15/不信と、救えた作品(脚本)
〇城壁
マモ「部屋に戻って、お前の小説を書けよ」
マモ「他の奴の作品が潰れるのは、むしろ‥‥‥」
マモ「好機だろ」
ギン「‥‥‥‥‥‥」
マモ「‥‥‥‥ギン?」
ギン「‥‥‥お前、本 好きじゃねぇだろ」
マモ「‥‥‥え?」
ギン「そうだよな だってお前、俺の猿真似して 本読んでるだけだもんな」
ギン「もしかして、1度も自分の意志で 本を探して読んでなかったりする?」
ギン「だからそうやって、他の書き手の 不幸を喜べるんだろ」
マモ「‥‥‥‥‥」
ギン「‥‥‥‥お前、俺を買いかぶりすぎてるぞ」
ギン「俺なんかのより面白くて、もっと ちゃんとした文章作品はたくさんあるんだぜ?」
マモ「‥‥‥それを踏まえても、俺はお前の小説は 読み応えがあるし魅力的だと思う」
マモ「思ってる」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「なぁ」
ギン「「才能がある」って勘違いさせてくるの やめてくんね?」
マモ「──── !!!!!」
マモ「‥‥‥‥えっ‥‥‥」
マモ「‥‥‥‥」
マモ「何か、地雷を踏んだのなら謝る」
マモ「そんな事を言うな」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「いってきまぁ〜」
マモ「── ギン!」
マモ「‥‥‥‥」
〇城壁
ヴァガ「ねぇ、おにーちゃあん 『いきしょーちん』って なにぃ‥‥‥‥」
ヴァガ「雨、すっげぇ!!!!!」
ヴァガ「お」
ヴァガ「白いにーちゃぁん 『いきしょーちん』って なにぃ?」
マモ「‥‥‥‥『意気消沈』。 見事に、今の俺とギンの事だな」
ヴァガ「だから、けっきょく どゆこと?」
ヴァガ「じゃあ、にーちゃんのほうも みてこよっと!」
マモ「‥‥‥‥‥」
〇荒廃した市街地
ギン「‥‥‥あっぶね」
※流れてくる瓦礫やらやらをかわしながら
泳いでいくギン
ギン((この辺りかなぁ))
〇水中
※水底で、淡く光る見覚えのある袋が
沈んでいる
ギン((ほい、見ぃっけ))
ギン((‥‥‥‥あ))
〇黒
※ギン、水中にあった立て札に右側頭部強打
〇白
ギン「‥‥‥‥」
ギン「あ〜‥‥‥」
ギン「エルム・ナキュのサイン会、楽しみだな‥‥‥」
ギン「めっちゃ緊張する‥‥‥」
ギン「‥‥‥!」
ギン「‥‥‥‥おぉ‥‥‥」
編集担当ちゃん「本日は、エルム・ナキュのサイン会に お越しいただきありがとうございます」
ギン「あっ‥‥‥はい、こんにちは」
編集担当ちゃん「‥‥‥うふふ」
ギン「‥‥‥えっ?」
編集担当ちゃん「うちのエルム先生が”野郎”で、 驚いたでしょう?」
ギン「ははは‥‥‥そのとおりで」
ギン「ここここんにちは、はじめまして‥‥‥ エルム先生‥‥‥」
ギン「ササササ、サインください‥‥‥」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「先生の「ソコ、気にしなくてよくない?!」 みたいな文面めっちゃおもろいです‥‥‥!」
ギン「で、それが後々に生きるっていう‥‥‥!」
興奮ギン「『テルロ・ヰリテ』のカバー裏の あの仕掛け、先生のアイデアって本当です?」
ギン「いや、アレに気付いた時は‥‥‥ 泣きましたよ」
ギン「‥‥‥‥あぁ、でもやっぱ1番伝えたいのは‥‥‥」
ギン「私はミーナが好きです」
ギン「ジーコは、ミーナとノキース‥‥‥ どちらを選ぶのでしょうか‥‥‥?!」
エルム・ナキュ「‥‥‥‥‥」
ギン「‥‥‥‥えっ?」
ギン((そうか、先生は『ミーナかノキースか』の 論争に嫌気がさして引退したのに‥‥‥))
ギン「ごごごごめんなさい! ノ、ノキースも好きですよ!」
