〇学校の廊下
壱邑 一貴「本当に大丈夫か？」
中邑 ゆうり「大丈夫だって」
中邑 ゆうり「ちょっと痛いけど、このくらいなら ２〜３日で治ると思う」
壱邑 一貴「マジでごめん・・・」
中邑 ゆうり「いや、そもそもは私の不注意だし──」
壱邑 一貴「でも、俺が余計なこと言ったからだろ」
中邑 ゆうり「いっちー・・・」
中邑 ゆうり「あの・・・」
中邑 ゆうり「あのね──」
中邑 ゆうり「ごめんなさい!!」
壱邑 一貴「えーっと・・・」
壱邑 一貴「念のため聞くけど、その謝罪は 告白に対してのごめんなさいであってる？」
中邑 ゆうり「あってる」
壱邑 一貴「・・・はぁ〜」
壱邑 一貴「俺、返事はいらないって 言うつもりだったんだけどなぁ」
中邑 ゆうり「えっ!?」
中邑 ゆうり「うわっ、ごめん!!」
壱邑 一貴「何度も謝るなよ。 さすがにヘコむわ〜」
中邑 ゆうり「ごめ──」
中邑 ゆうり「えーっと・・・」
壱邑 一貴「・・・俺こそごめん」
壱邑 一貴「お前が仲村のこと 好きなのは分かってたけど」
壱邑 一貴「気持ちだけでも伝えたかったんだ」
壱邑 一貴「困らせて悪かったな」
中邑 ゆうり「いっち〜・・・!!」
壱邑 一貴「お前が泣きそうになってどうする」
中邑 ゆうり「あのね、さっき余計なことって 言ってたけど──」
中邑 ゆうり「ぜんぜん余計なことじゃないから！」
中邑 ゆうり「いっちーの気持ちに応えられないのに こんなこと言うのは勝手かもしれないけど」
中邑 ゆうり「嬉しかった。 ありがとう、いっちー」
壱邑 一貴「・・・ッ」
壱邑 一貴「それは、ずるくね？」
壱邑 一貴「あー！ もぉー!! ほらぁー!!」
壱邑 一貴「お前のせいだかんな!?」
中邑 ゆうり「サーセン」
中邑 ゆうり「ていうか、呪い！ どうやって解こう!?」
「・・・・・・」
壱邑 一貴「・・・もはや悟りを開くしか」
中邑 ゆうり「ほ、頬っぺならなんとか・・・」
中邑 ゆうり「あっ、変身状態の時でいいなら キスできるかも！」
中邑 ゆうり「根菜類はノーカン!!」
壱邑 一貴「追い討ちかけるのやめてもらえる？」
中邑 ゆうり「ごめん〜」
壱邑 一貴「俺のことは気にせず強く生きろよ・・・」
中邑 ゆうり「萎れないで〜!!」

〇大きな木のある校舎

〇ディベート会場（モニター無し）
宇多邑 苑江「──と、いう訳で」
宇多邑 苑江「ポンコツ魔王が足をくじいたので 殺陣を変更することになりました〜」
「ええ〜ッ!?」
中邑 ゆうり「ごめん〜!!」
壱邑 一貴「俺からもごめん!! 中邑がケガしたの俺のせいなんだ」
中邑 ゆうり「だから、いっちーのせいじゃないって」
演劇部員Ｅ「殺陣以外のシーンは大丈夫なんですか？」
中邑 ゆうり「それは大丈夫！」
宇多邑 苑江「本番が近いから念のためってだけで、 大幅に変えるつもりはないから安心して」
宇多邑 苑江「とりあえず、一番動きの大きい エリゼとルカードの殺陣を直しちゃおう」
宇多邑 苑江「ゆうりちゃん、 ゆっくりでいいから動ける？」
中邑 ゆうり「はい！」
宇多邑 苑江「仲村くんも木刀持ってこっち来て」
仲村 柊「はい」
宇多邑 苑江「『ヴィエリゼ、意志に反して魔法を放ったのち、剣を抜いてルカードに突進』」
中邑 ゆうり「大上段に構えて斬り掛かる」
仲村 柊「それを避けて左に切り上げ──」
中邑 ゆうり「受け止めて鍔迫り合い・・・」
中邑 ゆうり「・・・ッ」
中邑 ゆうり「わっ」
仲村 柊「ゆうり!?」
中邑 ゆうり「ごめん、足の踏ん張りきかなくて滑った」
仲村 柊「大丈夫か？」
宇多邑 苑江「今の良い!!」
「え？」
宇多邑 苑江「命を狙われてもなお 相手を気遣うルカード！」
宇多邑 苑江「カッコいい！」
仲村 柊「なら、打ち合いをなくして抱きとめられたエリゼが払いでルカードをさがらせます？」
宇多邑 苑江「ちょっとやってみて」
仲村 柊「じゃあ鍔迫り合いから」
中邑 ゆうり「せーの──」
仲村 柊「・・・・・・・・・」
中邑 ゆうり「・・・・・・・・・」
仲村 柊「早く滑れ！」
中邑 ゆうり「自然には難しい・・・よっ!!」
仲村 柊「痛っ・・・!?」
中邑 ゆうり「ごめん、勢いよすぎた!!」
「部長、無理です!!」
宇多邑 苑江「うん、エリゼが頭突きしたようにしか 見えないからやめとこう」
宇多邑 苑江「エリゼの手数を減らして、 その分ルカードの動きを派手にするか」
宇多邑 苑江「ちょっと考えるから、 他のシーン練習してて」
演劇部員Ｄ「仲村、俺らの殺陣も確認しようぜ」
仲村 柊「分かった」
壱邑 一貴「・・・大丈夫か？」
中邑 ゆうり「も～、そればっかり！ 心配しすぎだって！」
壱邑 一貴「いや、殺陣が変わって 悔しい思いしてないかなって」
中邑 ゆうり「そこまで考えてくれてたの？」
中邑 ゆうり「大丈夫！ 出番が減ったわけじゃないし」
中邑 ゆうり「むしろ、殺陣苦手だから 手数が減ってラッキー！」
壱邑 一貴「お前、結構どんくさいもんな」
中邑 ゆうり「どんくさいは失礼じゃない？」
壱邑 一貴「ははっ」
仲村 柊「・・・・・・」
演劇部員Ｄ「──隙あり！」
仲村 柊「いてっ」
演劇部員Ｄ「ルカード討ち取ったり～！」
演劇部員Ｄ「よそ見してるとケガするぞ」
仲村 柊「悪い」
演劇部員Ｄ「中邑が取られそうで心配してんの？」
仲村 柊「何だよそれ」
仲村 柊「別に、ゆうりは俺のじゃないし・・・」
演劇部員Ｄ「ふーん？ ま、いいけど」
演劇部員Ｄ「幼なじみ離れしないと彼女できねーぞ」
仲村 柊「うるせー」
演劇部員Ｄ「危ねっ!?」
仲村 柊「死ねラフェル！」
演劇部員Ｄ「勇者のくせに口悪いな！」
中邑 ゆうり「そうだ！」
中邑 ゆうり「いっちー、台詞練習付き合ってよ」
壱邑 一貴「いいけど、何すりゃいいんだ？」
中邑 ゆうり「ルカードの役やって」
壱邑 一貴「え!? 仲村の代わりにか!?」
中邑 ゆうり「最後のシーン、 台詞覚えてるか不安なんだよね」