極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~

イトウアユム

第10話「《称号》【金ヲ貸ス者・極】」(脚本)

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〇お嬢様学校
権田原万里「おはようございます、エリーザ様」
エリーザ「ごきげんよう、マリアンネさん・・・」
エリーザ「あら、襟が曲がっていてよ? 服装の乱れは心の乱れ、しっかりなさって」
  そう言いながらも襟元を直してくれるエリーザの眼差しは優しい。
権田原万里「ふふ、ありがとうございます」
  ホストクラブにエリーザが来たあの日から数週間。
  私はエリーザに言われた通り、
  真面目に学園に通っていた。
エリーザ「それにしても・・・数か月も休んでいた貴方が、今回の試験の首席だなんて・・・ 悔しいわ」
権田原万里「たまたまですよ、って言いたいところですが・・・勉強にはコツがあるんです」
権田原万里「今度お教えしましょうか?」
エリーザ「そのコツ、とても気になるわ・・・ そうね、是非教えて頂戴」
権田原万里「では、今度一緒に勉強会をしませんか?」
  こういう会話・・・とても新鮮だ。
  あっちの世界では、クラスメイトには恐れられていて誰も近寄ってこなかったし。
  こうした気兼ねなく、とりとめのない普通の女子の様な会話って言うのも・・・
  案外悪くは無い。
サーシャ「ねーねー、マリアンネ~! なんでボクを勉強会に誘ってくれないのさ・・・」
サーシャ「別に行きたいわけじゃないケド」
シモン「勉強会か・・・それならば是非、僕の家で信仰について意見を交換しあおう」
権田原万里(――こいつらさえいなければ、なんだがな)
  もっと2人きりでエリーザと話をしたいんだがこの3馬鹿達が私から離れてくれない。
  って言っても今は王子がいないから2馬鹿か。
サーシャ「ねえ、聞いてるマリアンネ? ボクの事を無視するとか、そんな事してないよね?」
シモン「神の存在と啓示・・・ これらは父の言う通り真実なのか」
シモン「それとも・・・ 君はどう思う、マリアンネ?」
  しかし、
  ピーチクパーチクうるせえ奴らだな。
  こちとらエリーザとおしゃべりするのに忙しいんだよ、黙ってろ。
  その時、はるか向こうの校舎から待ち構えていたような人影がこちらに走ってきた。
ミハエル「マリアンネッ!!!」
  来やがったな、馬鹿王子。
ミハエル「舞踏会に参加しないって言うのは本当かい?」
サーシャ「ええっ! うそ!?」
シモン「なんて事だ・・・パートナーに立候補するつもりだったのに・・・」
エリーザ「・・・欠席、されるの?」
権田原万里「ええ・・・申し訳ありませんが家庭の事情がございまして」
権田原万里「王宮舞踏会は欠席する予定です」
  士官学校行きが回避された今、イベントフラグの要であった王宮舞踏会に出席する意味は無くなった。
  ・・・だったらそんなクソダルいイベント
  バックレるに決まってるだろうが。
ミハエル「そんな! せっかくカーチャ夫人のレッスンを受けたのにかい?」
ミハエル「それにドレスだって・・・」
ハンス「王子・・・そのお話はこの辺りで」
エリーザ「あの・・・ドレスの事で、わたくしも ・・・ミハエル様にお話が・・・」
  ハンスの言葉を遮るように、エリーザはおずおずとミハエルに声を掛けた。
ミハエル「ドレス?」
エリーザ「はい、舞踏会のパートナーとしてのドレスのご相談が・・・」
  王宮舞踏会はシュルテン学園の生徒を対象とした舞踏会だ。
  王宮が主催する公式的な舞踏会でこれを社交界デビューにする生徒も少なくはない。
  そしてこの舞踏会にはパートナーと必ず出席するのが条件。
  婚約者がいれば必ず婚約者と・・・それは王子であるミハエルも例外ではない。
  例えマリアンネに入れ込んでいたとしても
  ・・・。
権田原万里(ヤスの話じゃ、ゲームでは確か・・・王子はエリーザと一緒に出ていたんだよな?)
  そしてマリアンネはモブの男子生徒と出席していた、と聞く。
ミハエル「パートナー? ああ、そうだったな・・・ 君が勝手に選んでくれて良いよ」
ミハエル「どうせ形式だけのパートナーなのだから」
「・・・!」
  2人の会話に一瞬、
  周りの空気が凍ったような気がした。
エリーザ「そう・・・ですわね」
権田原万里(ん? どうしたんだ・・・?)
  しかし、エリーザの表情はいつもの様な強気で凛としたものだった。
エリーザ「かしこまりました。殿下の仰せのままに」
権田原万里「あの・・・エリーザ様・・・」
  なにかあったんですか?
  そう聞こうとするが・・・
エリーザ「まあっ! マリアンネさん、 今度はリボンが曲がってますわよ!」
エリーザ「本当にもう、子供の様な方ね・・・」
権田原万里「えっ! あの・・・ あ、ありがとうございます・・・」
  どことなく、はぐらかされた感があるが
  ・・・エリーザが話したくないのであれば無理に聞く事は無い。
  私は甲斐甲斐しくリボンを直してくれるエリーザに微笑んだ。
  ――のちに私はこの事を激しく後悔する。
  ああ、あの時。
  馬鹿王子をぶっ飛ばしてやれば良かった、と。

