インソムニア

komarinet

閑話01 夢の行く先(脚本)

インソムニア

komarinet

今すぐ読む

インソムニア
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇空

〇空
高校球児「おーい、デカいのいったぞ!」
観客「あれは守備間に合わないだろ」

〇野球のグラウンド
九条醒夜(高校時代)「残念やったな」
九条醒夜(高校時代)「僕がおる限り長打はアウトやで」

〇グラウンドの隅
スポーツ記者「あれを捕るかぁ!」
スポーツ記者「投手の守備範囲じゃないだろ!」
スポーツ記者「シャッターを押す手が止まらんっ!」
通行人「あの少年、上手いなぁ」
スポーツ記者「上手なんてもんじゃないですよ」
スポーツ記者「間違いなく日本のプロ野球は変わる!」
スポーツ記者「来年のドラフト会議は荒れますよ!」

〇野球のグラウンド
九条醒夜(高校時代)(あと少しや)
九条醒夜(高校時代)(あと少しで"ヒーロー"になれる!)

〇狭い畳部屋
九条醒夜(少年時代)「父ちゃん、これなに?」
醒夜の父「これはメジャーリーグやな」
九条醒夜(少年時代)「メジャー・・・リーグ」

〇野球場
  日本人初のメジャーMVP
  大谷イチロー
  彼の勇姿を見たとき、僕の心は震えた

〇狭い畳部屋
九条醒夜(少年時代)「父ちゃん! 僕、野球選手になる!」
九条醒夜(少年時代)「大谷選手みたいな"ヒーロー"になるんや!」
醒夜の父「夢は大きくてええけどな」
醒夜の父「男が中途半端なこと言うたらあかんぞ」
醒夜の父「この写真に向かって同じこと、言えるか?」
九条醒夜(少年時代)「母ちゃん・・・」
九条醒夜(少年時代)「・・・」
九条醒夜(少年時代)「僕、プロ野球選手なるで!」
醒夜の父「・・・」
醒夜の父「わかった」
醒夜の父「絶対プロ野球選手になるぞ、醒夜」
九条醒夜(少年時代)「おう!」

〇川に架かる橋の下
九条醒夜(少年時代)「重い・・・」
醒夜の父「タイヤも引けんでプロになれるか!」
醒夜の父「プロはトラック引いとるんやぞ!」
九条醒夜(少年時代)「こんぐらい楽勝や!」
九条醒夜(少年時代)「うおおおっ!」

〇川に架かる橋の下
九条醒夜(少年時代)「父ちゃん、鉄球投げんなや!」
九条醒夜(少年時代)「当たったら死んでまうわ!」
醒夜の父「プロは普通より重いバットで素振りする」
醒夜の父「ボールも然り」
醒夜の父「プロなら鉄球くらい打ったらんかい!」
九条醒夜(少年時代)「当然や! バッチ来いや!」
九条醒夜(少年時代)「痛てぇぇえええ!」

〇雪洞
九条醒夜(少年時代)「父ちゃん。ここ、どこや」
醒夜の父「うむ。富士山のようやな」
九条醒夜(少年時代)「アホかァ! 遭難するわ!」
醒夜の父「アホはお前や!」
醒夜の父「プロは頂上までダッシュで登るんやぞ」
九条醒夜(少年時代)「負けるかァ!」

〇野球のグラウンド
  そして高校二年の夏──

〇空
アナウンサー「これは大きい!」
アナウンサー「入るか・・・」

〇河川敷
アナウンサー「入ったーーーー!」
アナウンサー「場外ホームランッ!」

〇野球のグラウンド
アナウンサー「なんというダークホース!」
アナウンサー「三途川(みとがわ)高校!」
アナウンサー「初出場にして決勝に駒を進めました!」

〇球場の観客席
アナウンサー「解説席にはメジャーリーガー」
アナウンサー「大谷イチローさんに来て頂いてます」
アナウンサー「今の試合、いかがでしたか?」
大谷 イチロー「素晴らしい試合でした」
大谷 イチロー「チームの団結力も素晴らしかったですが」
大谷 イチロー「何より彼、九条くん!」
大谷 イチロー「ぜひプロに来て欲しい逸材ですね」
アナウンサー「手元の資料によると」
アナウンサー「彼は大谷選手に憧れて野球を始めたとか」
大谷 イチロー「嬉しいですね」
大谷 イチロー「ぜひいつか、マウンドで会いたいですね」