ギン「だから先生の思うがままに書いて、 完結してほしいなって思います‥‥‥!」
ギン「引退してしまうほど、私たちが先生を 苦しめていたなんて知らなかったんです‥‥‥」
エルム・ナキュ「‥‥‥‥」
エルム・ナキュ「違うよ」
ギン「えっ‥‥‥?」
エルム・ナキュ「『ミーナ・ノキース』の件は、 嬉しかったですよ」
エルム・ナキュ「私なんかの小説で人様がこんなに白熱して 下さるなんて、恐縮だったけど嬉しくて」
ギン「あっ‥‥‥そういう気持ちでした‥‥‥?」
ギン「えっ。 じゃあ『ヒロイン論争に嫌気がさして 引退した』はデマ‥‥‥?」
エルム・ナキュ「そうです」
エルム・ナキュ「引退したのは‥‥‥ 小説が書けなくなったからです」
エルム・ナキュ「ごめんなさい」
エルム・ナキュ「‥‥‥ごめんなさい」
ギン「‥‥‥それは、精神面の問題ですか? 健康面の問題で?」
エルム・ナキュ「ごめんなさい」
エルム・ナキュ「私は、強かったけど弱かった」
エルム・ナキュ「あらがう強さが、ほしかった」
〇空
ギン「‥‥‥‥ぶはぁっ!!!!!!」
ギン「‥‥‥あっぶねぇ〜‥‥‥寝てた(?)」
笑うギン「頭いてぇ〜」
ヴァガ「にーちゃぁ〜ん 『いきしょおちん』って なぁに‥‥‥」
ヴァガ「血が でてる!」
ヴァガ「だだだだだだ だいじょうぶ?」
ギン「あぁ、かすり傷×2」
ギン「それはそうと、いいところに来たわ」
ギン「コレ持って、宿に転移してくれ」
ヴァガ「こ、これくらいなら 持って ワープできるけど‥‥‥」
ヴァガ「にーちゃんは?」
ニヤリとするギン「え? 俺も一緒に行けそう?」
ヴァガ「‥‥‥むり‥‥‥‥」
笑うギン「ソレ持ったままだと、助かるもんも 助からねぇんだよ(笑)」
ギン「よーし、とっとと帰れぇ〜」
ヴァガ「にーちゃん‥‥‥‥」
ギン((もう、防水魔法を切ってもいいかな‥‥‥))
ギン((‥‥‥よし、切った))
ギン((とりあえず、屋根の上に避難すっかな))
〇レンガ造りの家
※屋根の上に避難するギン
ギン((‥‥‥‥‥‥))
〇城壁
「なぁ、『才能がある』って
勘違いさせてくるのやめてくんね?」
「‥‥‥‥‥‥!!」
「そんな事を言うな」
ギン((‥‥‥‥‥))
ギン((あいつ、何であんなに俺なんかの事 買ってくれてるんだろう))
ギン((他にもっと面白い小説たくさんあるのに))
ギン「‥‥‥‥あン?」
ギン((その割には))
ギン((何かずっと一方的に知られてる割には))
ギン「‥‥‥‥‥‥」
ギン((いや))
ギン((いやいや))
ギン((せっかく慕ってくれている“ファン”に 難クセつけて八つ当たりするな))
ギン((“ファン”のアラを探すな考えるな))
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「‥‥‥‥何もなかったかのように戻って 大丈夫かなぁ」
〇黒
そうだ。
あいつは、俺のファンなんだから。
ただ、それだけなんだから。
それだけを受け止めてりゃいいんだから。
それだけを頂戴しときゃ
〇城壁
マモ「‥‥‥‥」
ヴァガ「白いにーちゃぁ〜ん かぜ ひいちゃうよぉ〜?」
マモ「‥‥‥‥」
マモ「── ギン!」
城壁を上がってきたギン「‥‥‥‥‥」
ギン「よぉ、ただいま!!!!」
マモ「‥‥‥おい、頭から血ぃ出てるぞ」
ギン「はっはっは〜 大丈夫だって!」
ギン「右手は無傷だから」
ギン「右手が無傷なら、あとは別にどこが どうなってたって大丈夫だろ?」
マモ「──── !!!」
マモ「‥‥‥おい」
ギン「そうそう! さっきはごめん×2!」
ギン「よくよく考えたら、たとえ猿真似で 読んでたとしてもちゃんと読破してる お前すごくない???」
