ミチトの想空〜オモフソラ〜

ふじのきぃ

第二話 鹿と刺客(脚本)

ミチトの想空〜オモフソラ〜

ふじのきぃ

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〇空
  拝啓──
  母さん、お元気でしょうか。
  俺は──元気ですが、
  人生を踏み外してしまいました。
  ええ。それはもう、文字通りに──

〇けもの道
ミチト?(人間として生活する事が 出来なくなりました・・・)
ミチト?「もう俺は一生このままなんだろうな。 母さん、親不孝でごめんなさい」
クゥ「そんなに泣かないでほしいのです。 ちゃんと元に戻れるのですから」
ミチト?「今すぐ戻せ!」
ミチト?「とにカク戻せ!」
ミチト?「シカらば戻せ!」
クゥ「は、鼻息がくすぐったいのです」
ミチト?「つか、なんでシカなんだよ! 俺にシカ要素なんてあったか?」
クゥ「では、それについて説明するのです」

〇黒
クゥ「従属光線(スレイヴ・レイ)を 行使した理由は、対話以外にもあるのです」
クゥ「それは、従属人間(スレイヴァー)の 可能性を見つけ、戦う力を与える為です」
クゥ「でも力を与えるには ミチトさんの情報を知る必要があったので、 貴方の精神に干渉したという訳なのです」
クゥ「その時──初めて認識した、 貴方の言葉の意味をクゥなりに模索し、 答えを導き出したのです」

〇けもの道
クゥ「『かく』は"角"、 『しか』は"鹿"・・・」
クゥ「つまり──先程(第一話で)クゥが言った、 "立派なツノが生えたシカさん"を イメージして変身させたという訳なのです」
ミチト?「ダジャレかよ!」
ミチト?「あと、戦う力って言ったよな? そりゃどういう事だよ?」
クゥ「おっと、肝心な事を忘れていたのです。 それは──」
???「こんな遅くに、しかもこんな山奥で 生徒がうろついているなんて」
???「これは生徒指導どころか、 補導の対象になりかねないかな?」
???「なあんて、冗談ですよ。 クーネルア様、お迎えに参りました」
クゥ「・・・誰なのです?」
ミチト?「アイツは──ウマヅラハギ!?」
ウマヅラ「誰がウマヅラハギだ! 僕は馬津楽 萩雄(うまづら はぎお)。 風紀委員長であり、生徒会長だ!」
ウマヅラ「ん? その声──聞き覚えがあるぞ?」
ウマヅラ「まさか、内優 深智人か? 宇宙人存在否定論で騒がせているキミか!」
クゥ「ミチトさんのお知り合い──なのです?」
ミチト?「知り合い──というか、同じ学園の生徒だな」
ミチト?(やべ、本物の風紀委員来ちゃったわ・・・)
ウマヅラ「ははは、そうか。 その姿──ついに宇宙人を認めたのだな?」
ウマヅラ「良い心掛けだ! シハイント様もさぞ喜ばれるだろう」
ミチト?「いや認めてねえし」
クゥ「・・・! 兄さんの事を知っているのです!?」
ウマヅラ「ええ。 僕は貴方のお兄様の忠実な下僕ですから」
ウマヅラ「貴方のお噂もお聞きしております。 クーネルア様」
ウマヅラ「妹様を大層、可愛がられておられたそうで。 美しい兄妹愛をひしひしと感じております」
クゥ「イノッチの事まで・・・!」
ウマヅラ「さあ、お兄様がお待ちかねです。 募る話もありますでしょうし、 僕と一緒に来て頂きますよ?」
ウマヅラ「そこに居るシカ君もついでにね?」
ミチト?「俺は『ついで』かよ!」
クゥ「貴方達は、 兄さんは一体何を企んでいるのです?」
ウマヅラ「・・・あの方は素晴らしい思想をお持ちだ」

〇幻想空間
ウマヅラ「シハイント様は、我々の文明とは 比較出来ない程の超高度な文明の星から おいでなさったのだ」
ウマヅラ「我々地球人を救い、お導きなさる為に・・・」

〇大きい研究所
ウマヅラ「現在もなお、かの有名な宇宙管理局OSAの最高責任者として、この学園に多大な援助をお与え下さっておられるのだ!」
ウマヅラ「もはやOSAは、人類にとって 必要不可欠な組織といっても過言ではない!」

