お侍とコンプライアンス(脚本)
〇大会議室
田中「本日はコンプライアンス研修にご参加ありがとうございます。講師をつとめる田中です」
映栄杉蔵之介「拙者にコンプラ研修とは片腹痛し」
映栄杉蔵之介「侍といえば武士道。 武士道といえばコンプライアンスの先駆け」
映栄杉蔵之介「つまりコンプライアンスといえば 拙者ということでござる!」
田中「社内アンケートをおこなったところ、 コンプライアンス違反にあたる可能性のある事例がいくつか見受けられました」
映栄杉蔵之介「なんと不届きな。 拙者が成敗してくれよう!」
田中「えー。『勤務中にデスクで刀をみがいている』」
映栄杉蔵之介「んっ?」
田中「『飲み会で酔いつぶれた挙句切腹しようとする』」
映栄杉蔵之介「むむ?」
田中「大変リスクの高い行動といえますね」
映栄杉蔵之介「ぐぬぅっ!」
田中「どうしました、映栄杉さん」
映栄杉蔵之介「武士がコンプラ違反など恥の極み・・・田中殿、いや師範! 汚名返上の機会をなにとぞ、なにとぞぉ!」
〇オフィスビル
〇大会議室
田中「はい、ではこれからロールプレイング でハラスメントへの対応について学んでいきます」
田中「私が上司からのパワーハラスメントを受けており、同僚の映栄杉さんに相談するという設定です」
映栄杉蔵之介「御意!」
田中「では始めましょう」
田中「はあ・・・映栄杉さん、聞いてください。さっきも部長にみんなの前で怒鳴られて・・・」
映栄杉蔵之介「うむ、まずは気を落ち着けられよ。拙者が茶を点ててしんぜよう」
田中「わー、ありがとうございます」
映栄杉蔵之介「おお、大事なものを入れ忘れた」
田中「え?」
映栄杉蔵之介「ささ、ぐいっと!」
田中「今、何を入れました?」
映栄杉蔵之介「元気が出るお薬でござるが?」
田中「勤務中のアルコール摂取は就業規則 違反ですね」
映栄杉蔵之介「ただ元気づけようと・・・! まさか拙者の点てた茶は飲めぬと申すか!?」
田中「飲酒の強制はアルハラにあたります」
映栄杉蔵之介「なんと・・・不覚なり」
田中「途中まではよかったですよ! 相談しやすい雰囲気を作ることはとても大切です」
映栄杉蔵之介「御意!」
田中「では続けましょう」
田中「部長から無茶な量の仕事も押し付けられて。もう限界なんです」
映栄杉蔵之介「その気持ち、よくわかるでござる」
映栄杉蔵之介「残業なんて絶対したくないでござるし」
田中「え?」
映栄杉蔵之介「そもそも・・・仕事などしないに限るでござる! 御免!!」
田中「共感の姿勢は素晴らしいのですが」
田中「器物損壊ですね」
映栄杉蔵之介「いささか手荒でござったか」
田中「もう少し相談者に寄り添ってみてください。相談者の要望はなんでしょうか?」
映栄杉蔵之介「うむむ・・・」
映栄杉蔵之介「上司にパワハラをやめさせることでござる!」
田中「その通り! ではそのために、 映栄杉さんはどのような行動をとりますか?」
映栄杉蔵之介「フフフ・・・知れたこと」
映栄杉蔵之介「田中殿! 覚悟はよろしいか!」
田中「映栄杉さん?」
映栄杉蔵之介「いざ、パワハラ上司のもとへ」
映栄杉蔵之介「討ち入りにござる!!」
田中「ストーップ。ストップです」
田中「暴力ですね。普通に暴力。ダメ絶対」
映栄杉蔵之介「時には命をかけて刀を振るうこともいとわない・・・それが侍というもの!」
田中「話聞いてます?」
映栄杉蔵之介「いざ、出陣~!」
映栄杉蔵之介「こ、この足音は」
部長「騒がしいから見に来てみれば・・・ やっぱりお前か映栄杉!」
映栄杉蔵之介「ひぃーっ部長殿!」
部長「お騒がせしました。このあとは私から きっちり指導いたしますので」
田中「助かります」
映栄杉蔵之介「師範!? ご無体な!」
部長「行くぞ」
映栄杉蔵之介「パワーハラスメントにござる~!」
田中「力が解決してくれることもありますよね」
途中からハラスメントを超え、犯罪レベルに…笑 蔵之介が立派な社員になるまで、何度研修を重ねればいいのやらですね^^
最後の一言に持ってかれました!
田中先生の講義はまともなのに……
器物損壊に討ち入りに、武士にコンプライアンスは通用しないですね😙