私にだけ冷たい旦那様がタイムリープしすぎて骨になった理由

ふゆ

10.イーダの理由(脚本)

私にだけ冷たい旦那様がタイムリープしすぎて骨になった理由

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〇教会
  幼い頃から私は
  愛に溢れた人間でした
イーダ「お腹空いたの?」
子供「いつも悪いな」
女の子「え、イーダちゃんのじゃない、それ」
イーダ「私、お腹いっぱい♪」
子供「いただきます」
イーダ「うふふ」
女の子「キャー!」
女の子「イーダちゃんが倒れたー!」
  3日食べないのは普通のことでした
シスター「またなの?あの子」
シスター「優しい、と言えば聞こえはいいけど」
シスター「あそこまでいくと気持ち悪いわね」
シスター「一体どんな大人になるのかしら・・・」

〇山中の川
女の子「えーん、帽子が落ちた」
女の子「大事な帽子だったのに!」
「チラッ        チラッ」
イーダ「私、取ってくるね!」
  周りが私に『期待』するようになったのはごく自然なことだったようです

〇英国風の部屋
男「寒い」
男「今日は冷えるな」
イーダ「私の着ていいよ」
男「・・・・・・」
男「イーダ」
男「大きくなった」
イーダ「えへへ」
男「肌が、真っ白だな」
イーダ「え」
  危うく事件になりそうだったこの件は
  何故か私も酷く叱られました
シスター「どうしてあなたはそうなの!?」
イーダ「だって、寒そうだったから」
イーダ(いいことしたのに)
イーダ(なんで悪いことされたんだろう?)
  薄っすらと気づいていました
  与えた愛が返ってくるわけではないことを

〇教会内
女の子「ここの掃除やっておいてね」
イーダ「うん♪」
  それでも私の愛は止まりませんでしたが
子供「明日の司祭のお世話当番、 変わってもらっていい?」
イーダ「もちろん♪」

〇簡素な部屋
イーダ「体が熱い」
イーダ「お水」
イーダ「飲みたいなあ──」
イーダ「うぅうっ」
  自分だけが得することを言うと、
  胸が苦しくて全身が痛くなりました
  病気の時も例外ではありません
イーダ「ごめんなさいごめんなさい」
イーダ「もう言いませんからあ」
イーダ「誰も、来てくれないの・・・?」
「痛い痛い痛い痛い」

〇教会
  私は、誰がどう見ても『変な子』でした
  そんな私も大人になり
  奇跡が起きたのです
  私に親切にしてくれた人
  私を気にかけ、
  私と一緒に苦しみを背負ってくれた人
イーダ(しかも)
イーダ(とってもかっこいい!)
イーダ(ふわああ〜)

〇英国風の部屋
イーダ(あの横顔、あの低い声)
イーダ(はあ、もう二度と会えないんですかね)
女の子「ねえ」
女の子「ねえってばイーダ、聞いてる?」
女の子「私、郵便屋のトマスに恋しちゃったみたいでさ」
イーダ「恋!いいですね。実は私も──」
女の子「引き立て役やってくれない? ちょっと意地悪な女の子の振りしてくれればいいからさ」
イーダ「・・・・・・」
イーダ「いえ」
イーダ「そういう相手を罠に嵌めるようなことは良くないですよ」
イーダ「それに、意地悪だと思われるの嫌です」
イーダ(万が一にでも、あの人に伝わってしまったら嫌ですからね)
女の子「な、何よ」
女の子「まさか、まさかだけど、断るの!?」
イーダ「知らない人でも可愛いって思われたいです♡」
イーダ(万が一にでも、あの人にそう伝わるかもしれませんからね)
男の子「お、おい」
女の子「イーダが逆らった? 嘘でしょ!?」
(しかもちょっとなんか痛い感じに)
  私は
  初めて『断る』ことができました

〇黒
  誰かに恋をしたから
  私は無分別に『愛』を振りまくことから
  解放されたのだと思いました
(これからは、 あの人だけに愛を捧げられるんだ)
(嬉しい嬉しい嬉しい)
(毎晩想いながらベッドに入ろう)
  周りの『期待』が終わることはありませんでしたが
  以前のような無茶はしなくなりました