〇けもの道
ウマヅラ「宇宙をエネルギーに変え、 我々の暮らしを豊かにする──」
ウマヅラ「それがシハイント様の理念であり、 我々地球人が目指す理想だ」
ウマヅラ「だから湖澄区学園は、 期待に応えなければならないんだよ。 内優 深智人くん」
ウマヅラ「その為だったら、 宇宙人だって信じなくちゃダメだよ?」
ウマヅラ「こんな風に──」
ウマヅラ「従属変身(トランスレイヴ)──」
ホース・フェイス「──韋駄天のホース・フェイス!!」
クゥ「やはり、兄さんの従属人間・・・!」
ミチト?「あー・・・これは、うん。夢だ」
クゥ「・・・ミチトさん?」
ミチト?「ここまで来ると、流石に夢オチだろ?」
ミチト?「怪しい女の次は馬人間? 終いには俺自身がシカだと?」
ミチト?「はあ〜馬鹿馬鹿しい! 付き合ってらんねえわ。帰ろ」
クゥ「ど、どこに行くのです?」
ミチト?「夢から覚めるんだよ!」
ホース・フェイス「現実逃避か。 哀れだな、内優 深智人」
ミチト?「いや、その現実に向かっているのだが? 背中で語るなキザ野郎」
ホース・フェイス「そうだ。キミは僕の背後に居る。 だから哀れと言っているんだ」
ミチト?「言いてえ事何一つ解らねえですが?」
ホース・フェイス「そんなに解らないのならば、教えてやろう」
ホース・フェイス「これが現実だという事を──!」

〇炎
ホース・フェイス「僕の後ろに立った事を後悔するがいい」
ホース・フェイス「現実と向き合わない愚かな奴は──」
ホース・フェイス「ウマに蹴られて逝ってしまえ!」
「バック・トゥー・ザ・デンジャーッ!!  (後ろ足蹴り)」

〇パチパチ
ミチト?「良い子は(ブッ!) 馬の後ろに(ガハッ!) 立たないように(ゴペッ!?)」

〇空
  ミチトは星になっていく──

〇けもの道
クゥ「ミチトさーーーーん!!」
ホース・フェイス「さて、クーネルア様。 参りましょうか」
クゥ「イヤなのです・・・!」
ホース・フェイス「──やれやれ、困ったお方だ」

〇空
  一方、遥か上空では──
ミチト?「痛え・・・ 痛えよ・・・ なんで夢じゃねえんだよぉ・・・」
???「──ミチトさん、聞こえるですか?」
ミチト?(ああ・・・お迎えの声が聞こえてくるぜ──)
クゥ「クゥです! 応答して下さいなのです!」
ミチト?「頭に響く! これもお前の仕業か!?」
クゥ「テレパシーで語りかけているのです。 それよりもクゥの話を聞いて欲しいのです」
クゥ「脚を下に向けて動かしてみて下さい」
ミチト?「そんな事して何の意味がある? どの道落っこちるだろうが!」
クゥ「大丈夫なのです! クゥの言う通りに動かしてみて下さい」

〇空
クゥ「地面を蹴るように、思い描いて・・・」
ミチト?「え・・・走ってる。空を──」
クゥ「そうなのです。 今のミチトさんは空を跳ぶシカさんなのです」
クゥ「空を駆け、躍び跳ね、滑空する・・・ それが貴方の従属人間能力なのです」
  不可思議な光景と感カクだった。
  言われた通りに足を踏みしめると、
  まるでそこに地面が在るかのように
  跳躍する事が出来たのだ。
  バランスボールのように弾み、
  足先の大気が波紋の如く広がっていく。
ミチト?「ははっ、こりゃあ良いや!」
クゥ「その調子なのです♪」
ミチト?「鳥とか昆虫になった気分だぜ!」
  気が付けば夢中になっていた。
  解放感に満たされ、
  子供のように燥(はしゃ)ぎ回った。

〇宇宙空間
  手を伸ばせども、
  決して届かなかったものが・・・
  もう少しで掴める・・・
  そう思いながら、
  夢のような星空のフライトを堪能していた。

〇木の上
クゥ「・・・ ・・・・・・」
クゥ(──夢じゃないのです)
クゥ(ミチトさん。 貴方は素晴らしい目標をお持ちなのです)
クゥ(だからクゥは、応援したくなったのです)
ホース・フェイス「クーネルア様、探しましたぞ!」

〇森の中
ホース・フェイス「ブルルルル・・・!」
ホース・フェイス「もう、かくれんぼは終わりです」
ホース・フェイス「あまり手荒な真似はしたくありません。 お兄様にはウマく説明しておきますから、 そこから降りて来て下さい」

〇木の上
クゥ「むう。分かったのです」
クゥ「ミチトさん、 今から指定する場所に着陸して下さい」

〇空
ミチト?「・・・オーケー。 ふっ、もう至福の時間はお終いか」
ミチト?「このまま宇宙まで駆け上がりたかったが、 それはまたの機会にしよう」
ミチト?「ま、次があればの話だが」
ミチト?(だって、こんなのズルだし・・・)
  宇宙へは、真っ当な方法で行きたいから──

〇森の中
クゥ「みょん!」
ホース・フェイス(みょん・・・て。降り方可愛いかよ)
ホース・フェイス「やっと分かって頂きましたか。 では参りましょう」
クゥ「先に行ってて欲しいのです。 ミチトさんを呼び戻しますので」
ホース・フェイス「いいでしょう。 お兄様にも報告しておきますからね」
クゥ「──ミチトさん。 そのまま速度を上げて欲しいのです」

〇空
ミチト?「──え? 大丈夫なのか、この速度」
クゥ「大丈夫なのです!」
クゥ「貴方は今、滑空するシカさん・・・ つまり"カクーシカ"に変身中なので、 身体は頑丈に出来ているのです」
カクーシカ「カクーシカ・・・って、この姿の名前かよ!」
クゥ「なので無問題(モーマンタイ)なのです。 どんどんスピードアップするのです♪」
カクーシカ「いやいや流石にそれは──」

