人知れずの花(脚本)
〇桜並木
桜、それは春の訪れを感じさせるものでもあり、時に出会いと別れを思わせる花でもある。
また桜で有名なものとして代表的なのは「ソメイヨシノ」
「ソメイヨシノ」は日本固有の桜であり、平安時代から受け継がれたものである。
〇桜並木
またその一方で、知られざる桜がいる。
その名は「チヲビザクラ」
いつ日本に来たのか、何故そう名付けられたのか。
詳細は未だ不明である。
〇桜の見える丘
優奈「うわぁ、キレイな桜。 やっぱ、桜見るとテンション上がるね」
裕介「そうだな」
裕介「けど、さすがに週末だけあって人多いな。 どこも空いてねーし」
優奈「ほぉんと。 こうなるんだったら、早目に場所取りしとけばよかったね」
同じ大学に通う優奈と裕介は、サークル仲間。
今日はサークル仲間と数名で花見をする為、桜で有名なとある場所に来ていた。
理花「お~い、二人共。 いい場所見つかった?」
少し遅れて、同じサークル仲間の理花と敬太が両手にお菓子やお弁当、おつまみや飲み物が入った袋をぶら下げやって来た。
優奈「ダメ。どっこも空いてない」
優奈は残念そうに答える。
理花「やっぱ無理かぁ」
優奈「どうする? ここは諦めて、どこか別の場所探す?」
裕介「探すって言ったって、もう昼だしどこも多いんじゃねぇか?」
理花「そうだよ。せっかく桜で有名な場所に来てるんだよ? この際、桜から離れた場所でもいいから、ここで食べようよ」
三人は黙った。
敬太「わりぃ。 俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」
敬太はそう言い残し、三人の元を去る。
優奈「まぁ、理花がそういうなら別にいいけど。 裕介もそれでいい?」
裕介「俺は別に構わないよ」
三人は諦めて、桜から離れた場所で花見をすることにした。
すると
「お~い。 あっちに空いてる場所あったぜ」
トイレを終えた敬太が三人に手を振り、声を張り上げる。
裕介「ほんとかよ」
優奈「とりあえず、急ぎましょ」
三人は、敬太の元へと急いだ。
〇古びた神社
理花「敬太~、アンタでかしたわねぇ。 サークルでは、ぜっんぜん役に立たないくせにぃ」
敬太「だろ?たまたま散策してたらさ、見つけたんだよ」
四人は、古びた神社の前を通り過ぎる。
優奈「にしても、古びた神社もあって、ちょっと不気味だね」
優奈は、少し不安がっていた。
裕介「だな。ちょっと気味悪いよな。 ほんとにあんのかよ・・・」
敬太「大丈夫だってぇ。 俺がこの目でちゃんと見たんだからぁ」
理花「そうよ。こんな時ぐらい敬太のこと信じてあげようよ」
敬太「おいおい、こんな時ぐらいは余計じゃね?ひでーよな、俺は理花の彼氏なのにさ」
理花「ごめんごめん。悪かったよ、敬太~」
敬太「ったく、ほんとに反省してんのかよ」
理花「はいはい、反省してますよぉ」
優奈「ねぇ、敬太が言ってた場所ってあそこ?」
〇神社の石段
優奈は石段から下を見下ろす。
敬太「あぁ、ここだよ。 どうだ?いい場所だろ?」
敬太はドヤ顔で、三人の様子を伺った。
裕介「まっ、敬太にしては上出来なんじゃないか?」
優奈「確かに」
優奈「けど、何で誰もここの存在に気付かなったんだろ」
理花「古びた神社もあったから、気味悪がって誰も来なかったんじゃない? さっ、敬太が見つけた場所で花見しよ?」
優奈「そうね」
敬太「じゃあ、俺一足先に場所取りしてくるわ」
敬太は三人を残し、先に石段を下りて行く。
理花「場所取りって、誰もいないのにねぇ」
三人は笑い、石段を後にした。
〇黒背景
理花「敬太、お待たせ~。 どう?いい場所見つかったぁ?」
理花は嫌味ったらしく、敬太に話し掛ける。
だが、敬太は理花の声に気付かず、その場に突っ立っていた。
理花「敬太?どしたの?」
理花は敬太の様子が気になり、顔を覗きこんだ。敬太の顔は、さっきまでの明るい表情とは違い、青ざめている。
敬太「なっ、何だよ。これ・・・ 何か不気味じゃね?」
三人は、敬太の視線の先に目を向けた。
〇桜並木
そこには、薄ピンクの色を付けた
「ソメイヨシノ」とは違い
真っ赤に色を付けた「チヲビザクラ」が
四人を待ち構えていた。