極悪非道の正統ヒロインですが清廉潔白な悪役令嬢と幸せになります~咲かせて魅せます、百合の華~

イトウアユム

第8話「極道にも譲れねえ道理ってのがあるんだよ」 (脚本)

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〇おしゃれな廊下
???「マリアンネ!」
  廊下を歩く私を呼び止める声。
  思わず振り向くと、
  そこには金髪の美丈夫が立っていた。
権田原万里(――探しに行く手間が省けたな)
  彼はミハエル・フォン・ローゼンダール。
  このローゼンダール帝国の第一王子で攻略対象筆頭の男。
  しかし、会うのは今日が初めてだ。
  なにせ今日は私が転生して初めての登校日だからな。
  そしてミハエルの後ろに控えている優男は
  ハンス・ヘンケル。
  王子の幼い頃から影の様に付き添って仕えている従者・・・いわゆるお目付け役だ。
ミハエル「一週間も休んでいて・・・ 心配したんだぞ!」
ハンス「殿下、マリアンネ様はご家庭の事情があるのですから・・・」
権田原万里「申し訳ありません。兄の始める事業のお手伝いが忙しくて・・・」
  困った様に眉を寄せるとミハエルは慌てて弁解する。
ミハエル「ああ、すまないマリアンネ。 君を攻めているわけではないんだ」
ミハエル「ただ君に会えなかった日々が辛く悲しくてね・・・」
権田原万里(・・・だったら会いに来ればいいじゃねえか。面倒くせえ男だなぁ)
ミハエル「マリアンネ、君だって私に会えず寂しくは無かったのかい?」
  こいつ、どんだけ自分に自身があるんだ?
権田原万里「寂しいはずあるか、ボケ (はい、私も寂しかったです)」
「ん?」
ヤス「・・・お嬢、 本音と建前が逆になってますぜ」
  おっと、いけねえ。
ミハエル「今・・・マリアンネらしくない、 辛辣な言葉が聞こえた様だったが・・・」
権田原万里「幻聴ですよ、ミハエル様」
権田原万里「会えない時間も私の中ではミハエル様への 想いは募っておりましたよ?」
ミハエル「ああっ! マリアンネ、そんな可愛らしい事は2人きりの時に聞かせておくれ」
  ミハエルの言葉に私は内心ほくそ笑む。
  「2人きり」そうだよ、
  その言葉が聞きたかったんだよ。
権田原万里「・・・そんな、私の様な低い身分の者がミハエル様と2人きりだなんて恐れ多いです」
権田原万里「淑女としての立ち振る舞いも先日、 先生方に注意されたばかりなのに・・・」
権田原万里「私、無作法な自分が恥ずかしくて・・・」
  私はしおらしくわざとうなだれた。
ミハエル「作法なんて気にする事は無い、 君は君のままで良いんだよ」
権田原万里「いいえ、そうはいきませんっ!」
権田原万里「せめて・・・せめて」
権田原万里「高貴なご婦人方に直接、淑女としてのマナーをお教え頂ければ・・・」
ハンス「確かに下位の男爵家で、 しかもお母様が庶民のマリアンネ様」
ハンス「淑女としてのマナーの基本が出来ていないのは仕方ない事ですね・・・おいたわしい」
権田原万里「私の社交界デビューでもある、王宮舞踏会まで時間が無いというのに・・・」
権田原万里「このままだと出席するのが怖いです」
  私は悲しげに目を伏せる。
ミハエル「そこまで君が思いつめていたなんて・・・」
ミハエル「なにか私に手伝える事があれば良いのだが・・・」
権田原万里「ではっ! マナーと礼儀作法の家庭教師をして頂けるご婦人を紹介してくださいませんか?」
  私は待ちに待った王子の言葉に身を乗り出した。
権田原万里「出来れば1か月ほど我が家に泊まり込んでくださると嬉しいです!」
ミハエル「ええっ! 泊まり込みで?」
権田原万里「・・・私はただ、舞踏会でミハエル様とダンスを楽しみたいだけなのですが・・・」
ミハエル「あああ! マリアンネっ! わかった!」
ミハエル「すぐに君の家に泊まり込みで家庭教師をしてくれるご婦人を探し出そう!」
ミハエル「ハンス、おまえはマリアンネの家庭教師に相応しい高貴なご夫人を調べよ」
ハンス「かしこまりました、ミハエル殿下」
ミハエル「そしてそのご婦人に私の勅命だという事と それ相応の褒美を取らせるつもりとの事付けも忘れぬようにな」
  さすが親愛度MAXの勇者様。
  ちょろいモンだな。
権田原万里「ありがとうございます!」
権田原万里「でも、教えを乞いたいご婦人はすでにいるんです」
権田原万里「・・・是非カーチャ夫人に来て頂きたいのです」
ミハエル「カーチャ夫人?」
権田原万里「はい。カーチャ夫人は、その美しさだけではなく、知性も気品もある・・・」
権田原万里「気さくなお方として評判ですから」
  それ以上詮索されない様に私はマリアンネの極上の笑顔をみせてやった。

