〇散らかった研究室
峯岸輪廻「元々俺は、試練のどこかに“このデスゲームの運営者側の人間”が紛れ込んでると踏んでいた」
峯岸輪廻「実際前の試練で、バイトで雇われた運営側の人間がいたしな」
須藤蒼（・・・それに加えて、僕がこっそり“信者が試練のどこかにエキストラとして登場するよ”って輪廻さんに教えたしね・・・）
峯岸輪廻「この一連のゲーム。救世主を選ぶためのもの、というバイトの人からの情報。何かの新興宗教団体が母体にあると睨んだ」
峯岸輪廻「宗教二世ってのは最近話題になることも多い。親が宗教に所属しているならば、子供も問答無用で入信させられることも少なくない」
峯岸輪廻「つまり信者の子供が、協力者としてゲームに参加することは十分あり得ると踏んでいた」
須藤蒼「だから、この三人のことも最初から疑ってたってこと？」
峯岸輪廻「まあな。三人の全員が信者の子供なのか、もしくは誰か一人か二人だけが信者なのか。その判別をつけたいと思っていた」
峯岸輪廻「信者が混じってるなら、そいつは高確率でゲームの答えを知っている」
峯岸輪廻「薬と注射器を配れと頼めば、当然本人は“望んだ人物に毒が行くように”配るだろう、と思っていた」
峯岸輪廻「今すぐ打つ必要がない、とは言ったが。いずれ、一人一本ずつ打つことになる可能性は高いからな」
れつ「それで？本当にこのゲームを運営しているのが宗教団体だとして・・・どうしてまちかが信者だって思ったんだ？」
れつ「まちかは俺達の友達だ。根拠もなく、スパイ扱いされるのは我慢ならないんだけど？」
須藤蒼「れつくん・・・」
峯岸輪廻「正論だな。まずそこから先に説明するか」
峯岸輪廻「今の君の様子から見てもわかるように。君達三人が仲良しというのは嘘じゃないみたいだ」
峯岸輪廻「なら、君達の日常の話を聞くことで、信者かそうではないかの区別をつけることができるかもしれないと考えた」
峯岸輪廻「実際、話を聞いて違和感を覚えた。君達は同じ学校に通っていると言っていたが・・・れつ、みれいと、まちかは明らかな差があると」

〇黒背景
れつ「・・・俺、ものすごい方向音痴だから。毎回道に迷って、試験会場に行くまでが一番の試練で」
　　れつ、君は確かにこう語ったな。ついでに、みれいも笑ってこう返している。
みれい「あっはっは！あたしのバスケ部の応援にも遅刻してきたもんなーれつは！」
　　つまり、君達二人はどちらも“試合のため、試験のため”という名目で自由に外に出られる環境にあるということ
　　しかしまちか、君からは一切、外に出たエピソードが語られなかった。
　　みれいは「インドア派だから」と誤魔化していたが、親友であるみれいのバスケの応援に行った話さえまちかからは出てこない
　　さらに、仲良し三人であるにしては、みれいのこの発言は少々違和感がある
みれい「学校ではえっと・・・漫画クラブに入ってるんだっけ？」
　　だっけ？とまるで確認するような口ぶり。仲良しのわりに、クラブの把握さえ怪しいかのようだ。
みれい「そう。クラスも一緒なんだぜ。なあ？」
れつ「そうだな。一緒に帰るところだった」
　　クラスも一緒で、共に帰るほどの仲なのに何かが妙だ。
　　さらに、「漫画クラブに入っているんだっけ？」とみれいに振られたあとのまちかは明らかに驚いた顔をしていた。
まちか「おうちの先生もいろいろ教えてくれるんだけど、先生たちは油絵とかが得意だから、漫画はあんまり・・・」
　　それに加えてこの発言。
　　おうちの先生とは、一体？油絵を習いたいわけじゃないのに、油絵の先生が家に来る？
　　いや、きっとそうじゃない。

〇散らかった研究室
峯岸輪廻「ここから導き出される、俺の推理」
峯岸輪廻「宗教二世の子供達は、それ以外の子供達と隔離されることが少なくない。教団以外の教えに触れさせたくないからだ」
峯岸輪廻「まちか、君はなんらかの方法でみれい、れつと友人になったが、彼らと同じ学校には通っていない」
峯岸輪廻「みれいのバスケの応援にも行けないし、自由に外にも行けない、どこか教団施設で勉学を学んでいる」
峯岸輪廻「だからみれい、れつは君の“学校生活”を知らず、捏造するしかなかった」
峯岸輪廻「同じ学校に通っていないとわかれば、嘘をついているとバレれば。君が、俺に疑われて窮地に立たされると思ったから」
まちか「わ、私・・・っ」
まちか「そ、その、あのっ・・・」
須藤蒼「それで、まちかが信者の可能性が高いって思ったんだね？輪廻さんは」
須藤蒼「それで、どうして僕に渡されたペットボトルBが毒ってことになるのかな？不自然に飛ばしたとは思ったけど」
峯岸輪廻「三人の仲は本物だ。答えがわかっているのなら当然、まちかは自分と友人に毒が渡るのは避けるはず」
峯岸輪廻「だから必ず、彼女は無意識のうちに毒入りペットボトルを俺か蒼に渡す」
峯岸輪廻「でもって、信者であるならば・・・このゲームが“救世主を見出すためのもの”と言う話は当然知っているはずだ」
峯岸輪廻「俺と蒼だったら、年上でより冷静に見える俺の方を救世主に相応しいと睨んで、蒼の方を切り捨てる可能性は高いと思っていた」
峯岸輪廻「特に三人は三人とも、俺達を見た時に“無反応”だったしな」
須藤蒼「!」
須藤蒼（・・・そうか。僕の顔を知ってるならもう少し驚いても良かったはず。・・・まちかは、僕が教祖の孫だとは知らなかったってことか）
峯岸輪廻「それに加えて、露骨にBを飛ばして蒼に渡すということをやったんだ。これはもう確定していいだろう」
まちか「わ、私・・・！私何も知らない！本当に知らないです！」
まちか「し、信者なんかじゃっ・・・」
須藤蒼「じゃあ、このBの薬、君に打ってみる？もしくは君の友達に」
まちか「!!」
須藤蒼「それを了承できるなら、君が信者じゃないって信じる。でも嘘をついてるなら・・・」
まちか「あ、あああ・・・」
峯岸輪廻「俺は、君を責めたいわけじゃない。ただ、本当のことを教えてほしいだけだ」
峯岸輪廻「君は何を想ってここにいるのか。そして・・・本当に自分がしていることが正しいと思っているのか」
れつ「ま、まちか・・・」
みれい「み、認めるなよそんな出鱈目！子供に毒は打てないって、あの人言ったばっかりなんだから！脅しだって！」
みれい「あんたはあたし達と同じ学校のクラスメート！そうだろ!?」
まちか「あ、ああ・・・」
まちか「ごめん、なさい・・・」
まちか「ごめんなさい、ごめんなさい。私は・・・っ！」