〇空
ミチト?「いやいやいや落ちてるって!! カク実に駄目なヤツだってこれは!!」

〇森の中
ホース・フェイス「ば?」
カクーシカ「どいてくれーーーーっ!!」
カクーシカ「──あれ、生きてる?」
クゥ「敵に背を向けるのは危険なのです」
カクーシカ「え? 状況が全く解らないのだが?」
クゥ「いえ、何でもないのです♪」
ウマヅラ「何でもなくなーーい!!」
ウマヅラ「イテテ・・・背中は痛いし、 変身も解けてしまったし、最悪だよ」
カクーシカ「むしろ背中痛いだけで済んでやがる・・・」
クゥ「でも変身は解けているので、 戦う力は残ってないはずなのです」
ウマヅラ「ええ。 今の僕に勝ち目はありません」
ウマヅラ「クーネルア様。 これは宣戦布告として受け止めますからね?」
ウマヅラ「コレを。 貴方にお渡ししておきます」
クゥ「こ、これは・・・!」
ウマヅラ「ゆめゆめ勝ったと思わない事です」
ウマヅラ「僕以外にも従属人間が居るし、 協力者だっていらっしゃるのですから」
ウマヅラ「果たして、シハイント様の所まで 辿り着く事が出来るかどうか・・・」
ウマヅラ「楽しみにしております。 ──それでは明日、学園で」
  ウマヅラハギオは去って行った・・・
クゥ「・・・行ってしまったのです」
カクーシカ「かー・・・ くー・・・」
クゥ(力を使い果たして眠っちゃったのですね)
クゥ(ミチトさん、お疲れ様なのです)
クゥ(ふふっ、寝顔がステキなのです♪)

〇木の上
クゥ(・・・・・・)
クゥ(緊急だったとは言え、 ミチトさんを巻き込んでしまいました)
クゥ(今後はもっと、貴方の力を 必要としてしまうかもしれないのです)

〇黒背景
クゥ(ミチトさんの学園は、 すでにシハイント兄さんの手の内・・・)
クゥ(兄さんは地球で何かを企てている・・・)
クゥ(胸騒ぎがするのです・・・)

〇一軒家
  翌朝──

〇一人部屋
ミチト「ぐー・・・ くか〜・・・」
声「ミチトさん。 朝ごはんが出来たのです」
声「ママさんが作った朝ごはんを食べて、 学園に行く準備をするです」
ミチト「ふが・・・? い、今行くから──」
ミチト(ん・・・今の声、誰だ?)

〇おしゃれなリビングダイニング
ミチト「くあ〜ぁ、母さん。 俺を起こしに来たのって母さんだよね?」
ミチトの母「ううん、ク〜ちゃんよ?」
ミチト「・・・"ク〜ちゃん"? だれ?」
ミチトの母「なに言ってるの。昨日、ホームステイの子が しばらくお世話になるって言ったじゃないの」
ミチト「・・・へ? ホームステイ!?」
クゥ「モイ♪ ミチトさん、おはようなのです」
ミチト「お前は・・・昨日の変態女!!」
クゥ「むう。 クゥはそんなヒドい名前じゃないのです」
ミチトの母「あらあら。ケンカはダメよ? 今日から一緒に学園に通うんだから、 仲良くしなきゃね?」
ミチト「がっ、学園にも通うのかコイツ!?」
ミチトの母「・・・ミチト、本当に大丈夫? 昨日の夜から体調が悪そうだったし」
ミチトの母「昨夜はク〜ちゃんが貴方を担いで、 家まで運んで来てくれたのよ? 彼女に感謝しなさいね」
クゥ「ミチトさんのママさん、大丈夫なのです。 クゥが責任持ってミチトさんを守るのです」
ミチトの母「まあ! ク〜ちゃんったら頼もしいわ! ミチトも尻に敷かれちゃって」
ミチトの母「ク〜ちゃんもミチトの事で困ったら、 遠慮なくミチトママに相談するのよ?」
クゥ「りょーかい、なのです♪」
ミチト(ゆ、夢じゃなかった・・・むしろ悪夢だ)

〇惑星
  ☆おまけクゥかん・その2☆
ウマヅラ「ははは、次回が楽しみだな!」
ミチト「もうひと眠りするか・・・くか〜」
クゥ「学園に遅れてしまうのです。 起きるです・・・!」
ホース・フェイス「ムシするなあーーっ!!」
「トゥー・ビィー・コンティニュード!! (次回へ続く)」

次のエピソード:第三話 鶴と亀の御土産

コメント

  • 馬と鹿 馬と鹿 馬と鹿w
    しかと見極めたぉ!(鹿だけに)

  • 馬の次は鹿……。
    つまりそういう事ですねw

  • 色々な駄洒落も混じっていたり面白い🤣
    カクーシカのネーミングセンス良き✨
    クゥちゃん可愛いですねー。
    馬と鹿の組み合わせは…!

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