勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

14/ VS 大手出版社のクソ編集者(脚本)

勇者にはほしい才能がある

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〇渓谷

〇谷
マモ「‥‥‥‥」

〇谷
マモ「いつにも増して、効率的・且つ スピーディーだったな」
ギン「魔物ども! なんで火ばっか 出してくんだよ!!!!」
ギン「もう、最近暑いのってコイツらの せいじゃね?!」
マモ「そして、今度はまた雨が来そうである」
マモ「最近荒れてるな‥‥‥天気」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「まだ、魔物いねぇかなぁ?」
ギン「もっと斬りてぇな」
マモ「‥‥‥‥‥」

〇山中の坂道
ギン「なんだ? コレ」
  ※袋の中を開けるギン
ギン「‥‥‥‥」
ギン「ぎゃっ!!!????」
マモ「なんだどうした」
ギン「マモしゃんマモしゃん‥‥‥! 小説原稿っ‥‥‥‥!!!!!」
ギン「この中に小説の原稿たくさん入ってる‥‥‥!」
マモ「‥‥‥‥は?」
ギン「と、とりあえず保険として “防水魔法”をかけておくか‥‥‥」
マモ「前も使っていたが、なんなんその マニアックピンポイントな魔法‥‥‥」
ギン「幼少期の俺が悲しみのあまりに生み出した オリジナル魔法なんだけど‥‥‥理由聞く?」
マモ「‥‥‥‥おぅ」
ギン「あのさ‥‥‥」
???「あっ、あったあったぁ〜」
編集者「すいまっせん〜 ソレ、僕のなんですよぉ」
ギン「えっ、あっ、あ‥‥‥‥」
ギン「すみません、中を見てしまって‥‥‥」
ギン「おじさんも、小説書きなんです?」
編集者「ん〜? 違う違う」
編集者「それ、ピューブリカ社の『恋愛小説大賞』の 最終〆切の応募作まとめなんだぁ」
編集者「僕はピューブリカ社の編集者で、 ちょうど応募原稿を社に届ける途中だったんだぁ」
ギン「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ギン「いや! めちゃくちゃ大切なもの じゃないですか!!!!!!」
ギン「何でこんな所に放置してるんですか 何でですかっ!?」
編集者「いやぁ〜。 さっき、魔物に襲われてさぁ」
編集者「それで慌てて逃げたら、普通に ここに落としてきちゃって」
編集者「ははっ」
ギン「『ははっ』って‥‥‥」
ギン「あのぉ‥‥‥」
ギン「近くの町まで、護衛しましょうか‥‥‥? 心配なので‥‥‥(原稿が)」
編集者「えっ、本当? ありがとう〜 心強いよぉ〜」
編集者「よぉし、行くぞ〜」
マモ「‥‥‥‥おい、何だあいつ」
マモ「大事な応募原稿を落として逃げた‥‥‥?」
ギン「いや‥‥‥し、仕方ないのかもしれない 一般人はそんなもん‥‥‥じゃん?」
マモ「でもアイツ、笑ってたぞ」
マモ「罪悪感ゼロだぞ」
ギン「‥‥‥‥‥」

〇岩の洞窟
編集者「雨やどりが出来ますねぇ〜 トンネルありがたぁ〜い♪」
編集者「そういえば君、さっき 『おじさん“も”小説家ですか』って 訊いてきたけど」
編集者「君は字書きなのかい?」
ギン「あっ、はい‥‥‥ プロ志望のアマチュアです」
ギン「実は、ピューブリカ社のその 『恋愛小説大賞』にも投稿してます」
ギン「珍しく、〆切に余裕持って 投稿できて嬉しかったなぁ」
マモ「ぬぁっ?!」
マモ「お前が恋愛小説?!」
マモ「何だソレ、どんなのだ!」
ギン「えぇ〜? 恥ずかしい〜」
マモ「殴るぞ、クソがっ!!」
編集者「1次〆切日に出せたんだぁ、偉いねぇ」
編集者「もしかしたら、僕が 下読みしてるかもしれないねぇ」
マモ「‥‥‥‥‥つい荒ぶってしまったが、それより」
マモ「お前、アググ・リシュケを殺した ピュー社に投稿したのかよ」
ギン「‥‥‥」
ギン「一瞬、もちろんその事は考えたけどな」
ギン「賞の審査員が好きな作家だったし、 何より‥‥‥ピュー社は大手だしな」
ギン「あれは1人のバカのせいの事故だったん だろうし、ピュー社で本出したくない・ 認められたくない書き手はいねぇよ」
ギン「‥‥‥ん? 軽蔑する?」
マモ「そういうものなのなら‥‥‥」
マモ「仕方ないとは思う」

