第8話「勇気」(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
不良「ゆ、勇者だ!」
〇ビルの裏通り
我浜ユウト 「何を言ってるんだ?」
我浜ユウト 「俺なんかが、勇者のわけないだろ!」
不良「ひっ!」
クラスメイト「おい、ユウト!」
クラスメイト「何マジになってんだよ!」
クラスメイト「ビビらすだけで良いって言っただろ!」
我浜ユウト 「ちょっと力加減を間違えただけだ」
クラスメイト「まったく・・・次は依頼通りに頼むぜ」
〇渋谷のスクランブル交差点
大型ビジョン「魔王が再び封印されてから、1カ月が経ちました」
大型ビジョン「破壊された街の復興作業は、順調に進んでおり──」
我浜ユウト 「・・・フフッ、みんな俺と違って楽しそうだな」
戦いが終わった後、イツカさんは新たな勇者として世界から賞賛を受けた
しかし、持てはやされたのは、ほんのひと時
世界が日常を取り戻すにつれ──
話題に上がることすらなくなっていった
〇公園の入り口
我浜ユウト 「イツカさん──」
我浜ユウト 「千年後、誰もあなたのことを覚えてないかもしれませんね」
???「私は『勇者』だ!」
我浜ユウト 「なんだ、今の声は・・・?」
〇広い公園
女の子「私の友達をイジメるなんて、許さない!」
いじめっ子「友達? そんな奴、どこにいるんだ?」
女の子「どこって、後ろに──」
女の子「誰も・・・いない」
いじめっ子「あはは! 見捨てられたようだな!」
女の子「フフッ、ちょうどいい」
いじめっ子「は?」
女の子「守る手間が省けた!」
いじめっ子「変なヤツ・・・」
我浜ユウト「その辺にしとけよ」
我浜ユウト 「3対1は、さすがに卑怯だろ」
いじめっ子「誰だ、このおっさん!」
いじめっ子「関係ない奴は引っ込んで──」
我浜ユウト 「誰がおっさんだって?」
いじめっ子「ま、魔法!?」
いじめっ子「お前ら、逃げるぞ!」
女の子「正義は必ず勝つ!」
女の子「──って、あの時のお兄ちゃん!?」
我浜ユウト 「・・・あの時?」
〇渋谷のスクランブル交差点
──渋谷で助けた女の子か
〇広い公園
我浜ユウト 「勝てないケンカは、止めておいた方がいいぞ」
女の子「ちっちっち、勝てるかどうかは関係ないよ」
女の子「友達がイジメられてるのを、見過ごせないもん」
女の子「私は、あのお姉ちゃんみたいな『勇者』を目指してるからね」
我浜ユウト 「その友達は・・・君を盾に逃げたんだろ?」
我浜ユウト 「そんな奴を守る必要あるのかよ」
女の子「わわっ、お兄ちゃんってひねくれてるー!」
我浜ユウト 「なっ!」
女の子「誰だって怖いことから、逃げるのは仕方ない」
女の子「みんなが『勇気』を持ってるわけじゃないもん」
女の子「でも、今ごろ「ごめんなさい」って思ってるはずだよ」
女の子「次会った時、仲直りできたらいいな」
我浜ユウト (・・・見捨てられてひねくれた俺と、正反対だな)
女の子「ねぇ、私にも魔法が使えるかな?」
女の子「もっと強くなって、たくさんの人を守りたいんだ」
〇荒廃した街
結城イツカ「私の想いを、千年先までつないで──」
〇広い公園
我浜ユウト 「よし──」
我浜ユウト 「俺が魔法を教えてやるよ」
女の子「本当!?」
我浜ユウト 「ただし、ひとつ約束してほしい」
女の子「約束・・・?」
我浜ユウト 「君の持つその勇気と、俺の教える魔法」
我浜ユウト 「大きくなったら、それを誰かに引き継いでほしい」
我浜ユウト 「千年後、今度こそ魔王を倒せるように」
イツカさんの心と、俺の力を受け継いでいく
それが──今の俺にできることだ
女の子「やだ」
我浜ユウト 「ありがと──」
我浜ユウト 「えっ!?」
女の子「そんなのやだ」
我浜ユウト 「なんで嫌なんだよ!?」
女の子「千年先まで、引き継ぐ必要なんてないもん」
我浜ユウト 「いやいや!」
我浜ユウト 「千年後に魔王が復活した時、誰かが戦わないと──」
女の子「だいじょーぶ!」
女の子「私が強くなったら、魔王を即効で倒しにいくから」
我浜ユウト 「フッ」
我浜ユウト 「フフッ!」
女の子「お兄ちゃん、どうしたの??」
我浜ユウト 「──君の言う通りだ」
千年後に想いをたくすだって?
