだ捜査中ですので、詳しいことは」
小判 早馬(こばん そうま)「お話、お聞かせいただけますか?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「あの俺、睡眠障害なんで──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お話中寝てしまうかもしれないのですが」
小判 早馬(こばん そうま)「ええ、伺ってます。構いませんよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「本当ですか! 良かったー」
六道 睦月(ろくどう むつき)「じゃあ、碓氷さん。面談室をお願い」
教授秘書 碓氷 銘守(うすい めもる)「かしこまりました」

〇警察署の入口

〇役場の会議室
小判 早馬(こばん そうま)「はぁ・・・」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「どうしたの、小判くん」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「大きなため息が廊下まで聞こえたわよ」
小判 早馬(こばん そうま)「すみません」
小判 早馬(こばん そうま)「あまりにも関係者の足取りが掴めなくて」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「伽藍教授には会えた?」
小判 早馬(こばん そうま)「いえ、かれこれ一週間は行方不明だそうで」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「まさか私たちに気付いて・・・?」
小判 早馬(こばん そうま)「いや、それはどうでしょうね」
小判 早馬(こばん そうま)「教授は元々不在気味の人みたいです」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「他に話を聞けそうな人はいたの?」
小判 早馬(こばん そうま)「秘書の方には少し話を聞けましたが・・・」
小判 早馬(こばん そうま)「彼女も教授にはしばらく会ってないとか」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「また折を見て行くしかないわね」
小判 早馬(こばん そうま)「そうですね・・・」

〇おしゃれな大学
  しかし、准教授も不在とは・・・
  大東大の教職員って忙しいのねぇ
六道 睦月(ろくどう むつき)「川端康成の名言にこんな言葉がある」

〇大教室
六道 睦月(ろくどう むつき)「”忘れるに任せるということが結局”──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「”最も美しく思い出すということなんだ”と」
六道 睦月(ろくどう むつき)「彼は”忘れる”ということが──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「人間には大切な要素と考えていたんだね」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そう、人はとても忘れやすいんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「とても・・・ね」

次のエピソード:第19話 伽藍人志

コメント

  • わー!!!!!やはり続きが気になり過ぎる展開ですー!!!!!!( ゚д゚)

    あぁー!!!!!まさかのまさかなのでしょうか!?けど、そうだったとしても…何か理由があるはず…

    ほんと緻密に洗練とされていて面白いストーリー作れるの素晴らしいです✨面白いです✨👏☺️🌸

    続きも楽しみにしていますー!!!✨☺️

  • さ〜てこいつぁ面白くなってきやがった😆
    各人の思惑が入り乱れ、結構複雑になってきているのに、あっという間に読んでしまいました。(どうやってコントロールしてるんです?)

    あ、秘書子のストーリーは私も気になります🖐️

  • えーん、彼の繋がり、出てきましたね!😂
    開示の匙加減が絶妙で、不穏だし読めないし、なまごろしです😂 早く解明編が見たいです。
    覚が自覚的にブラックなところが、逆に彼のピュアなところも際立たせますね。
    有能秘書ちゃん、素敵です♥️

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