デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード28・洗の中(脚本)

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〇教会の控室
まちかの母「まあ、まあ!教祖様、今なんて?」
矢倉亮子「まちかさんは私達の仲間として、本当によく努めてくれていますわ」
矢倉亮子「ですから今回、名誉あるお役目を与えたいと思っていますの」
矢倉亮子「お母様も存じてますわね?救世主の話を」
まちかの母「ええ、もちろん。この世界を襲うであろう悪魔・・・それに対するため、救世主の力が必要なのですよね?」
まちかの母「教祖様のお孫さん・・・。つまり、神様の声が聞こえる神子様。神子様を助ける立場となられるのが救世主様だと」
矢倉亮子「その通りよ。その救世主を選ぶ試練をついに始めることになりましたの」
矢倉亮子「そのためには、まちかさんのような、優れたお子さんのお力が必要なのですわ」
矢倉亮子「救世主を見つけることは、この世界を救うこと」
矢倉亮子「即ちそのための試練に協力することは、世界を救う手伝いをすること」
矢倉亮子「どうか、教祖としてお願いするわ。力を貸してはいただけないかしら?」
まちかの母「なんて名誉なこと・・・!もちろんですわ、教祖様!」
まちかの母「我が家の娘が、教祖様直々に指名していただけるなんて。こんな素晴らしいことはございません!」
まちかの母「きっと神様の御加護があるに違いないわ・・・ねえ、まちか?貴女もそう思うわよね?」
まちかの母「お役目、喜んで引き受けるわよね、ね?」
まちか「う、うん・・・」
まちかの母「娘もこう言っております」
まちかの母「是非とも協力させてください、教祖様!わたくしたちは、一体何をすれば?」
矢倉亮子「ああ、本当にありがとうございますわ、お母さん、まちかさん」
矢倉亮子「では、詳しい内容を、説明させていただきますわね・・・」
まちか「・・・・・・」

〇黒背景
  私が生まれた時から、お父さんとお母さんは、教祖様の虜だった。
  宗教二世って言葉は、学校で聞いて初めて知った。私はそうだったんだって。
  お父さんもお母さんも、教祖様が言うことは全部正しくて、本当に世界を救う手伝いをしてると信じてる。
  何か変だ、なんて思っても。逆らえるはずがない。だって、私はまだ、子供なんだから。

〇田舎の公園
まちか「・・・というわけなんだよね」
みれい「うわあ、ドン引き。マジでカルトじゃん・・・」
れつ「しっ。大きな声で言ったら駄目だって、みれい。誰が聞いてるかわからないんだから」
れつ「・・・でも、ヤバイ臭いがぷんぷんするのは間違いないな。それ、ラノベとかである、デスゲームってやつなんじゃ」
みれい「ああ、うん、それ。あたしもまったく同じ印象抱いた」
みれい「まちか、そんなのに協力する必要ないって。だって、間接的とはいえ、人を殺すかもしれないんだろ?」
みれい「そんなの、嫌なんだろ?」
まちか「もちろん、嫌だよ!でも、でも・・・」
まちか「私、家も教団の施設の中にあるし・・・」
まちか「みれいとれつは、こっそりこの公園まで遊びに来てくれるけど。本当は信者の子以外とは、遊んじゃ駄目って言われてるくらいだし」
まちか「お母さんは、お役目を与えてもらったって滅茶苦茶喜んでる」
まちか「本当は嫌だ、なんて言ったら絶対怒られる。家に入れて貰えなくなる、かも」
みれい「そっか・・・」
れつ「・・・」
れつ「・・・まちかが、自分の意思で逃げたんじゃなければいいよな?」
まちか「え?」
みれい「どういうことだ?」
れつ「この公園の裏手、すごい山だろ?うっかり子供が迷ってしまうくらいのことはあると思う」
れつ「だから、まちかは遊んでて、森の中で迷ってしまって、それで約束の時間に待ち合わせのところに行けなかったことにすればいい」
れつ「事故に遭ったっていうなら、きっとまちかは責められない!」
まちか「で、でもいいのかな?」
まちか「それに、大きな森じゃないから、すぐに見つかっちゃうかも・・・」
みれい「いや、それ名案だぜ!」
みれい「あたし、ここの森の中でめっちゃ鬼ごっこしてるから!森の中の洞窟とか、かくれんぼに最適な場所とかいっぱい知ってんだ!」
みれい「秘密基地みたいなところもあるんだぜ!」
みれい「そこで、大人たちが諦めるまで隠れてるってのはどうだ?あたしが案内するから!」
れつ「じゃあ、俺も大人たちを誤魔化す方法を考える。一緒に、まちかを隠す手伝いをするよ」
まちか「い、いいの?本当に?」
みれい「いいっていいって!あたし達、友達じゃん?」
れつ「そうだな。友達が困っている時に助けるのは当然のことだ」
まちか「ふ、二人とも・・・!」