そんな綺麗事、まったく俺らしくない
幼い頃、誓ったはずだ
俺は自分のためだけに生きると
俺の勝手に──
〇空
世界を巻き込んでやる・・・!
〇ホール
WASO本部
岸川「WASO代表の岸川(きしかわ)です」
岸川「こうして魔王を再び封印できたのも、皆さんの尽力のおかげです」
岸川「特に、魔王と実際に戦った東京支局のメンバーには、多大な感謝を──」
〇舞台袖
リオナ局長「──ユウトさん」
リオナ局長「あなたがこんな式典に来るとは、意外でした」
我浜ユウト 「本部の偉い人たちが、褒賞をくれるんでしょ?」
我浜ユウト 「貰えるものは、貰っておこうと思いましてね」
我浜ユウト 「博士も同じでしょ?」
熊城博士「少年、よく分かってるじゃないか」
リオナ局長「そう・・・」
我浜ユウト 「それに、ちょっと言いたいこともあるんです」
リオナ局長「え」
岸川「──では、盛大な拍手でお迎えください」
岸川「イツカ君と共に、魔王封印に大きく貢献した、我浜ユウト君です」
〇ホール
岸川「君のおかげで、世界は再び平和になった」
岸川「本当に感謝するよ」
我浜ユウト 「いえ、それほどでも」
我浜ユウト 「この先──WASOはどうなるんですか?」
岸川「魔王封印という目的は、達成したからね」
岸川「直に解散することになるだろう」
我浜ユウト 「なるほど・・・目的は達成した、と」
我浜ユウト 「ですが、魔王は千年後に再び復活します」
我浜ユウト 「今から何か手を打たなくていいんですか?」
岸川「ハハッ、君は面白いことを言うね」
岸川「まだ千年もあるんだ」
岸川「今は平和を楽しみ、次の世代に考えてもらえばいい」
我浜ユウト 「何も分かってないんですね」
岸川「は?」
我浜ユウト 「あなた、夏休みの宿題を最終日にやってたタイプでしょ?」
我浜ユウト 「やるべきことを、ギリギリまでやらない」
岸川「なんだと・・・!」
我浜ユウト 「皆さんも同じですよね?」
我浜ユウト 「千年先の世界なんて、自分に関係ないと思ってる」
我浜ユウト 「人間の寿命は長くて100年」
我浜ユウト 「どうせ自分は死んでるんだから」
我浜ユウト 「でも──」
我浜ユウト 「無関係でないことは、少し想像すれば分かるはずだ!」
我浜ユウト 「そこは、皆さんの子供たちが生きる世界なんです」
我浜ユウト 「千年後に魔王が復活した時、また多くの人が亡くなるでしょう」
我浜ユウト 「それは、皆さんの子供たちかもしれない」
我浜ユウト 「そんな悲しい出来事を、この先永遠に繰り返すつもりですか?」
我浜ユウト 「たしかに、魔王が封印されたことで、世界は平和になった」
我浜ユウト 「でも、それは束の間のまやかしだ!」
我浜ユウト 「今やるべきことは、平和に酔いしれることじゃない」
我浜ユウト 「次も誰かが戦ってくれるだろうと、淡い期待をすることじゃない」
我浜ユウト 「強大な敵に立ち向かう『勇気』を出すことです!」
我浜ユウト 「1人では頼りない『勇気』でも、世界中から集めれば、きっと魔王を倒せる──」
我浜ユウト 「俺はそう信じています」
我浜ユウト 「だから、俺はこれからも戦い続けます」
我浜ユウト 「この星に生きる、勇者の1人として」
〇舞台袖
リオナ局長「ユウトさん・・・」
我浜ユウト 「なかなか心に響く演説だったでしょ?」
我浜ユウト 「まあ、全部嘘ですけど」
