〇映栄杉家の外観
友人「ここかぁ。思ったより普通の家だ」
友人「太郎丸君、約束通り遊びに来たよー」
「ガラガラガラン！」
友人「わっ！ な、何この音!?」
映栄杉太郎丸「これ利家、静かにするでござる」
映栄杉太郎丸「失礼した。ようこそ我が家へ」
友人「び、びっくりした・・・今の何？」
映栄杉太郎丸「吾輩作のスマートホーム、『利家（としいえ）』にござる」
友人「スマートホームって作れるんだ・・・」
映栄杉太郎丸「いろんな機能があるでござるよ。ささ、入ってゆっくり見ていくでござる」

〇映栄杉家の廊下
映栄杉しのぶ「あんた！　またこんな所に足袋を脱ぎっぱなしにして──」
利家の声「殿中でござる！　殿中でござる！」
映栄杉しのぶ「あ、お客様が来てるのかい？ こりゃ失敬・・・」
映栄杉太郎丸「来客もーど中は客人に粗相がないよう、注意してくれるでござる」
友人「そんな事まで見てくれるんだ」
映栄杉太郎丸「吾輩が作ったゆえ、高性能でござるよ」
友人「あはは・・・ちょっと独特だけどね・・・」

〇映栄杉太郎丸の部屋
映栄杉太郎丸「ささ、お座りくだされ。利家、茶を持て！」
友人「ど、どちら様―!?」
映栄杉太郎丸「ただのお茶汲み人形でござるが」
からくり人形「ｿﾁｬﾃﾞｺﾞｻﾞｲﾏｽ」
友人「お茶汲み人形って、もっと小さくて可愛いものかと思ってたよ・・・」

〇映栄杉家の廊下
友人「トイレトイレ・・・」
利家の声「御出陣～！」
友人「わっ！　な、何これ!?」
映栄杉ともえ「あ、ご不浄ですね？　そこの突き当たりにございますよ。ふふっ」

〇映栄杉家の部屋の前
利家の声「討ち取ったりぃ～！」

〇映栄杉太郎丸の部屋
友人「ちょっと！ いちいち騒いで恥ずかしいよっ！ どうなってんの!?」
映栄杉太郎丸「ヘルスチェックも兼ねているでござるからな。さっきの大将首ボイスはなかなか出ないでござるよ。いやあお手柄」
友人「僕のナニカを勝手に測らないでよっ！ なにさ大将首ボイスって！ ・・・って、ギャーッ！」
映栄杉太郎丸「何事でござるか!?」
友人「し、障子の穴からさっきのお茶汲み人形が覗いて・・・！」
映栄杉太郎丸「ああ、家族見守り機能でござるよ」
友人「それ留守の時使う機能じゃない!? ていうか怖いよ！」
友人「え、えっと、なんていうか・・・僕、そろそろ帰ろうかな～、なんて・・・」
映栄杉太郎丸「まだ来たばかりでござろう。利家の機能をもっと見ていってくだされ」
映栄杉太郎丸「ささ、リラックスして。利家、音楽かけて」
友人「いや怖いよ！ これのどこが音楽なのさ！」
映栄杉太郎丸「合戦こそ東軍と西軍が奏でる最高の交響曲。この後、高名な武将の名乗りというソロパートもあるでござるよ」
武将の声「遠からん者は音に聞け！ 近くば寄って目にも見よ！ 我こそは・・・ぐわーっ！」
友人「ちょっと！ 名乗りの途中でやられちゃったよ！ この戦場、荒れすぎじゃない!?」
映栄杉太郎丸「お、わかるでござるか!? この後、造反して敵軍につく者が続出するでござる」
友人「そんな歴史の闇みたいの聞かせないでっ！」
映栄杉太郎丸「いやあ、寝返りこそ戦場の華でござるなあ」
友人「どういう趣味してんの・・・僕もう帰るから！」
映栄杉太郎丸「・・・利家、関所閉めて」
友人「あ、開かない・・・!?」
映栄杉太郎丸「まだまだ機能はあるゆえ、見ていくでござるよ。次はプロジェクションマッピングでこの部屋を戦場に──」
友人「さっきのシーン見せる気でしょ!? 絶対やだよっ」
友人（こ、このままじゃ・・・でも利家は太郎丸君の味方だし）
友人「──いや、待てよ!?」

〇映栄杉家の玄関
映栄杉太郎丸「吾輩が作ったゆえ──」

〇映栄杉太郎丸の部屋
映栄杉太郎丸「寝返りこそ戦場の華──」

〇映栄杉太郎丸の部屋
友人（もしかして利家も──？）
友人「利家、謀反起こして！」
映栄杉太郎丸「なっ!?」
友人「開いた！」

〇映栄杉家の廊下
太郎丸の声「利家、開けるでござる！ 吾輩を裏切るでござるか!? そんな子に作った覚えはないでござる！」
友人「いや、性格そっくりじゃん・・・」