お侍と退職代行業者(脚本)
〇小さい会議室
部長「映栄杉!刀を傘立てに置くのはやめろと言っただろ!」
映栄杉蔵之介「し、しかし部長殿・・・」
部長「言い訳は聞かん。次同じことがあれば刀は没収!これは決定だ! いいな!」
映栄杉蔵之介「・・・」
映栄杉蔵之介「ぐぬぅ、部長殿はまことに口うるさい」
映栄杉蔵之介「もう我慢ならん!こんな会社、辞めてやるでござる!」
映栄杉蔵之介「・・・しかし」
映栄杉蔵之介「部長殿に直接辞表を出すのは、少々勇気が・・・」
〇オフィスビル
〇綺麗な会議室
退職代行業者「それで、弊社『モーヤダヨ』の、退職代行サービスをご利用されたいと」
映栄杉蔵之介「いかにも。部長殿はげに恐ろしき男にござるからなあ・・・」
退職代行業者「退職は直接申し出づらいもの、弊社におまかせください」
映栄杉蔵之介「頼もしい限りよ!」
退職代行業者「では、先ほどの傘立てに刀の件以外に、どのような不満がございますか」
映栄杉蔵之介「うむ、例えば・・・」
〇警察署の食堂
部長「映栄杉!社食で刀を研ぐな!」
映栄杉蔵之介「部長殿、切れ味が落ちては仕事に支障が・・・」
部長「出るわけがないだろ!なまくらのままでかまわん!」
映栄杉蔵之介「ご、ご無体な・・・」
〇綺麗な会議室
退職代行業者「・・・」
映栄杉蔵之介「さらにある時は」
〇城下町
映栄杉蔵之介「いやあ、部長殿、社員旅行はよいものですな。どうでござるか。拙者のプランは」
部長「映栄杉・・・ここは昨日も来たはずだが」
映栄杉蔵之介「江戸ランドは一日では遊びつくせませぬからな」
映栄杉蔵之介「ちなみに明日もここの予定にござる」
部長「プライベートの旅行で来い!」
〇綺麗な会議室
映栄杉蔵之介「拙者は数々の理不尽な目にあっているのでござる」
退職代行業者(部長が・・・の間違いでは・・・)
退職代行業者「それは辛かったでしょうね」
映栄杉蔵之介「おお、分かってくれるか」
退職代行業者「映栄杉さん、私がすぐ対応しますよ」
退職代行業者「部長様とアポイントをとりたいので、いつ頃がよさそうか確認いただけますか」
映栄杉蔵之介「あい分かった。今確認しよう」
映栄杉蔵之介「部長殿の予定がなかなかに埋まっておるな。これでは今週は難しいでござる」
退職代行業者「そうですか、来週でも結構ですよ」
映栄杉蔵之介「来週・・・も、これまたびっしりと・・・部長殿、一体何でここまで・・・」
映栄杉蔵之介「む?」
映栄杉蔵之介「ぶ、部長殿の今日の予定」
映栄杉急病対応 営業支援
映栄杉蔵之介「40度の熱が出たことにした拙者の業務代行で埋まっておるではないか!」
退職代行業者「小学生のズル休みと同レベルですよ・・・」
映栄杉蔵之介「そ、それにこの来週の客先訪問も」
映栄杉蔵之介「拙者が怒らせた顧客への謝罪対応でござる!」
退職代行業者「部長様、大車輪じゃないですか!」
映栄杉蔵之介「・・・思い返せば」
映栄杉蔵之介「社員旅行や刀研ぎの時も」
映栄杉蔵之介「部長殿が代わりに謝って下さっておった」
映栄杉蔵之介「なのに、拙者ときたら・・・」
映栄杉蔵之介「・・・すまぬ、退職はやめる。依頼はキャンセルさせていただきたい」
退職代行業者「えっ!?」
映栄杉蔵之介「拙者には退職代行を依頼する資格などない」
映栄杉蔵之介「武士として、侍として、最低限の礼儀として」
映栄杉蔵之介「本当に退職する際には、拙者直々に部長殿へ申し出ることにする」
退職代行業者「お客様・・・」
映栄杉蔵之介「すまぬ、部長殿から電話だ」
映栄杉蔵之介「非礼を詫びねばな」
映栄杉蔵之介「部長殿、此度は・・・」
部長の声「映栄杉!なんだこの提案資料は!?」
部長の声「全部筆記体で書かれているし、印刷したら潰れて読めない!ちゃんと確認したのか!」
映栄杉蔵之介「す、すみま」
部長の声「それと、発熱したと言っていたが、外回りの営業がお前を渋谷で見たらしいぞ」
部長の声「まさか、また仮病を・・・」
映栄杉蔵之介「ひいっ」
部長の声「・・・出社次第いつもの会議室に来るように」
映栄杉蔵之介「ところで、謝罪代行のサービスなどは・・・?」
退職代行業者「やってません」
反対に退職を迫られそうですね…蔵之介はどうやって入社試験を突破したのでしょうか。笑
面白かったで~す😆
短いながらも蔵之介のお調子者ぶりがギュッとつまったお話でした✨