リオナ局長「えっ!? 嘘!?」
我浜ユウト 「俺は、イツカさんを救いたいだけですから」
我浜ユウト 「ただ、1人で戦っても勝ち目はない」
我浜ユウト 「ああいう綺麗事に触発される、バカな大人がいてくれたらいいんですけど」
熊城博士「──ククッ、バカな大人か」
我浜ユウト 「リオナさんと博士も、暇ならぜひ協力してください」
我浜ユウト 「連絡、お待ちしてますよ」
リオナ局長「とんでもなくひねくれた子ね」
リオナ局長「一体、どこまでが嘘なのやら・・・」
リオナ局長 「熊城君」
リオナ局長 「このまま研究を続けた場合、魔王を倒す兵器を開発するには何年かかるの?」
熊城博士「そうだな・・・100年以上かかるだろう」
熊城博士「その前に、私の寿命が来る」
熊城博士「つまり、研究は100%完成しないということだ」
リオナ局長 「じゃあ──」
リオナ局長 「もし世界中のお金と人材を、あなたが自由に扱えるとしたら?」
熊城博士「ほほう、まさに夢のような条件だな」
熊城博士「それなら──」
〇空
〇空
〇空
〇空
〇秘密基地の中枢
魔王再封印から、4年──
リオナ局長「まさか、こんなに早く準備が整うなんてね」
我浜ユウト 「リオナさんが、世界中から協力を取り付けてくれたおかげです」
リオナ局長「私は私にできることをしただけ」
リオナ局長「きっかけを作ったのは、あなたよ」
熊城博士「少年、最終調整が終わったぞ」
熊城博士「いつでも出撃可能だ」
我浜ユウト 「少年呼ばわりは止めてくださいと、前から言ってるじゃないですか」
熊城博士「ククッ、目的を果たした暁には止めてやろう」
我浜ユウト 「それじゃあ──」
我浜ユウト 「ちょっくら行ってきます!」
リオナ局長「この星の未来・・・再びあなたにたくすわ」
〇宇宙戦艦の甲板
我浜ユウト 「イツカさん、待っていてください」
〇仮想空間
ロール・プレイング・ギア 2ごうきを
そうび しますか?
▶はい
いいえ
〇宇宙戦艦の甲板
我浜ユウト「あなたとこの星の未来──」
我浜ユウト「今度こそ、俺が救ってみせます!」
ヴェンデルガルトとの戦いから一気読み!
完全無双のチート能力を持つ主人公ではない、力の差を知恵を使って倒すユウト達の応援せずにいられません💪
バトルシーンのスチルとエフェクトが使用者のやり方次第でアニメを見てる様で、篠也さんの応用力といいますか組み合わせる能力がいつ見ても素晴らしい!
イツカとの別れ、ユウトの苦悩、RPG2号機登場と覚める事ない展開にどっぷりハマっています☺️
いやー最高ですね‼
激アツ展開で感動です。
本当にタップのクオリティじゃないですね~‼
アニメを見ているようでした😃
何から何まで、作れる才能が羨ましいですね。
千年というタイムスパンの凄さや、ラスボスのデザインの面白さなど・・・感心しきりです。
良い物見せていただきました!!🤩
たまにご指導に私の拙作もチェックしてくださいm(_ _)m
完走賞よりも作品のクオリティーを下げたくないストイックさに敬礼と感謝です。
魔王を倒す準備が千年かからなくて良かった〜!
女の子の強気な言葉がユウトを突き動かす原動力になったのも良かったです。
そう、やるなら今でしょ!
もしかしたらRPGもグレードアップしたデザインになるとか?
それとも新しい兵器搭載とか…😍✨
ワクワクが止まりません!