〇けもの道
男の影「おい、いたぞ、こっちだ!追え!」
まちか「あ、ああ・・・!」
みれい「やべえ、こっち来る・・・っ」
れつ「に、逃げろ!」

〇黒背景
  逃げる場所なんてどこにもない。
  本当は、最初からわかってた。
  でも、私には勇気がなかったから。
  大事な友達二人を、巻き込んでしまった。
  本当は。私一人だけが我慢すれば、頑張れば・・・それで終わるはずだったのに。

〇散らかった研究室
まちか「本当にごめんなさい・・・ごめんなさい、ごめんなさい」
まちか「みれいと、れつは何も悪くないの。全部私が悪いの。私が巻き込んだの」
まちか「お願いします。毒は、私に打っていいから、だから。二人のことは、助けてください・・・」
みれい「ま、まちか・・・」
れつ「お前だって悪くない。お前だって・・・」
れつ「本当は、俺達にもっと力があれば。俺達が、まちかを守れてたら・・・」
みれい「う、うう・・・」
峯岸輪廻「・・・」
須藤蒼「輪廻さん、あの・・・」
峯岸輪廻「よく、本当のことを話してくれたな、お前たち」
まちか「え・・・」
峯岸輪廻「俺は最初から決めてた。お前たちを助けるってな。子供を見捨てて逃げるなんて選択肢は俺にはないって言っただろう?」
峯岸輪廻「ただ、本当のことが知りたかっただけだ。なあ、まちか」
まちか「は、はい・・・」
峯岸輪廻「ひょっとしたら、教祖サマの言うことは正しいのかもしれない」
峯岸輪廻「悪魔とやらはいつかこの世界に襲来して、人々にひどいことをするのかもしれない」
峯岸輪廻「不思議な力とか何にもない俺には、その言葉が真実か妄想かなんて区別がつかないんだ。だから、完全否定もしない」
峯岸輪廻「でもな。・・・例え悪魔を倒すためであっても。人が、人の心を捨てたら本末転倒なんだ」
峯岸輪廻「人の心が悪魔に吞まれたら・・・それは、悪魔が人を食い殺すのと、何の違いがあるだろう?」
峯岸輪廻「救世主を見つけるためならば、悪魔に魂を売ってもいいという考え方は・・・絶対間違ってる」
峯岸輪廻「心が強くて清らかな人間を探す方法は他にもある。命を賭けさせたり、傷つけ合わせたりしなくたってきっとある」
峯岸輪廻「幼い君には難しいかもしれない。でも、生きて帰ったらどうか・・・お父さんとお母さんと、よく話し合ってみてくれないか」
峯岸輪廻「あるいは、誰か大人の人を交えてもいい」
峯岸輪廻「本物の救世主はきっと、自分自身の心の中にいる。悪魔も同じ。それを、よく考えてみてほしいんだ」
峯岸輪廻「君達子供達の代が変わっていけばきっと・・・大人達の代で、悲劇は終わりにできるはずだから」
まちか「お兄さん・・・」
須藤蒼「り、輪廻さん、まさか」
峯岸輪廻「言っただろ、最初から決めてたと。・・・このBのペットボトルが毒で間違いないんだな?」
峯岸輪廻「毒がわかったら、これは俺が打つつもりでいた。この面子の中じゃ、俺が一番体重が重いだろうし、マシだろう」
須藤蒼「ま、待って輪廻さん!輪廻さん血も抜いて、ふらふらなのに!」
まちか「な、なんで、どうして、そんなっ」
峯岸輪廻「俺が気絶したら、後は頼むな・・・蒼」

次のエピソード:エピソード29・覚の中

コメント

  • 最後の試練、ゾッとする恐ろしさを感じながらも目が離せませんでした😰
    回を追うごとに物語の真相が明らかになりつつありますが、比例して増大する恐怖感が😱 輪廻くん、無茶しすぎ……😭

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