映栄杉さん家はお侍

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サウナと我慢とお侍(脚本)

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〇浴場
映栄杉蔵之介「広い浴槽、開放的な空間に・・・ジェット、電気、よりどりみどりの多彩な風呂・・・」
映栄杉蔵之介「やはりスーパー銭湯は最高でござるな!!」
映栄杉太郎丸「然り、然り」
映栄杉蔵之介「だが太郎丸、おぬしはまだスーパー銭湯の真の醍醐味を味わっておらぬでござる」
映栄杉太郎丸「・・・またサウナでござりますか?」
映栄杉蔵之介「如何にも! サウナこそスーパー銭湯の醍醐味よ!!」
映栄杉太郎丸「左様にございますか。ではその間、吾輩は無料Wi-Fiで漫画でも・・・」
映栄杉蔵之介「なあ太郎丸、たまにはお主もサウナに付き合わんか?」
映栄杉太郎丸「吾輩、あまりサウナが好きでは・・・」
映栄杉蔵之介「う〜ん? むむむ?」
映栄杉蔵之介「太郎丸よ・・・。まさか、武家の子ともあろう者が、サウナに臆したでござるか?」
映栄杉太郎丸「別に臆した訳ではござらぬ。ただあの様な狭くて暑苦しい部屋に籠もって何の意味が有るのか分から──」
映栄杉蔵之介「いやいや拙者も鬼ではない! 怯えるおぬしを無理に付き合わせはせんよ」
映栄杉太郎丸「・・・まあ、たまには父上の不毛な道楽に付き合って差し上げるのも、孝行息子の宿命でござろうか」
映栄杉蔵之介「無理をせんでも良いのだぞ? 拙者は若者にハラスメントをする様な大人ではござらんからな!」
映栄杉太郎丸「御託は結構! 然らばいざ、サウナへ!!」