ギン「すごいすごい!」
マモ「‥‥‥‥‥?」
ギン「にしたって、いつまでこんな所にいるんだよ ‥‥‥‥中に入ろうぜ?」
マモ「‥‥‥‥あぁ」
〇おしゃれな廊下
ギン「あ」
ギン「ヴァガ、さっきの出せ」
ヴァガ「あいよ!」
ギン「よし、濡れてない」
ギン「おい、おっさん」
編集者「お。残念な子」
編集者「ああっ! それ‥‥‥‥!」
編集者「ぎゃあっ!!!!!!」
※倒れたおっさんの上に馬乗りになるギン
マモ「── っ!」
マモ「何してんだ お前!」
ギン「おっさん」
ギン「丁重に扱えよ?」
ギン「やっぱ、あんたがちゃんと届けろ」
ギン「俺が社に持っていったら、この原稿らが なんか細工されたんじゃないかって 疑われちまう」
ギン「で、俺のは適当に落とせ」
半ベソ編集者「は、はい‥‥‥!」
マモ「‥‥‥‥‥」
ヴァガ「ところで にぃちゃあん 『いきしょーちん』って なぁに?」
ギン「‥‥‥‥?」
ギン「‥‥‥‥『生き血商人』?」
ギン「わかんないや 後で、白いおにーちゃんに訊きな?」
〇黒
〇黒
〇大広間
『それでは、ピューブリカ社恋愛小説大賞を
受賞なされたワダィ・チュクリさんです』
ワダィ・チュクリ「この度は‥‥‥恐れ多くも拙作なんかを 栄えある賞に選んでいただき‥‥‥ 誠にありがとうございましゅ‥‥‥!」
※しばらく、話が続く
ワダィ・チュクリ「‥‥‥ですが、今回の受賞は もうお1人のおかげでもあります」
ワダィ・チュクリ「同じ、応募者であるギン・ユルシャ君‥‥‥」
ワダィ・チュクリ「‥‥‥彼が、あのブゥハテの町の洪水で 紛失しそうになった今回の応募作の まとまりを保護してくださったそうで」
ワダィ・チュクリ「その中に、私の拙作がありました」
ワダィ・チュクリ「彼が作品を保護してくれなかったら この受賞はなく、今 私はここに立っておりませぬ‥‥」
ワダィ・チュクリ「本当に、感謝してもしきれません‥‥‥」
ワダィ・チュクリ「ギン君に届くかどうかわかりませんが、 その節は本当に‥‥‥ありがとうございました」
ワダィ・チュクリ「‥‥‥‥そして」
ワダィ・チュクリ「お迎えが近いような、こんなババァの 長年の夢を叶えてくださって‥‥‥ 皆様、どうもありがとうございました」
???「‥‥‥‥‥」
痛風と戦う編集者「ギン・ユルシャ君、可哀想だよなぁ‥‥‥」
痛風と戦う編集者「あンのキノコ野郎が何故か異様に 作品を嫌っててなぁ‥‥‥」
頻尿 is 編集者「推してる人も結構いたのにな」
頻尿 is 編集者「『ユルシャ』の姓だって、話題性あったのに」
痛風と戦う編集者「‥‥‥辞めた先輩が好きそうな小説だったなぁ」
頻尿 is 編集者「‥‥‥‥あぁ。あの“印税女狐”先輩ね」
頻尿 is 編集者「今は小さい本屋やってるんだっけ?」
痛風と戦う編集者「‥‥‥見せに行っちゃおうかな」
頻尿 is 編集者「あの人、才能ある若い男が好きだった からなぁ‥‥‥」
痛風 is 編集者「パトロンになっちゃいそうだな(笑)」
ギン君…闇に堕ちていきますね…😢
あんなに表情を崩すマモさんが初めてでマモさんも失意にかられていくのだろうと思うと胸が痛い…。
ギン君の夢は先生の本音なのか…
気になること沢山ですが次回ファンクラブ限定なんですね💦入ろうかなぁ…まずクレカを作らないと(そんな奴今時いるのかレベルの原始人)
挿入されたスチルの拒絶の表現が胸に来ました。表面上おちゃらけて隠してしまったせいで、ギンの中に残るわだかまり…不穏ですね。先が気になります。
ギンを心配してる編集者…通風だったり頻尿だったり、編集者はみんな不摂生なのでしょうか…😂😂あとがき読んだ後、受賞者の名前に気付き笑いました😂