〇教会内
  どうして私が『変』なのか
  分かったのは16歳になってからです
旅の預言者「ちょっと君、待ちなさい」
イーダ「はい?」
旅の預言者「瞳の奥に、星の印がある!」
旅の預言者「この子は聖女かもしれないぞ!」
シスター「聖女?」
シスター「あの子が!?」

〇教会
  聖女発見の噂は国中に広がりました
王子「君が聖女か」
王子「名をなんという」
イーダ「イーダです」
王子「姓は?」
イーダ「ありません。親を知りませんので」
王子「なるほど」
王子「もし王宮に来ることになったら」
王子「手厚く歓迎しよう」
シスター「あら、なんだか気に入られてたみたいね」
シスター「もしかしたら、イーダは王妃にもなれるかもしれないわよ」
イーダ「え」
イーダ「私が王妃?」

〇簡素な部屋
イーダ「王妃・・・」
イーダ「私が!?」
イーダ「じゃあ、あの人のお嫁さんになれないってこと!?」
イーダ「・・・叶うとは想ってなかったけど、でも」
  可能性があるのとないのとでは全く違います

〇結婚式場の廊下
  でも
  奇跡が起きて
  私は初めて聖女で良かったと思いました

〇西洋風の部屋
  でも
  アドリアン様は、
  私のことは好きじゃないから
  いつも素っ気なかった
  それでもとっても大事にしてもらえたし
イーダ(好きじゃないのに愛を与えてくれるなんて♡)
  傍にいるだけで幸せでした

〇教会
アドリアン「離婚しよう」

〇綺麗な港町
  見たことのないアドリアン様が
  たくさんいました
イーダ(楽しそう)
  とても辛かったけど、でも
イーダ(良かった。幸せなんですね)

〇黒
  アドリアン様が幸せそうで何よりです
  私は辛かったけど
  二人のこと、見てるだけで幸せになれます♡
  私とはなんで駄目だったの?
  私が選ばれなかったのも納得です
  それならどうして期待させたの?
  お二人が、私を友人として認めてくださるといいのですが
  だったら最初から、夢のままでいさせてくれれば良かったのに
  私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が私の方が
  ────

〇貴族の部屋
メランジェス伯「君には本当に」
メランジェス伯「すまないことをすると思ってる」
メランジェス伯「大人しくしろとは言わん」
イーダ「アドリアン様も?」
イーダ「アドリアン様も、同意してますか?」
メランジェス伯「・・・・・・」
メランジェス伯「君の思う通りだ」
イーダ「・・・・・・」

〇密林の中
野盗「さて」
野盗「可哀想なお嬢さん」
野盗「君はこの世で一番可哀想な人間だと思ってるだろう?」
野盗「オジサンもそう思うよ」
野盗「ああ、気を悪くしないで」
野盗「ところが、実はそうでもないってオジサン言いたいんだ」
野盗「君を他国に逃してあげる」
イーダ「・・・・・・・・・」
イーダ「聖女を欲しがってるんですね?」
イーダ「今の依頼主より私は高値で売れますか?」
イーダ「・・・・・・・・・」
イーダ「えっと」
イーダ「お断りします♪」
イーダ「他国に逃げたら、 二度と戻って来れないじゃないですかあ」
イーダ「私、アドリアン様の傍にいるんです」
イーダ「この世で一番幸せな場所なんですよ」
イーダ「あははっ」

〇蝶
  ああ
  また思い出しました
  お優しいアドリアン様は
  私のことを見捨てられずにいて・・・
  嬉しい
  時の檻の中にずっといたんですね♡
  二人きりで──
  ずっと一緒に──
  まるで新居のように
  つづく

次のエピソード:11.たくさんの人に殺された理由

コメント

  • とても切なく悲しく怖い話ですね‼
    イーダの複雑な愛情を、矛盾なく設定されているのがすごいですね。
    イーダは自己肯定感が低く、人に与えて舐められる人。ボトムギバーですね。NOと言えれば卒業できると聞きましたが、まさに愛する人ができたのでそれができたというのは、非常に説得力があって深い話で感動いたしました。隅々まで設定が行き渡っていて、すごいですね😮

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