姫様の推し事!

朝永ゆうり

閑話 幼い二人の思い出話(脚本)

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〇英国風の図書館
  これは、まだアルルが幼い頃
  ボヌール王国城で巻き起こった
  とあるお話──
ユーゴ(教育係)「――ですから ボヌール王国の者は 元より”見えざる者”が多く」
ユーゴ(教育係)「”見える者”は全員 騎士団に入ることが基本です」
アルル姫(幼少期)(ふあ~あ・・・)
ユーゴ(教育係)「ですが、ボヌールの騎士たちの中でも ”持つ者”はほんの一握り・・・」
ユーゴ(教育係)「なので、基本は武器で 急所をついて魔物を消滅させるのです」
アルル姫(幼少期)(眠い・・・)
ユーゴ(教育係)「ですが、 それだけでは守ることもままならない」
アルル姫(幼少期)(すやぁ・・・)
ユーゴ(教育係)「よって、ブレーヴ王国の 騎士たちが定期的に派遣され──」
ユーゴ(教育係)「――聞いているのですか、アルル姫!」
アルル姫(幼少期)「はっ!」
ユーゴ(教育係)「はぁ・・・」
アルル姫(幼少期)「だって、つまんないんだもん 騎士団とか、魔物とか、 ”見える”とか、”見えない”とか」
アルル姫(幼少期)「結局、習ったって 私なーんにも見えないもん」
ユーゴ(教育係)「ですが、貴女は一国の姫 教養として知っておかねば、後々 外交の場でも困ることになりますよ」
ユーゴ(教育係)「それに・・・ なんですかその言葉づかいは!」
ユーゴ(教育係)「何度も教えたでしょう もっと姫らしくしてください! 大体貴女は――・・・」
アルル姫(幼少期)(また出た! ガミガミ教育係・・・)
アルル姫(幼少期)(・・・そうだ!)
アルル姫(幼少期)「眠いのはきっと、この陽気のせいよ しゃきっとしたいから 冷たいお茶を持ってきてくださらない?」
ユーゴ(教育係)「まったく・・・仕方ないですね おとなしく待っててくださいよ」
アルル姫(幼少期)「はーい」
アルル姫(幼少期)(よしっ!)

〇木の上
アルル姫(幼少期)「窓から出たはいいけれど・・・ どうやって降りようかしら?」
アルル姫(幼少期)「思ったよりも高いし・・・」
アルル姫(幼少期)「あ!」
アルル姫(幼少期)「おーい、アレク~」