〇野球のグラウンド
野球部補欠 楢崎(九条がいなければレギュラーだったのに)
野球部補欠 西村(本当ならあそこに立つのは俺だった)
「あいつさえ居なければ──」
野球部補欠 西村「やるか? あいつさえいなけりゃ──」
野球部補欠 楢崎「俺たち、決勝でれますよね」
「・・・」
野球部補欠 西村「いい案がある」
野球部補欠 西村「少し怖い知り合いなんだが──」

〇空

〇川沿いの道
九条醒夜(高校時代)「遅なってしもたな」
九条醒夜(高校時代)「誰や」
フードの男「九条醒夜さんですね」
九条醒夜(高校時代)「なんや、あんた」
フードの男「フフ・・・フ」
フードの男「ファンなんですっ!」
九条醒夜(高校時代)「えっ?」
フードの男「中学の頃から応援してますッ!」
フードの男「走・攻・守、どれも素晴らしく」
フードの男「まさに高校野球に彗星の如く現れた──」
九条醒夜(高校時代)「待て待て! 怖いねん、あんた」
九条醒夜(高校時代)「応援してくれんのはええねんけど」
九条醒夜(高校時代)「暗がりでフード被って来んといてや」
フードの男「失礼しました!」
フードの男「実はこれをお願いしたくて」
九条醒夜(高校時代)「色紙?」
フードの男「プロになる前しか貰えないと思いまして」
九条醒夜(高校時代)「なんや、そんなことかいな」
九条醒夜(高校時代)「お安い御用や」
フードの男「一つ質問しても?」
九条醒夜(高校時代)「好きな女の子のタイプか?」
フードの男「いえ。野球のことです」
フードの男「もし、決勝に進むために犠牲になるのが」
フードの男「エースかチームの二択なら」
フードの男「九条さんはどちらを選びますか?」
九条醒夜(高校時代)「なんや、心理テストか?」
九条醒夜(高校時代)「でもまあ、エースになるんやないか?」
九条醒夜(高校時代)「野球は一人ではでけへんからな」
フードの男「良かった! それを聞けて」
フードの男「では、ご本人も承諾ということで」
九条醒夜(高校時代)「えっ!?」
九条醒夜(高校時代)「何や、あんたら」
フードの男「おたくの部員から依頼がありましてね」
フードの男「我々の目的と合致したんです」
九条醒夜(高校時代)「どういうことや」
九条醒夜(高校時代)「ガッ・・・」
フードの男「選手の交代をお知らせします」
フードの男「九条醒夜選手──」
フードの男「退場」
フードの男「なんてね。フフフ」
九条醒夜(高校時代)(あかん、意識が・・・)

〇黒
???「誰か倒れてるぞ!」
???「救急車呼んで!」

〇病室
九条醒夜(高校時代)「ん・・・」
醒夜の父「醒夜! 気ぃついたか?」
九条醒夜(高校時代)「父ちゃん・・・痛てっ!」
九条醒夜(高校時代)「これは?」
醒夜の父「覚えてへんのか?」
九条醒夜(高校時代)「そっか、僕。変なやつに囲まれて」
九条醒夜(高校時代)「あかん! はよ練習せんと!」
九条醒夜(高校時代)「痛って~」
醒夜の父「無理したらあかん」
醒夜の父「二週間も眠ってたんや」
九条醒夜(高校時代)「二週間!? 試合は!?」
醒夜の父「残念やが、決勝は・・・」
九条醒夜(高校時代)「・・・そっか」
九条醒夜(高校時代)「ま、しゃーない」
九条醒夜(高校時代)「来年がある」
九条醒夜(高校時代)「親父、見といてや」
九条醒夜(高校時代)「来年は優勝旗持って帰るで」
醒夜の父「醒夜。あのな」
醒夜の父「どうぞ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「息子さんの様子はどう?」
醒夜の父「今、目が覚めたばかりで」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「決め手は彼の証言なの」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「少しだけいいかしら」
九条醒夜(高校時代)「どなたですか?」
醒夜の父「この人たちは刑事さんや」
醒夜の父「お前の事件を捜査して下さってる」
牧村の部下「起き抜けにすまないが」
牧村の部下「見てもらえるかな」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「見覚えのある人間はいるかしら?」
九条醒夜(高校時代)「えっと」
九条醒夜(高校時代)「この人! あとこの人も!」
九条醒夜(高校時代)「僕を襲った人です!」
牧村の部下「警部補!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「決まりね」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「本部へ連絡」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「仲代半治とその一味を緊急逮捕よ!」
牧村の部下「了解です!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「ご協力、感謝するわ」
九条醒夜(高校時代)「なんかクセ強かったな」