〇サウナ
映栄杉蔵之介「・・・・・・」
映栄杉太郎丸「・・・・・・」
映栄杉太郎丸「・・・・・・・・・・・・」
映栄杉蔵之介「おや? 何処へゆくのだ太郎丸? ロウリュならば逆でござる」
映栄杉太郎丸「やはりサウナは暑いだけの場所でした」
映栄杉蔵之介「むむ、限界か? ならば退いても仕方なし」
映栄杉太郎丸「まだ余裕ですが、これ以上我慢しても得るものは無さそうなので出ます」
映栄杉蔵之介「限界でもないのにサウナから出る、だと?」
映栄杉蔵之介「何と嘆かわしい! あぁ勿体ない!! 最近の若者は我慢が出来ない様でござるなぁ」
映栄杉太郎丸「・・・父上、サウナでのお喋りはマナー違反では?」
映栄杉蔵之介「拙者らしか居らぬのに・・・。最近の若者は変なところで真面目でござるなぁ」
映栄杉太郎丸「・・・・・・」
映栄杉蔵之介「まあ出ていくというのなら、止めはせぬ。 サウナは大人のお楽しみ」
映栄杉蔵之介「太郎丸に『整う』は、少しばかり早かった様でござるな!!」
映栄杉太郎丸「孝行と思って好きに言わせておけば」
映栄杉蔵之介「サウナにて『整う』の神秘に触れる為には、何よりも我慢が肝要・・・」
映栄杉蔵之介「おや太郎丸、出ていかなくても良いのでござるか?」
映栄杉太郎丸「ご心配には及びません」
映栄杉蔵之介「んなっ!? 何時の間にその様な無粋な物を」
映栄杉太郎丸「吾輩たちしか居りませぬのでご堪忍下され」
映栄杉蔵之介「むむぅ・・・」
映栄杉太郎丸「ところで父上は『整う』の正体をご存知でしょうか?」
映栄杉蔵之介「フフフ、知りたいか? アレは神秘の──」
映栄杉太郎丸「アレはサウナと水風呂の温冷差で、脳内ホルモンと自律神経が反応する現象、神秘ではありませぬ」
映栄杉蔵之介「ほ、ほう・・・なかなか物知りではないか」
映栄杉太郎丸「正体さえ知れたのなら、サウナで無駄な我慢をせず、他の方法で整っても良いやもしれませんな」
映栄杉蔵之介「いや、いや太郎丸、それだけで我慢が要らぬとはなるまい」
映栄杉蔵之介「例えば・・・最近の若者は仕官をしてもすぐに辞めてしまうのだ」
映栄杉蔵之介「そんな事では新しい仕官先でも長続きしない・・・。石のサウナにも三年、我慢を覚えねば」
映栄杉太郎丸「ことわざにサウナが食い込んでおりますぞ」
映栄杉太郎丸「終身雇用や年功序列の期待ができないこの現代、転職に活路を見出すのは当然のことでござる」
映栄杉蔵之介「ぐぬぬっ・・・。ならば、辛抱する木に金が生ると言ってな・・・」
映栄杉太郎丸「父上、ここ最近の昇給は?」
映栄杉蔵之介「ぐぬうっ!? ・・・・・・他にも、武士は食わねど高楊枝と言ってだな・・・」
映栄杉太郎丸「腹が減っては戦もできませぬぞ」
映栄杉蔵之介「ぐぅ・・・ぶ、武士道とは我慢することと・・・」
映栄杉太郎丸「武士道敗れたり! 無駄な我慢のせいで何ゆえ現状改善を捨てるのか!!」
映栄杉蔵之介「そ、その様なことなど・・・」
映栄杉太郎丸「そもそも父上は我慢などしてござらぬ。この前も休肝日にお酒を飲んで母上に叱られておったではないですか!!」
映栄杉蔵之介「っ。・・・ッ。・・・流石は我が息子太郎丸よ・・・拙者もう、ぐうの音も出ぬ」
映栄杉太郎丸「父上・・・。それではサウナでの我慢など、するだけ無駄と分かって頂けましたか」
映栄杉蔵之介「・・・・・・いいや、太郎丸よ、我慢は・・・・・・無駄ではない!!」
映栄杉太郎丸「往生際が悪うございますよ」
映栄杉蔵之介「最後まで我慢出来た者だけが・・・『整う』のでござる・・・・・・」
映栄杉太郎丸「・・・・・・」
映栄杉蔵之介「期は満ちた!! 一気呵成に、水風呂へ!!」

〇浴場
映栄杉蔵之介「ああ〜〜っ・・・ふわぁ〜〜っ・・・」
映栄杉太郎丸「ひぃッ!? 冷たいッ!!?」
映栄杉蔵之介「気持ち〜〜〜〜っ・・・・・・」

〇露天風呂
映栄杉蔵之介「サウナはこの外気浴が格別でござるなぁ」
映栄杉太郎丸「ガクガクブルブル」
映栄杉蔵之介「フフフ・・・。途中で半端に体を冷ましたお主はやはり『整わなかった』か」
映栄杉太郎丸「さ、寒うございます・・・。父上は?」
映栄杉蔵之介「拙者『整った』故に、むしろ気持ち良いのでござるよ」
映栄杉蔵之介「太郎丸よ、これで、この差を見れば分かったでござろう・・・我慢が大事だと」
映栄杉太郎丸「ガクガクブルブル」
映栄杉蔵之介「お主はしばし、湯に浸かり暖を取るが良い」
映栄杉太郎丸「そうさせて頂きます・・・」
映栄杉太郎丸「あれ? 父上は・・・どちらへ」
映栄杉蔵之介「フフフ・・・知れたことよ」
映栄杉蔵之介「このサウナをあと2セット」
映栄杉蔵之介「ここからがもっと気持ちのいい『整う』なんでござるよ」
映栄杉太郎丸「父上のアレは我慢強いのではなく・・・」
映栄杉太郎丸「『整う』快感を我慢出来ないだけなのではなかろうか?」

次のエピソード:お侍と退職代行業者

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