9 直樹の巣立ち(脚本)
〇通学路
藤原直樹「はぁ・・・はぁ・・・まだ、いてくれてるかな・・・」
藤原直樹「今の時間帯なら・・・」
スマホ「はい、こちらドキワミ大学です・・・」
藤原直樹「良かった!まだ誰かいた!あの、僕は昔ドキワミ大学に通ってました、藤原直樹と言います!」
スマホ「え?ドキワミの卒業生の方ですか?本日はどの様なご要件で?」
藤原直樹「はい!どうしても話したい人がいるんです!あの、秋本博教授はいらっしゃいますか!?」
スマホ「秋本教授ですね?分かりました、少々お待ち下さい・・・」
屋台を出た僕はドキワミ大学に電話を入れた。幸いまだ誰かいてくれて、僕は秋本教授にコンタクトを試みた。
スマホ「もしもし?秋本です・・・藤原君と聞きましたが・・・」
藤原直樹「あぁ!秋本教授!お久し振りです!僕の事覚えてますか!?藤原直樹です!」
スマホ「えぇ!?本当にあの藤原君かい!?久し振りだね!でも急にどうしたんだい!?」
藤原直樹「はい!実は、秋本教授にどうしてもお願いしたい事があって・・・」
スマホ「お願い?何だい?」
藤原直樹「秋本教授、僕を、僕を弟子にして下さい!」
スマホ「え?どう言う事だい?」
藤原直樹「こんな事頼めるのは秋本教授以外に思い付かないんです!僕、どうしても研究職がやりたいんです!!」
スマホ「ふ、藤原君!先ずは落ち着いて!一体何があったんだい?どうして急に・・・」
藤原直樹「わ、分かりました!これまでの事全て話します!僕、大学を卒業してから・・・」
僕は大学を卒業してからの事を全て話した。高学歴に現を抜かし過ぎて、仕事が上手くできなかった事。本当に自分がどうしたいか
分かった事。今の自分がどんな気持ちなのか、全て打ち明けた。
スマホ「・・・そうか・・・色々と自分を間違えてしまってたんだね・・・だから自分で自分をやり直したいと・・・」
藤原直樹「はい・・・今僕に頼れる人は、秋本教授しかいなくて・・・だから!お金とかは何とかしますから・・・」
スマホ「藤原君、君の言いたい事は良く分かった・・・君の気持ちが本物なのもね・・・でも、今の仕事はどうするんだい?」
藤原直樹「辞めます!どんな事をしてでも!」
スマホ「・・・分かった・・・俺は待ってるから、親御さん達とも良く話し合って・・・」
藤原直樹「・・・!!弟子にしてくれるんですか!?」
スマホ「あぁ、待ってるぞ・・・」
藤原直樹「・・・!ありがとうございます・・・ありがとうございます!!」
〇おしゃれなリビングダイニング
藤原直樹「父さん!母さん!」
藤原父「おぉ!お帰り直樹!」
藤原母「どうしたの直樹?切羽詰まった顔してるけど、何かあったの?」
藤原直樹「・・・父さん、母さん、良く聞いて!僕、夏目カンパニーを退職して、研究家になりたいと思う!」
藤原父「ん?直樹・・・お前今何て言った??」
藤原直樹「だから・・・僕は夏目カンパニーを辞めて、研究家になるって!」
藤原母「はぁ!?あなた自分が何言ってるか分かってるの!?」
藤原直樹「分かってるか言ってるんだ!僕が本当にやりたい事、やっと分かったんだ!今の仕事を続けても、僕は何も変わらないって!!」
藤原父「ふ、ふざけるな!!折角入った一流企業だぞ!!お前はこれから出世して、社長になって安泰した人生を送るんだぞ!!」
藤原父「ここでそれを諦めさせたら、何の為にお前に勉強させたか分からなくなるだろ!!」
藤原直樹「父さん、母さん、僕はもう充分二人の為に頑張ったと思ってる・・・このままやっても僕は変われない・・・」
藤原直樹「だから、僕は何が何でも研究家になる!それが僕のやりたい事だから!!」
藤原母「私達の気持ちを無視して自分のやりたい事をやるだなんて、何て親不孝な息子なの!!?私達の努力を無下にするだなんて・・・」
藤原母「夏目カンパニーを辞めるなら、今直ぐ出て行きなさい!!一流じゃ無い直樹なんて、私達の息子じゃ無いわ!!」
藤原直樹「そっか・・・でも良かった・・・これで僕は、やりたい事をやりに行けるよ・・・」
藤原直樹「父さん、母さん、僕の事高学歴にしてくれた事だけは感謝するよ・・・でも、僕の人生は僕が決める・・・」
藤原直樹「今日会った人が僕にそれを教えてくれたから・・・」
こうして、僕は父さんと母さんと絶縁して家を出て行き、夏目カンパニーを退職して秋本教授の弟子になりに行った。
正直家族に捨てられる事は凄く不安だったが、今の僕には、何の迷いもなかった。今まで親に支配されてた人生だったけど、
ここからの道は、僕自身が作って行く事になるのだった。