〇大学病院
九条醒夜(高校時代)「もう一回言うてくれます?」

〇病院の診察室
奥平医師「プロは諦めて下さい」
九条醒夜(高校時代)「嫌です!」
奥平医師「九条さん」
奥平医師「右肩甲骨骨折に腱板損傷、左大腿骨骨折」
奥平医師「恥骨骨折と左頬骨骨折に肋骨合計七本」
奥平医師「大手術でした」
奥平医師「麻痺が残らなかったのは奇跡でしょう」
九条醒夜(高校時代)「わかってます。感謝してます」
九条醒夜(高校時代)「で、いつから野球、できますか?」
奥平医師「もう一度はっきり言います」
奥平医師「プロは諦めてください」
九条醒夜(高校時代)「なんでですか!」
九条醒夜(高校時代)「もう歩けるし腕だって上がります」
奥平医師「日常生活は問題ありません。ただ──」
奥平医師「アスリート並みの力は出ないでしょう」
九条醒夜(高校時代)「そんな・・・」

〇川に架かる橋の下
九条醒夜(高校時代)「・・・」
九条醒夜(高校時代)「はは、なんや。これ」
九条醒夜(高校時代)「ミットまで届かへんやん」

〇狭い畳部屋
九条醒夜(高校時代)「ただいま」
醒夜の父「おお、お帰り」
九条醒夜(高校時代)「父ちゃん、僕──」
九条醒夜(高校時代)「野球選手、なれへんみたいやわ」
醒夜の父「・・・そうか」
九条醒夜(高校時代)「母ちゃんの写真にも誓ったのに」
九条醒夜(高校時代)「約束、守れんかってん」
醒夜の父「ああ」
九条醒夜(高校時代)「僕これからどうやって生きればいいんや」
醒夜の父「俺もな、小夜が死んだとき」
醒夜の父「もう駄目だと思った」

〇狭い畳部屋
  そやけど、俺が駄目だと思うと
  必ずお前は俺の傍で笑っとった
醒夜の父「・・・」
  それで俺は、まだ生きていこうと決めた

〇野球のグラウンド
  やがてお前は成長し──
  甲子園準優勝まで成し遂げた

〇グラウンドの隅
  俺は、それを見たとき──
  「生きてて良かった」と思ったよ

〇狭い畳部屋
醒夜の父「人生にはええ時も悪い時もある」
醒夜の父「あの時お前が俺の傍にいたように」
醒夜の父「今は俺が、お前の傍におる」
醒夜の父「生きるんや、醒夜」
醒夜の父「生きてさえいれば、必ず──」
醒夜の父「良かったと思える日が来る」
九条醒夜(高校時代)「父ちゃん・・・ううう」
九条醒夜(高校時代)「うわああーーー」

〇団地

〇狭い畳部屋

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第10話 能動的な予知

コメント

  • 圧倒的な光の下には、どす黒い影ができる。
    裏切られた醒夜、身体だけでなく心もぼろぼろにされ、リハビリを得て日常生活を行うまでも相当の苦労があったのを考えると胸が苦しくなります🥲不眠と引きかえに醒夜は出る杭を打ち返す能力を手に入れましたがいつ消えるからわからない能力に今も人知れず苦しんでいるのでしょうか…

  • おこぼれの甲子園優勝で喜んどけや補欠達!

    インソムニアになった事は辛いですが、それで得た能力でプロになってたとは皮肉なもんですね。

  • 部員アホすぎる……😣自分が代わりになって優勝できると思ったんでしょうか。決勝に出られれば良かったんでしょうか。悪い人に唆されたのもあるんでしょうね。女鮫警部はもう出てくるだけで嬉しいです🤣
    しかし醒夜、不眠の力で手にした力……不眠解決したら野球は続けられなくなりそうですね。勿体ないけど、体の負担は大きいのかな💦
    立ち絵使用ありがとうございました!絶望の中の希望、いい役をいただきました😊

コメントをもっと見る(9件)

成分キーワード

ページTOPへ