〇華やかな広場
アレク(幼少期)「ん? どこからか声が・・・」
アルル姫(幼少期)「上よ、上!」
アレク(幼少期)「上・・・?」
アレク(幼少期)「わ、お前なにやってんだよ!」
アルル姫(幼少期)「今から飛び降りるから~ ちゃんとキャッチしなさいよ~!」
アレク(幼少期)「飛び降りるって 本当何考えて──」
アレク(幼少期)「あわわわわわ・・・」
アレク(幼少期)「いってぇ・・・」
アルル姫(幼少期)「ふふ、バッチリね やっぱりアレクがいてくれると心強いわ」
アレク(幼少期)「お、おう・・・」
アレク(幼少期)「じゃなくて! アルル、また抜け出してきたのか」
アレク(幼少期)「ユーゴが お前が逃げ出さないようにって 部屋を二階に変えたのに・・・」
アルル姫(幼少期)「部屋が変わったのは そういうことだったのね!」
アルル姫(幼少期)「大体つまらないのよ! 見えない魔物の話なんて」
アレク(幼少期)「でも、魔物って怖いんだぜ?」
アルル姫(幼少期)「・・・まあ、そうよね」
アルル姫(幼少期)「あんな風にしてしまうんだもの みんなで住んでたあの村を・・・」
アレク(幼少期)「・・・悪い」
アルル姫(幼少期)「アレクに謝られるの、なんか嫌」
アレク(幼少期)「な! 俺はお前の──」
アルル姫(幼少期)「・・・」
アレク(幼少期)「・・・」
アレク(幼少期)「へーきだ、アルル! ブレーヴの騎士団は強いからな!」
アルル姫(幼少期)「何で 何にも見えないのに分かるの?」
アレク(幼少期)「あ、えっと・・・」
アレク(幼少期)「兄さんが言ってた」
アルル姫(幼少期)「お兄さん?」
アレク(幼少期)「うん 兄さんは騎士なんだけど」
アレク(幼少期)「ブレーヴの騎士団は強いって いつも話してくれるんだ!」
アレク(幼少期)「中には めちゃくちゃ強い人もいて──」
アルル姫(幼少期)「・・・」
アレク(幼少期)「アルル?」
アルル姫(幼少期)「誰が強いとか弱いとか 私、分からないもん」
アレク(幼少期)「見てれば分かるぜ! 火花が散ったり、大爆発を起こしたり──」
アレク(幼少期)「攻撃をガードしたり 雷を落としたり・・・」
アルル姫(幼少期)「へぇ・・・」
アレク(幼少期)「あー つまんないか?」
アルル姫(幼少期)「ううん ユーゴはそんなこと教えてくれないから とっても楽しい!」
アレク(幼少期)「そっか」
アレク(幼少期)「それでな、兄さん・・・の教えてくれた ブレーヴの騎士団長っていうのが とっても強いんだ!」
アルル姫(幼少期)「騎士団長?」
アレク(幼少期)「そう! 次々に魔物を倒すだけじゃなくて 騎士たちに指揮を出して 強い魔物も倒しちゃうし──」
アレク(幼少期)「それに、ピンチの仲間がいたら 絶対に見捨てず救い出す 俺の憧れなんだ!」
アルル姫(幼少期)「あははっ! ビビりのアレクには無理よ」
アレク(幼少期)「な・・・っ!」
アレク(幼少期)「俺だって 大切なものくらい自分で守れるから!」
アルル姫(幼少期)「大切なもの・・・」
アルル姫(幼少期)「じゃあ アレクのことは私が守ってあげる」
アレク(幼少期)「え・・・?」
アルル姫(幼少期)「ねえ、アレク! その、ガブリエル団長さんのお話 もっと聞かせてちょうだい?」
アレク(幼少期)「は?」
アルル姫(幼少期)「だってとってもかっこいいんだもの!」
アルル姫(幼少期)「アレクを守れさえすれば ガブリエル団長さんのお話 ずっと聞けるでしょ?」
アレク(幼少期)「あ・・・うん・・・」
ユーゴ(教育係)「アルル姫~」
ユーゴ(教育係)「もう、一体どこに行ったんだか ・・・あのじゃじゃ馬娘」
アルル姫(幼少期)「げ、マズい!」
アルル姫(幼少期)「じゃあね、アレク! 私のことユーゴに訊かれたら 『見てない』って言うのよ!」
アレク(幼少期)「ちょ、アルル・・・」
アレク(幼少期)「何なんだよ、もう・・・」
  それから
  夢中になってガブ様のことを
  調べ上げること数年──
  ――アルルはノアの描いた挿絵と
  運命的に出会うのだった。
アレク(幼少期)「俺、不憫すぎねー?」

次のエピソード:第十二話 仲間割れ

コメント

  • アレク!ちょっとアレクを応援したくなりますよね〜
    子供時代出されるとですね〜😂😂😂

    朝永さん、10話達成おめでとうございます㊗
    こういう楽しくて読みやすいお話で、自分の知らない事、今まで触れてこなかったものを少しだけ知ることが出来るのはとても嬉しいです

    読みに来るのが遅くなって&通知沢山になりすみません
    コメント共々推し活についてまた教えてくださいね💕

  • アレクー!!!!!😭✨
    まさかの!!こんなに長くアルル姫に想いを寄せていたなんて!!!!!✨アレクをめっちゃ応援したくなります!!ヤコブ隊長のアルル姫を魔王に渡す発言も気になるところですし、今後の展開がとても気になります!!✨
    一個一個丁寧にエピソードがあって、話が深く染み渡ってきますね✨面白いです✨😊

  • 不憫可愛いけど😂アレクくん……!
    本編の彼の今後に、何かいいことありますように!
    アルル姫はさもあらんな幼少期でしたw

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