〇洋館の玄関ホール
カーチャ夫人「男爵家令嬢へのマナーレッスンと聞いていたのに・・・」
カーチャ夫人「こんなの、聞いてませんわっ!」
  屋敷でカーチャ夫人の「本当の生徒」を見るなり怒りの声を上げた。
  無理も無いだろう、下位とはいえ同じ貴族の男爵家、しかも王子お気に入りの令嬢の家庭教師と聞いていたのに・・・
  実際来てみたら「奴隷」が生徒だったんだから。
カーチャ夫人「ミハエル殿下の勅命だから仕方なく来たのに・・・」
カーチャ夫人「こんな汚らしい下賤な奴隷達に教えるなんて・・・」
カーチャ夫人「冗談じゃないわ! 失礼させて頂きますっ! あなた達、そこをおどきなさいっ!」
  カーチャ夫人は怒鳴り、家を出ていこうとして扉の前にいる奴隷の娘達に扇子を投げつけた。
「も、申し訳ございませんっ!!!」
  娘達は震えあがりながら慌てて道を開ける。
  恐らく長い奴隷生活で「権力」や「力」ある者への恐怖心が体に染みついてしまっているのだろう。
権田原万里「・・・・・・」
  私は思わず眉をひそめた。
  しかし、そんな激昂する夫人の前にヤスとリュウがニヤつきながら立ちふさがる。
ヤス「下賤たぁ・・・てめえの行いを棚に上げて良く言えますなぁ」
カーチャ夫人「何の事かしら?」
リュウ「こういう事ですよ・・・いやあ、高貴なお方ってのは、男性にも気さくな事で」
  リュウはニヤニヤと数枚のカードの様なものを突きつけ、途端夫人の顔色が変わった。
カーチャ夫人「・・・嘘よ・・・なにこれ」
権田原万里「これは実際の光景を現像処理して可視化したもの・・・『写真』って言うんですよ」
  リュウが突き付けたのはカーチャ夫人が不倫に勤しんでいる様子を克明に捉えた写真だった。
  私は前回の『福利厚生』の働きとして、
  リュウに上流階級のスキャンダルを調べさせたのだ。
  結果、カーチャ夫人が不倫をしているというゴシップを手に入れた。
  そしてヤスのサポートキャラスキル『スチル撮影』を使って、その決定的な瞬間を何枚か盗み撮りをさせたのだった。
ヤス「いやはや、貞淑なカーチャ夫人はベッドの上ではこんなに情熱的だったとは」
リュウ「お相手のモード卿は身分こそ低いですが、 何よりも若さと体力に溢れておりますからねえ」
カーチャ夫人「こ、こんな絵、ただのでっち上げよ!」
権田原万里「でしたら、 この写真を町中にばら撒きましょうか?」
  私は優しく微笑んだ。
権田原万里「――民衆の良い暇つぶしにはなるだろうなぁ。当然、あんたの旦那も黙ってねえだろ」
  そして言葉に詰まる様子のカーチャ夫人に私は嗤う。

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