〇怪しげな酒場
  小説界を席巻したアググ・リシュケは
  実にあっけなくこの世を去った。
  アググ先生は、酒が飲めないのに
  ピューブリカ社から出版される
  新刊のお祝いとして宴席に連行された。
  そこで、ピューブリカ社の役員だか
  担当だかにしこたま酒を勧められ
  急性アルコール中毒で亡くなった。
  激怒したファンによって、一時期
  ピューブリカ作品の不買運動も起こった。
  が、アググ先生に酒を勧めた当のソイツを
  クビにした、という事でウヤムヤに
  あいまいに怒りは沈静化させられた。
  ── それ以降「印税ピンハネ」だ
  「作家に枕営業させてる」だの、会社の
  キナ臭い噂が上がりだしたが‥‥‥
  しかし、それでもピューブリカ社の
  コネやら人脈やら作品には魅力があった。

〇綺麗な港町

〇結婚式場の廊下
ギン「‥‥‥え?」
ギン「高台の宿屋に泊まらないんです‥‥‥?」
編集者「うん」
編集者「だって今さぁ、高台の宿屋‥‥‥ 値上がりしてやがるじゃん?」
編集者「その反面、低地の宿が安い安い!」
ギン「今は嵐がすごいですし、川の氾濫注意報も 出てますから‥‥‥」
ギン「念の為、高台の宿に泊まったほうが よろしいんじゃないかと」
編集者「うーん。会社が「経費削減!」って うっさいからさぁ〜」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「応募原稿の束、私が預かりましょうか?」
編集者「ほぇえ?」
編集者「えぇ〜? 君も投稿者でしょお? 大事な応募原稿をどうするのよぉ〜?」
ギン((別に何もしねぇし、テメェなんて その大事な原稿落としたじゃねぇか???))
編集者「大丈夫×2! 案外、大丈夫なもんだって!」
編集者「道中、おしゃべり楽しかったよぉ、じゃ!」
マモ「あいつ、嫌い」
ギン「すげぇストレートに言ったな‥‥‥」

〇モールの休憩所
ギン「お。武器屋があるぜ」
ギン「ちょっと見てくるわ。 ダガーとか見てみたい‥‥‥」
マモ「は? お前が? 武器?」
マモ「何のボケだよ、本屋はあっちだぞ」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「そうだな、本屋はあっちだな」
マモ「‥‥‥‥‥」

〇可愛らしいホテルの一室
  〜高台にある宿内〜
ヴァガ「ねーねー、にーちゃーん! 本1さつ よみおわったぁ〜!」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「「読み終わった」という言い方はダセェ」
ヴァガ「え‥‥‥?」
ギン「「読破した!」と言ったほうが カッケェぜ!!!!!!!」
ヴァガ「ど‥‥‥」
ヴァガ「どくは したぁ!」
ギン「よし! カッケェぞ!!!!!」
ヴァガ「わ〜い どくはしたぁ どくはぁ〜」
はしゃぐバカ「どくはぁ〜」
マモ「うるせぇな」
マモ「‥‥‥‥どうした」
ギン「川、氾濫しないよな?」
マモ「宿の人から聞いたが、1週間も前から 注意喚起はされていたそうだぞ」
マモ「だから『いまだに低地に残ってる奴らは バカ』だとよ」
マモ「低地で宿やってる奴もバカ、 そこに泊まる奴もバカ‥‥‥というだけだ」
ギン「‥‥‥‥あんな人の手元にある皆様の 応募作品が心配すぎる‥‥‥‥」
マモ「仮に何かあったとて、お前のライバルが 減っていいだろ」
ギン「てめぇ、またノココ先生の時のような事を 言いやがって‥‥‥!」
マモ「それよか、最近のお前は一体どうした! 読書している姿をからきし見てな‥‥‥」
ギン「えっ‥‥‥まさ、か‥‥‥!」

