チャプター03:表現の自由戦士(脚本)
〇大きい研究所
セツルメント・イーサンモーサン
地球連合軍駐屯地
兼・独立風紀維持部隊”メデューサ”拠点
〇豪華な社長室
メナース・ニルド「・・・それで、連中が地球に向けて”何か”を射出していた事が今わかったと?」
メナース・ニルド中将(45)
独立風紀維持組織メデューサ総司令官
メナース・ニルド「何か、とは何を射出していたの」
ステンノ・クイーン「何かまではわかりません。しかしコンテナの軌道は既に割り出しております。膠着の場所も・・・」
メナース・ニルド「では、早急に部隊を動かして連中の目論見を叩き潰すのです」
メナース・ニルド「誰かしら?」
クロウズ・ニーン「失礼します」
ステンノ・クイーン「あらイケメン」
メナース・ニルド「あなたはたしか・・・」
クロウズ・ニーン「セツルメント”モーリアー2” 駐留中隊隊長、クロウズ・ニーン中佐です」
クロウズ・ニーン中佐(25)
地球連合正規軍
モーリアー2駐留軍隊長
メナース・ニルド「その駐留軍隊長が一体何用で?」
クロウズ・ニーン「あなた方が戦闘を行った宙域は、モーリアー2の・・・コロニーのすぐ近くです」
クロウズ・ニーン「SMの武器の射程圏内です!!もしコロニーに穴でも空いたら・・・!!」
メナース・ニルド「ふんっ!!」
クロウズ・ニーン「!!!!」
メナース・ニルド「一般将校は黙っていろ!!これは、メデューサの任務である!! 貴様らとはやり方が違う!!」
クロウズ・ニーン「そんな事、民間人を巻き込んでいい理由にはならんでしょう!? 第一あの戦闘で、セツルメント公社の作業員が一名・・・」
メデューサ兵「しつこいぞオスブタがァ!!!!」
クロウズ・ニーン「ぎっ・・・」
メデューサ兵「しつこい男は嫌いなんだよあたしゃあ!!!! 一々あたし等に口答えすんなァ!!!!」
ステンノ・クイーン「おぉ、激しい激しい・・・」
メナース・ニルド「でも、痛めつけられるイケメンというのも乙なものでしょう?」
ステンノ・クイーン「そこは同意しましょう殿下、尊いですな」
メナース・ニルド「ふふふ・・・」
〇塔のある都市外観
───古くより、情勢が安定した国家や組織は、次は自分達をよく見せようと美徳に向かいます。
多くの国が力を失い、証券という手段で実質的な世界の支配者となったキングダムカード社も例外ではありませんでした。
それがキングダムカードの会長
ルドルフ・ダッセンブルグの画家げる
”ジャスティスライツ”
道徳的な正義に則り、人間として正しい行いをせよという一見すると正しく見える思想です。
しかしそれは、いわゆる先進国の正義・・・そんな事をする余裕のはない貧困層を弾圧し、彼らを正しく見せるだけの物でした。
〇本屋
そしてこれも過去の歴史と同じく、真っ先に狙われたのは漫画やアニメ・・・その中でも男性向けを中心とした美少女もの等でした。
よく言えば好きなように、悪く言えば生の欲望に忠実に作られたサブカル文化は、彼等の振りかざす”正義”のいい的だったのです。
キングダムカードは、自分達の基準とする”正しさ”に従わない様々な男性向けサブカルメディアに対して──
カードによる取引を停止するという形で弾圧を加えました。これにより多くの出版社が男性向けからの撤退を余儀なくされました。
一方でアイドルや乙女ゲー、BLのような女性向けはまったくのお咎め無しだったんです。これも先の歴史と同じです。
こうして名実ともに表現の自由は死に、以後この出来事は
”キングダムカードの大粛清”と呼ばれるようになります。
〇塔のある都市外観
そして・・・国家や企業を集めた世界平和会議が迫る中、ある組織が地球連合内に設立しました。
思想家にして軍人のメナース・ニルドによって率いられる
独立風紀維持組織”メデューサ”。
連合軍内に設立されたその組織は女性を中心として形成され、軍内の男尊女卑への対策で様々な特権が与えられました。
してその目的は、売春やセクハラといった道徳的正義に反するものへの糾弾と排除で、女性を中心としているのもそのためでした。
しかし・・・その実態は、彼女らの主観による不愉快なものへの弾圧に過ぎず、ただの人間狩りの部隊でした。
元々偏った思想の集団に特権と武力が与えられた結果、数え切れない悲劇が起きました。
同人即売会を行ったコロニーに攻撃をしかけるなんて事もありました。結果、正義と人権の名の下に──
──数え切れない血が流れるも、それらは”キモいから”と、弔いもされず散っていたのです。
〇宇宙ステーション
しかし・・・こちら側もただやられるだけではありません。
キングダムカードの勢力圏外の国家や、表現規制を憂いだ人々が、新しい経済連盟が作ろうと極秘裏に立ち上がったのです。
それこそが、反政府組織として今盛大にネガキャンされている・・・・・
〇倉庫の搬入口(トラック無し)
ユウ・シマカゼ「・・・・君の所属する”表現の自由戦士”と」
セレスティナ・ベガ「はい♪」
社員「自由のレジスタンスってわけですか、かっこいいじゃないか!!」
ユウ・シマカゼ「バカな事言うなよ!!聞こえのいい事言ってもただのテロリストだろーが!!」
ガミジン・ルーズ「じゃあどうします若?この子をメデューサに突き出しますか?」
ユウ・シマカゼ「それは・・・」
ガミジン・ルーズ「俺達がどういう人種か、そしてメデューサが容赦がない事はニュースで知ってるでしょう?」
ガミジン・ルーズ「・・・殺されますよ、俺達」
ユウ・シマカゼ「・・・・・・」
ガミジン・ルーズ「それに、俺達としても表現の自由戦士に背く事はできないのは若も知ってるでしょう?」
社員「キングダムカードの大粛清で、大勢のオタクやクリエイターが職を失った・・・」
社員「そんなオタク達が、職を得て社会復帰するための手伝いをしてくれた組織が、今の表現の自由戦士の母体になりました」
ガミジン・ルーズ「まあ結果俺達はこんなゲットーみたいな所に押し込まれてるワケだけどな、ははは!」
ユウ・シマカゼ「・・・・・・」
ユウ・シマカゼ「・・・とりあえず、ベガさんはどうしたいんです?」
セレスティナ・ベガ「この機体と、あるものを私達の仲間に届けなくてはならなくて・・・」
セレスティナ・ベガ「運び屋さんに連絡がついたらすぐ出ていきます!それまで、どうか・・・」
ユウ・シマカゼ「・・・・・・・・・」
ユウ・シマカゼ「・・・しょうがないか」
セレスティナ・ベガ「!!」
ユウ・シマカゼ「ただし、絶対誰にも見つからないよう頼むよ?」
社員「流石は若!!話がわかる!!」
ガミジン・ルーズ「そうこなくっちゃ!!ははは!!」
ユウ・シマカゼ「・・・・・・」
ユウ・シマカゼ(てめえらが彼女のパイオツに釣られたのはわかってるからな、くそが)
セレスティナ・ベガ「ありがとうございます!島風サルベージのみなさん!!」
セレスティナ・ベガ「これからしばらく、お世話になります♪」
こうして、野郎の集団の中に美少女一人という嫌な予感しかしない共同生活が幕を開けたのである・・・