〇城の客室
権田原万里「♪~」
  私は鼻歌を歌いながら店の帳簿を眺めていた。
リュウ「アニキ・・・アネゴは随分とご機嫌ですね」
ヤス「腕の良いドワーフの鍛冶職人を見つけたらしくてな・・・」
ヤス「そこで日本刀を作って貰える事になったんだ」
リュウ「にほんとう?」
権田原万里「刀の事だよ。あっちの世界では実戦用の刀を作れなかったし、作っても何人か斬ったらダメになるモノが多かったが・・・」
権田原万里「いやあ、銃刀法の無いファンタジーな世界って良いな!」
リュウ「あっち? あー、兄貴とよく言ってる前世の世界の話っすね」
ヤス「・・・そうやってすんなり受け入れるところにてめえの底の見えない恐ろしさを感じるぜ」
リュウ「恐縮っす!」
リュウ「でも意外でした。日頃の発言と言い、 金稼ぎの手腕と言い・・・」
リュウ「アネゴはインテリだと思ってたんで」
ヤス「阿呆、お嬢はゴリゴリの武闘派だ」
ヤス「あっちの世界のお嬢は権田原の修羅姫って呼ばれてたくらいだぞ」
ヤス「ブチ切れたら草木一本残さないで皆殺しってな・・・」
ヤス「第一、てめえはその体で知ってるだろうが」
権田原万里「ヤス、おまえにも1本作ってやろうか?」
権田原万里「長靴を履いた猫ならぬ長ドスを持った猫ってのも面白くないか?」
ヤス「いえ・・・あっしは遠慮しておきます」
リュウ「マジご機嫌っすね~」
  何とでも言え。
  出来上がる予定の日本刀に魅了される私を見るヤスの目がきらりと光った。
ヤス「・・・そんな事よりもお嬢。こっちの世界でも、金貸しに手を染めましたね?」
権田原万里「・・なぜ気付いたんだ、ヤス」
ヤス「称号とスキルが増えてますんで・・・」
  ヤスの言葉にステータスを確認すると・・・
  《称号》【金ヲ貸ス者・極】
  《スキル》「金融知識」「融資」
    「分割払い」「取り立て」「トイチ」
    「契約不履行」etc
権田原万里「・・・金貸しにも称号が付くのかよ」
権田原万里「ま、硬い事言うなって。 金は無いよりもある方が良いからなっ!」
  金稼ぎも順調。
  士官学校行きも阻止され、
  3馬鹿に身売りする事も回避出来た。
  エリーザとの関係も良好だ。
権田原万里(異世界生活なんて、 案外チョロいモンだったな)
  全てが順風満帆で私はご機嫌だった。

〇西洋の街並み

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