〇城壁
ギン「うわっ‥‥‥!」
  ※ギンはレンガ防壁から身を乗り出して、
  下をのぞきこんだ
  ※町の低地部分が半分、水没している
A型町人「堤防、やっぱ壊れたかぁ‥‥‥」
B型町人「まぁ‥‥‥大方の人はこっちに避難してる だろうから、まだマシさね‥‥‥」
ギン「‥‥‥応募作品、どうなったんだろう‥‥‥?」
???「あはは〜 やっぱ早めに逃げてよかったなぁ〜」
ギン「あ、あの声は‥‥‥!」
涙目ギン「おっさん!!!!!」
編集者「やぁやぁ、数時間ぶりィ」
ギン「無事だったんすね‥‥‥!」
編集者「いや〜。だって雨の水が宿に どんどん浸水してきてさぁ‥‥‥」
編集者「どんどん怖くなってきたから、結局 慌てて逃げざるをえなかったよぉ」
ギン「‥‥‥‥『慌てて』‥‥‥‥?」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「編集さん」
ギン「‥‥‥応募原稿、ちゃんと持ってきましたか?」
編集者「あ!!!!!!!!!!!!!!」
編集者「いっけね! 忘れてき‥‥‥」
ぶん殴られ編集「ぎゃんっっッッッ!!!!!!!!」
激おこギン「てめぇ!!!!! だから言ったじゃねぇか!!!!!!」
激おこギン「だから、言ったじゃねぇかよ‥‥‥!!!!!」
編集者「なんだよ‥‥‥! 仕方ないだろっ!」
暴言ギン「てめぇの代わりなんざいくらでもいるけど、 その見捨てた作品の代わりはねぇぞ!!!!」
編集者「普通、逆じゃない?!?!?!」
編集者「『僕の命の代わりはないけど、作品の 代わりなんていくらでもある』‥‥‥ でしょ、普通!」
暴言ギン「ねぇよ!!!!!!!!」
マモ「おい、何だどうした」
編集者「あぁ、このバカの連れの御方!!」
編集者「この直情型のおバカさんのお名前、 何て言うんです?」
激おこギン「そいつに訊かなくても、 俺が自分で名乗るわ!」
ギン「ギン・ユルシャだ!!!!」
編集者「‥‥‥あ〜、覚えてる。 『エエエンドドドドレススス初恋』の ギン・ユルシャ‥‥‥」
編集者「ふざけたタイトルとは打って変わって 切なくて好きだったんだけどね‥‥‥ 残念だね」
編集者「落としてやるわ」
ギン「上等だ!!!! 落とせ!!!!!!」
ギン「その代わり、俺が今後プロになっても ピューブリカ社では絶対書いてやらんから 覚えとけよ!!!!!」
編集者「あははははは!」
編集者「吐いたツバ飲み込むなよ? ガキが」
ギン「のま‥‥‥‥ねぇよ‥‥‥」
マモ「お前‥‥‥売り言葉に買い言葉で 自分がダメージ受けてるじゃねぇか‥‥‥」
ギン「‥‥‥でも! 評価表はよこせよな!!!!!!」
編集者「あぁ‥‥‥護衛の礼として、せめてソレは ちゃんとやるよ」
編集者「‥‥‥ふん、バカだなお前」
編集者「そもそも、こんな〆切ギリギリに 駆け込みで投稿してくる作品や人に ろくなものないって」
ギン「‥‥‥そんな‥‥‥事ねぇよ‥‥‥‥」

〇城壁
落ち着いたギン「‥‥‥‥じゃあ」
ギン「原稿、探してくるわ」
マモ「はぁ??!!!」
  ※服を引っぱられ、連れ戻されるギン
マモ「何言ってるんだ、お前 ‥‥‥‥正気か?」
ギン「正気だよ」
ギン「実は保険として、さっき森でかけた 防水魔法をいまだに遠隔で かけ続けてるんだよ」
マモ「は‥‥‥あぁ?」
ギン「だから、位置はなんとなくわかる」
ギン「拾って、あんな奴に渡さずに ピューブリカ社に俺が届ける」
ギン「そろそろ、さすがに防水魔法の効果も 切れそうだから行かにゃあ」
マモ「やめろ」
マモ「お前が、赤の他人の小説に そこまでする理由がない」
ギン「あいつが見捨てた応募作の中に 名作があったらどうする」
ギン「そんなの、世界レベルの損害だぜ?」
マモ「そんなわけ、あるか」
マモ「仮にそうだったとしても、作者もその作品も そういう運命だったって事だ」
マモ「‥‥‥‥」
マモ「‥‥‥‥‥」
  ※マモがギンの服の裾を軽くつかむ
マモ「部屋に戻って、お前の小説を書けよ」
マモ「魔物討伐で執筆時間を割かれるのは 仕方ない‥‥‥」
マモ「が、それ以外の事はしなくていい」
マモ「するな」
マモ「他の奴の作品が潰れるのは、むしろ‥‥‥」
マモ「好機だろ」
ギン「‥‥‥‥‥‥」

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コメント

  • 大口叩いたあとの後悔(泣)。ギンくん…!
    マモマモもドエライ事を……!
    編集者といい、三者三様でキャラ立ってて良きです……😭

  • ちょっとタイムリーに色々あった直後で、この回のギン氏に涙が😂
    読めば読むほど、立ち絵のクオリティもキャラの魅力も最高過ぎますね🥰
    自分も今日から『どくは!』って叫びます(笑)
    可愛ぇぇ~♥️

  • 啖呵を切るギンがカッコ良かったです!講評を要求するあたりも、実にらしい😂
    蔑ろにされたヒトの原稿に怒り、自分を犠牲にしても助けに行こうとするところは凄く「勇者」してますね。その分、ギンとギンの作品を大切に思うマモとの溝が深くなりそうで次回が怖い…!マモしゃん、それを言っちゃあ…。

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