映栄杉さん家はお侍

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「三十一文字(みそひともじ)とお侍(短歌)」(脚本)

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〇映栄杉家の外観

〇映栄杉家の居間
テレビ(声)「続いては若者の間で大ブームとなっている短歌コンテストの話題です」
テレビ(声)「大賞賞金は、なんと三十万円!」
映栄杉蔵之介「三十万円!? むむむ、三十万!」
映栄杉蔵之介(・・・・・・)
映栄杉蔵之介(新作に買い換えられる・・・)
映栄杉蔵之介「しのぶ! ともえと太郎丸を招集せよ!」
映栄杉しのぶ「なんだい、藪から棒に」
映栄杉蔵之介「侍たるもの、風雅を嗜むのを疎かにしてはならぬ。されば話題の短歌コンテスト、我ら家族で応募しようではないか」
映栄杉しのぶ「なんだか胡散臭い言い草だねぇ。大方さっきの賞金が目当てなんだろ」
映栄杉蔵之介「な、なんの事でござる!?」
映栄杉蔵之介「・・・と、とにかく! 第一回映栄杉家歌会を開催するでござる!」

〇映栄杉家の外観

〇映栄杉家の居間
映栄杉蔵之介「しのぶ、先陣を頼む」
映栄杉しのぶ「あいよ、まかせときな」
  分身に掃除と洗濯任せつつ
  我が身は激安セールに疾る
映栄杉太郎丸「なんと素晴しいタイパ」
映栄杉ともえ「家事偏差値が高すぎます!」
映栄杉蔵之介「一時たりとも無駄にせぬその働き、正に妻の鑑。拙者、感激でござる!」
映栄杉しのぶ「なんだか照れちまうよ」
映栄杉太郎丸「次は吾輩が」
  令和の世侍の武器となるものは
  腰の二本より投資の資本
映栄杉しのぶ「世情を解ってるねぇ」
映栄杉ともえ「新しい侍の姿にございますね!」
映栄杉蔵之介「機を見るに敏の姿勢、嫡男として天晴なり。拙者、感慨ひとしおでござる!」
映栄杉太郎丸「フフン!」
映栄杉ともえ「では、わたくしからも一首」
  唇にしみるメプタも尊いは
  推しのメンバーの推しキムチだから
映栄杉蔵之介「・・・・・・メプタとは何でござるか?」
映栄杉ともえ「韓国語で『辛い』を意味します。わたくしの推しがハマっている激辛キムチを歌にいたしました」
映栄杉しのぶ「推しのためなら激辛キムチまで好きになっちまうってのかい」
映栄杉太郎丸「なんと一途な!」
映栄杉蔵之介「うむ、その推しへの純情、侍の娘の誉じゃ。拙者、感涙でござる!」
映栄杉ともえ「ありがとうございます!」
映栄杉蔵之介「皆の歌、心に染みた。では最後は拙者が参る!」
  宴会で張り切り候、飲みすぎて
  派手にしくじり腹切り候
映栄杉蔵之介「いかがか」
映栄杉しのぶ「なるほどねえ。侍あるあるってやつかい」
映栄杉蔵之介「なぬ?」
映栄杉ともえ「良きあるあるにございます!」
映栄杉太郎丸「あるあるでござる!」
映栄杉蔵之介「むむ? そ、そう? そうでござるか・・・・・・」
映栄杉しのぶ「じゃ、歌も出揃ったから今日はお開きでいいかい」
映栄杉蔵之介「あいや、待たれよ!」
映栄杉蔵之介「来ておる! 何かが降りて来ておる気がするのだ! だからしばし待つでござる」
「ええ!?」

〇映栄杉家の外観

〇映栄杉家の居間
映栄杉蔵之介「宴会の鉄板持ちネタ落ち武者の・・・・・・うむむ、なにか違う気がする」
映栄杉しのぶ「二人とも、もういいから寝な」
「はーい」
映栄杉蔵之介「丁髷や、ああ丁髷や、丁髷や・・・・・・ってこれは俳句でござるぅ!」
映栄杉しのぶ「あたしも寝るからね。お前さんも程々にしときな」

〇黒

〇映栄杉家の外観

〇映栄杉家の居間
映栄杉太郎丸「徹夜されたのでござるか!?」
映栄杉蔵之介「当然じゃ、この歌一つが賞金の 三十万になると思えば」
映栄杉ともえ「父上の話し方、まるで短歌みたいになってますけど」
映栄杉蔵之介「一晩中、ひたすら歌を詠んでたら 三十一文字が抜けぬでござる」
映栄杉しのぶ「鬱陶しいねぇ。で、肝心の歌はできたのかい?」
映栄杉蔵之介「もちろんじゃ、拙者渾身のこの一首 今こそ披露するのでござる」

〇黒
  陰腹で出来た傷だと思われて
  言うに言われぬ盲腸の跡

〇映栄杉家の居間
映栄杉しのぶ「お前さん、でかしたよ!」
映栄杉ともえ「素晴らしいです!」
映栄杉太郎丸「これぞまさしく!」
「会心のあるあるでございます!」

〇黒
  あるあると言われて遠い歌の道
  三十万は夢のまた夢

次のエピソード:元くノ一主婦vs配膳ロボ

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