猫が決して死なない物語

資源三世

後編(脚本)

猫が決して死なない物語

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〇立派な洋館
  研究所を出たドジソンは女の子に捕まってしまいます
  抱っこの仕方は不慣れでしたが、悪気がないのはわかります。ドジソンは女の子が家臣になりたいのではないかと思いました
  ドジソンは家臣は自分で選びたい派です。本来なら断るつもりでしたが
  女の子が強引なのと、子供相手だと、ちょっと断りづらかったため、ドジソンはそのまま、女の子の家に連れていかれました

〇古い洋館
  ドジソンはとても広くて、大きな家にやってきました
  ドジソンは、こんなに大きな家なら、自分の気に入る家臣もいるのでは? と期待します

〇豪華なベッドルーム
  けれど、その家には人はあまりいませんでした
  女の子と両親、女の子のお世話係の4人だけです
  ドジソンは大きい家には、人がたくさんいて、家来もより取り見取りと思っていたため、少し落胆しました
  だからといって、そこは悪い場所でもありませんでした
  女の子は美味しいご飯をくれるし、トイレも綺麗にしてくれます。下手ですが、ブラシをかけて、毛並みも整えてくれます
  女の子がやたら抱きついてくるのが、ちょっと面倒くさいくらいです

〇古い洋館
  外は風が冷たくなってきて、夜は凍えるような寒さです
  ドジソンは外が温かくなるまで、この家にいてあげることにしました

〇古い洋館
  ドジソンが女の子の家に来てから、数日後──

〇屋敷の書斎
  ドジソンは女の子の愛情表現に疲れて、書斎に避難しました
  書斎では、父親がWEB会議で喧嘩をしていました
  父親は、あの研究所を支援する会社の役員で、先日、急に研究所の責任者に任命されました
  研究所はゾンビで溢れています。元々の責任者が事故に気付き、父親に責任をなすりつけたのです
  父親は研究のことすら知らないのに、責任を取らされそうになったので、喧嘩をしていたのです
  会議は一触即発のにらみ合いが続いていました
  ただならぬ緊張感で父親がじっとWEBカメラを見ているので、ドジソンはとても気になりました
  ドジソンはカメラをのぞき込みます
  WEB会議に急に映りこんだ猫の姿に、一同はほっこりして、会議は中断してしまいました

〇開けた交差点
  研究所の対応が遅れて、ゾンビは街にあふれてしまいました
  元の責任者はゾンビになりました

〇地球
  ゾンビウイルスは瞬く間に世界中に広がり、パンデミックになりました
  物資の流通は滞り、交通は規制され、外に出るのも一苦労です。ネット上にはデマが氾濫しました
  その混乱に乗じ、ウイルスの発生源を倒すという大義名分を掲げて、ドジソンのいる国を侵略しようとする国まで現れました

〇屋敷の書斎
  世界は更なる緊張に包まれましたが、ドジソンはそんなことよりも、女の子に抱き着かれるほうに困っていました
  今日も父親の部屋に避難します
  父親はメールを書きかけで、席を外していました
  ドジソンはこれは好機と思いました
  ドジソンは、ずっとキーボードの上を歩きたかったのです
  あの何とも言えない凹凸の上を歩いたら、どんなに気持ちいいのだろう。ドジソンの好奇心は抑えられません
  ドジソンはカチカチと音を鳴らしながら、キーボードの上を歩きます
  書きかけのメールに変な文字列が追加されて、送信してしまいました

〇秘密基地のモニタールーム
  そのメールを傍受した敵国は大変、驚きました
  その変な文字列は、敵国が味方に送ろうとしていた攻撃作戦の暗号と同じだったのです
  情報が漏洩していると勘違いした敵国は、作戦を取りやめ、戦争は回避されました
  敵国は、身内に作戦情報を流したスパイがいると疑心暗鬼に陥り、内ゲバで自滅しました

〇地球
  ウイルスや冷戦の緊張、度重なる事態に世界はどんどんと疲弊していました
  こうして人類が弱った好機を逃すわけもありません

〇UFOの飛ぶ空
  宇宙人が攻めてきました

〇開けた交差点
  宇宙人の科学力は凄まじく、人間達は抵抗も虚しく、次々とアブダクションされてゆきます
  ドジソンはチェシャ猫なので、透明化と瞬間移動を駆使して、宇宙人から逃げます
  しかし、ドジソンは、ドジソンを連れて逃げようとした女の子に捕まってしまいます
  ドジソンは女の子と共に、宇宙人に捕まってしまいました

〇宇宙船の部屋
  UFOの中で人々は、いつキャトられるのかという不安に怯えていました
  二人組の宇宙人がやってくると、未知の言語で何かを話し合います
  誰からキャトルミューティレーションしようか話し合っているのでは?
  誰かが漏らしたその一言で、捕まった人たちはパニックになりました
  とはいえ、UFOの中に逃げ道などありません
  ある男は、自分だけは助けてくれと、近くにいた女の子とドジソンを宇宙人に差し出しました
  男の声がうるさかったので、宇宙人は男をキャとりました
  女の子とドジソンは無事でした
  それから数日の間、宇宙人は人間達を次々とキャとってゆきました。騒いでも、抵抗しても、キャとられる順番が早く来るだけです
  もう、誰も騒ぎません。静かに自分の番を待つだけでした
  ドジソンはご飯が貰えず、イライラしていました
  そして、ついに女の子とドジソンの番が来てしまいました
  宇宙人は女の子からドジソンを引き離します
  そのときの掴み方は乱暴で、イライラしていたドジソンは怒って宇宙人を引っかきました
  宇宙人は死にました
  宇宙人は猫ひっかき病に対して免疫がなく、死に至る病だったのです
  宇宙人は猫を脅威と見なし、猫達の殲滅にかかりました
  しかし、既に猫達から、菌を媒介するノミがUFOの中に溢れていたのです
  宇宙人は全滅しました

〇地球
  猫と人間達は、地球へ帰還しました

〇荒廃した街
  地球に戻っても宇宙人の侵攻で受けた被害は大きく残っています。またたくさんの人がキャとられました
  女の子はこの惨状を悲しみました
  ドジソンは女の子を元気づけようと、宇宙人からとったボールを転がして、遊びに誘います
  でも女の子は泣き止んでくれません
  すると、別れたヤーコプ、ヴィルヘルムもボールを転がしてきました
  ハンスもボールを転がしてきました
  ペローもボールを転がしてきました
  彼らも家臣を元気づけようとしていたようです
  ボールが七つ揃うと、突然、不思議な光に包まれます

〇空
  空には、著作権的に問題のある龍が現れました
  なんと、猫達が持ってきたのは、あの有名なボールだったのです
  龍は例によって、どんな願いも一つだけ叶えると言います

〇荒廃した街
  ドジソンは自分の願い事を思い出します
  それは理想の家臣を見つけること──
  けれど、ドジソンは世界を元に戻すことをお願いしました
  ドジソンにとって、女の子は理想の家臣ではありませんでした。お世話は下手だし、すぐ抱きつくし、気苦労が絶えません
  それでも、ドジソンにとっては、理想の家臣よりも、ずっとかけがえのない存在になっていたのです

〇開けた交差点
  龍の力で世界は修復され、キャとられた人間達も甦りました
  猫達は、それぞれの家臣と共に、平和に暮らしました
  悪人達は、ドジソンが人間として認識していなかったので生き返れませんでした
  おしまい

次のエピソード:おまけ ~原案Ver~

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